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星の花束を抱いて番外8 ―十周年スペシャル トップ日替わり総集編―
※(タイトル、内容は掲載時から若干改訂しています)
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大好きだから |
それはまだ、聖がこの世の中に生まれ出でる前の話。
「ただいまー」
小学一年にしたらかなり大人びた顔立ちの少年だった。
「零?またこっちに帰って来ちゃったの?あなたは加月のうちの子なんだからね、ちゃんと向こうのおばあちゃんにも…」
「うん!遊びに行ってくるねー」
祖母の小言など聞く耳持たず。
零が家に帰らず祖父母の家に日参するのは、なくしたものを見つけたからだ。
「あ!れいちゃん!」
祖父母の隣に住んでいる少年は人見知りが激しく友達が少なかった。
しかしなぜか零にだけはよく懐いて慕っていた。
「ねーねーれいちゃん、おうた歌って?」
「何の歌?」
「パパがね、歌ってくれたの。かえるさんのうた。」
零は少年の口から父親の名が出ると途端に胸が苦しくなる。
「陸はパパと僕、どっちが好き?」
「どっちもー」
仕方ないなぁ…という顔で少年…陸を抱き寄せる。
「僕は陸が一番好きだよ?」
「じゃあ僕もー」
四歳の陸には理解できていないようだ。
♪かえるのうたが♪
陸が零に続いて歌う。
「零くん?」
頭上から声がする。
「あ!パパ!」
「こんにちは」
零は慌てて立ち上がり、挨拶をする。
「何かあったのか?涼かあきらに?」
「いいえ。陸ちゃんに会いにきました。裕二さん。僕に陸ちゃんを返してください。生まれる前からずっと待ってたのに、生まれたら帰ってこなかった…実紅でも夾でもいいから陸ちゃんは返してく
ださい。」
裕二は心底驚いた顔をした。
「零くんは陸が君の家に帰ると思っていたのかな?陸はおじさんの子供なんだ。」
「いやだ!僕、陸ちゃんが…わかんないけど陸ちゃんを守ってあげなきゃいけないって…だから家にいたほうが一杯一緒にいられるから」
裕二の腕が零を抱きしめた。
零は裕二の胸の温かさを知った。
「ごめん。陸は僕のたったひとつの宝物なんだ。誰とも交換することはできないんだ。」
陸が不安げな顔で二人を交互に見ている。
「また、遊んでやってくれたら陸も喜ぶ。」
零は叫んだ、イヤだ、陸を連れて行かないで、僕の陸を…でも声にならなかった。
「なんでおばあちゃんちに帰るのよ。涼が不信がるでしょ?」
あきらちゃんが迎えに来た。
「僕、おじいちゃんおばあちゃんちの子になりたい。」
ささやかな抵抗だった。
「毎日陸に会いたい。やっと見つけたんだ。僕の赤ちゃん。」
あきらの瞳が大きく開かれた。
「あきらちゃんが大事にしていた赤ちゃんだよね?裕二さんから預かった大切な赤ちゃんだって言ってたよね?一杯一緒にいたいんだもん!陸ちゃん可愛いからすぐにいじめられちゃうんだ。だ
から僕が守ってあげるんだ。」
零は普段あきらに言われていることをそのまま返しただけだ、実紅と夾を守ってあげて…その中に陸を含めることを望んだのだ。
零の瞳の色を見れば分かる、真剣なのだ。
「零。陸ちゃんは野原さんのお姉さんのお子さんだよ。あきらとは関係ない。」
ふいに祖母が口を開いた。
「あの時あきらは病気だったんだよ。」
祖母はあくまでも陸は他人だといいはる。
でも零には分かっている。あきらがしばらく何も手に着かないで惚けていたことを。
「涼に、相談してみる。涼の両親は海外にばかりいるからあのマンションじゃなくても良いのよ。この家を改装して、零の好きにしたらいいわ。あなたは今、私たちが否定しても陸ちゃんが好きなの
は変わらないのでしょう?私も、ゆうちゃんと仲直りしたいもの。」
「あきら…」
祖母は心配そうな顔をしていた。
「野原さんのお母さん、圧力掛けてくるわよ?」
あきらは微笑みを称えた表情で首を左右に振った。
「すべて私が悪いのだから…」
零にはまだ理解できないでいた、母の微笑の意味が。
「そんなに前から陸が好きだったんだ…」
聖はあまりにもかけ離れたキャリアの違いに愕然とするしかなかった。
「けどさ、考えようによっては聖が陸を好きになるのは遺伝子がそうさせているのかもしれない。僕が陸を好きだっていう気持ちとあきらちゃんが裕二さんを好きだっていう気持ち。」
「ママ、陸のパパも好きなの?」
「あれ?話してなかったっけ?」
「ないない!もう零くん、僕に隠し事はしないって約束したのに!」
「わかったって」
突然、裕二に襲われて部屋に連れ込まれたとき、あきらは覚悟していた。
初めて裕二に抱かれた日、本当は嬉しかった。
ずっと後ろを追い掛けていた隣の憧れの人が、あきらに恋人になって欲しいと真っ赤な顔をして申し込んで来たときは天にも上る気持ちだった。
「俺と付き合うってことは結婚も考えて欲しい」
そう言われて1も2もなく返事をした。
なのに。
裕二と一つになれた翌日、あきらは恋に落ちた。
少女の憧れから大人の恋に変わった。
「ゆうちゃんと地獄まで落ちることは考えられないけど、加月くんならどこまでも着いていく!」
あきらは言いながらも胸の奥に僅かな引っかかりを感じた。
裕二への愛は家族のような愛なんだと。だから本当に必要なのは涼の手なのだと。
身を焦がすほどの恋を知ってしまった今、後戻りは出来ない。
「あっ」
あきらは思わず声を上げていた。
「俺のでも感じてくれるんだ…俺は君しか抱けない身体になったのにな…」
どういうことだと問いかけたいのだが、裕二の突き上げが激しく、息も絶え絶えで声が出ない。
神様、赤ちゃんを授けてください。私に出来る唯一の懺悔です
あきらは祈り、授かったのは陸だった。
「あきらちゃんは陸を愛しているだろ?それが裕二さんを愛してるってことだよ」
聖には理解できないでいた。
「僕は陸が好き」
はいはい、とおざなりの返事をする。
ママが二人の人を愛したってことは、陸だってあり得ること。
聖は陸に父性愛ではない愛情を抱かれるかもしれない。
覚悟していなければならない。
それでも、最期まで陸を愛し続けていたいから。
<大好きだから>END |
裕二の子育て日記 |
小学校入学
ランドセルを買いに一緒にデパートへ行った。背負わせるのが可哀想なくらい背が低い。身体も小さい。
早生まれでもないのになんで小さいんだ?母親似なのか?なら仕方ないか。
まあ、中学生くらいになったら大きくなってるだろう。大器晩成…って意味が違うか。
小学校三年
父親参観日に来てくれと言われたので嬉々として出掛けた。
なんで手を挙げないんだ?分からないのか?
帰宅した陸に問い詰めたら恥ずかしいと言いやがった。男のくせに引っ込み思案らしい。情けない。
でも可愛いからそんなこと言えないや。
中学校入学
陸も中学生になる。早いなあ。
この間産まれてきたばかりだと思ったのに。
担任の話だと陸は小学校でモテていたらしい。本人は遊ぶ方が忙しくて気付いていないらしいけど。
その遊びも同級生ではなく零くんと夾くんなんだよな。まあ義理とはいえ兄弟だから惹き合うものがあるのかもしれない。
中学生になったら変わると良いけど。
中学校二年文化祭
懐かしいなぁ。昔はお化け屋敷や占いの館などが主流だったけど、今は飲食店が殆どみたいだ。
陸は見た目派手(この辺は俺に似たらしい)なのに性格が地味だ。飲食店をやっても裏方におさまる。ところが気の利いた(普通の親はそんな風に思わないらしい)クラスメートが陸をメイド役に
抜擢したらしい。ウエイターではなくメイド。いいねー…とは言わないと母親に叱られた。いいじゃないか、陸は美人だからさ。
陸に黙ってこっそり見に行ったら零くんもこっそり見に来ていた。理由は俺と同じで行くと言ったら強く拒否されたが心配で見に来たらしい。
二人で堂々と店に入り陸にどやされた。
しかし後日、この経験がきっかけでクラスメートと仲良くなれたらしい。
中学三年 10月
「陸をギタリストとして迎えいずれはプロデビューしたい」
零くんがそう告げに来た。陸は隣で期待に満ちた視線を向けてくる。
予感はあった。
陸が自室で自慰を始めた時、唇が「レイ」とかたどったのを察知していたからだ。
だから陸に自慰をさせなかった。
陸を零くんに渡したくない。
陸は俺のものだ。
陸の性器に触れ、自分の性器もしごく。
なんて恥ずかしい行為だろう。
でも陸を手放したくない。
涼の息子に寝取られたくない。
涼に告げ口してやった。
「好きな気持ちを止められないのは裕二さんが一番知っているのに」
そう言われて返す言葉がなかった。
高校一年11月
「俺も学業と両立していたから文句は言えない。だけど家を出るのは反対だ。ましてや零くんと同棲ってどういうことだ?」
「だから同棲じゃなくて同居。仕事上便利だから。」
「本当だな?」
「本当だよ。」
陸が視線を全く外さずに俺に嘘をつく。
俺が分からないと思ったのか?
お前達が一線を越えたことくらい、気付いている。
あきと別れてから女性を抱けないって分かってからは男と寝たんだよ。自慢にもならないけど。
だから陸が零くんと寝たことはすぐにわかった。
分かったことを陸に気付かれないように振舞うのは、俺が俳優という職業だからだ。
そんなに、零くんが好きなのか?
「パパっ、何これ?」
陸がやっと気付いたらしく、自室の机の上から俺の日記帳を持って駆け下りてきた。
「俺の育児日記」
「端折りすぎだよ。全然書いてないじゃないか。」
そこか?突っ込みどころは。
「もっと色々知りたかったのに。」
「仕方ないなぁ、ならCD-R版を…」
「あるの?だったら貸して。最近聖が何考えているのか全然分からないから参考にしたいんだよね。」
陸、ここでもまだ零くん中心なんだ…パパはがっかりだよ。
<裕二の子育て日記>END |
ライバル |
「あ…」
思わず声が出てしまった。
昼間、中学のクラスメートが話していた自慰行為に関する知識は僕にとって目から鱗だった。
好きな人を思い浮かべて性器に手を触れるとスゴく気持ちいいらしい。
なんで気持ちいいのかは分からないらしいけど好きな人を思い浮かべるのがポイントなんだそうだ。
思いが叶うのなら毎日してもいい。
「うっ…あ…」
それは衝撃的な感覚だった。善すぎて声が大きくなってしまった。
「陸?どうかした…」
突然ドアが開き、部屋に入ってきたのはパパだった。
「イヤっ…」
下半身を露出した恥ずかしい格好で性器を弄る息子をパパは何と見たのだろう?
つかつかと歩み寄って来ると、いきなり僕の性器をパパは握りしめた。
「イヤだ…止め…て」
力ない拒絶。
もの凄く気持ちいい…
上へ下へ手を動かす。
腰が浮いて快楽に抗えない。
「ああっ…んっ…」
「陸はこんなことしたらいけない。したくなったら俺がしてやる。」
「んんっ」
パパが何か言っているが快楽に流されてしまい聞こえない。
「やっ、やぁっ、イクぅぅ」
ドクドクと白濁液が溢れ出した。
「いや…」
零ちゃんにこんな姿見られたくない。だけどパパの手じゃなくて零ちゃんの手だったらどれくらい気持ち良いんだろう。
「絶対に零も聖も早熟!」
僕は断固として言い張る。
「陸が奥手なだけじゃない?」
がーん
一番気にしていたことを…。
「初めてのえっちが16歳だからねー」
「遅いの?ねぇ?」
「ちょっと遅いかもねー。初ちゅーは?」
「自分の意思では2歳、パパと。」
零の眉間に皺が寄る。
「もしかしてさ、僕の最大のライバルは聖じゃなくて裕二さん?」
僕は黙って頷いた。
<ライバル>END |
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