星の花束を抱いて番外16
2017−18 sns始めました
「ホームページをスマートフォン対応にしたんだって?」
 零が初ちゃんに意外な問い掛けをしていた。
 だってさ、零って絶対にインターネットなんて見ていないと思ったから。
 でも携帯はかなり前にスマホに変えたけどね。
「うん。でさ、今度ブログもつけたから、5人で交代に日記書くよ。」
 え?今なんて言った?
「それとTwitterとインスタも始めるから。」
 …めんどくさい…。



 あれから三カ月。
 インスタに一番嵌っているのがなんと零。
 楽屋でのメンバーの写真を撮っては、LIVEがない日にアップする。
 Twitterに嵌っているのは…何を隠そう僕なのでした。
 だってね、調べなくても教えてくれるんだもん。
 例えば、「男からもらうクリスマスプレゼントはアクセサリー以外だったら何が良いんだろう…」って呟いたら、「なんでも嬉しい」「バック」「財布」「コート」「ワンピース」「靴」などなど、どんどん届く届く。
 お蔭で曲が三曲出来たよ。
 だからスマホを触っている時間が増えた。
 車での移動は基本、僕が運転することはないから、その間ずっとTwitterをやっている。呟かなくても誰かの呟きを見ている。
 まぁ、零が運転しているときは大抵文句を言っているけどね。



 そして。
 今、YouTubeに手を出そうとしている。
 初ちゃんがサイトのトップに掲示したいそうなんだけど、それだったら動画でいいと思うんだけどさ、初ちゃん曰く、「自前のサイトにだけアップしていたらファンしか来ないけど、YouTubeにアップしておくと通りすがりの人が観てくれる」そうだ。
 初ちゃんは色々時代の流れを見ているなぁ…という感想を抱くあたり、僕もれっきとしたおじさん化だなぁ。



 さて。
 今日のブログネタに困っている。
 クリスマスイブに何をアップしたらいいんだろう…。
 あ!
 今夜の食卓で自虐ネタはどうかな?
 今夜はチゲ鍋にしようと思っている。
 クリスマスイブにチゲ鍋。
 ウケるかな?…と考えるあたり、ミュージシャンの仕事じゃないよな。
 けどさ、エゴサーチしたときに「今日の陸、頭おかしくねww」とか書かれていると口角が上がってしまうんだよね。これって一種の病気かな?
 今夜はケーキはないけど、二人にプレゼントは買ってあるのでどんな反応するか楽しみだな。



 今日から元日に行うLIVEのリハーサル。
 今年からSEcanDsで2回公演することになってちょっとハード。
 でも自前のステージがあるって言うのはやっぱり強い。
 その分、身内のスタッフには頭が上がらない。
 僕達のせいでずっと年末年始が忙しい。
 その代わりと言っては何だけど、3日から10日間、お休みしてもらっている。マネージャーも同じ。
 だから当然、僕等も仕事はしない…って結局僕等も休んでいるんだけどね。
「剛志くんは今度の連休、海外?」
「何で分かった?」
「斉木くんがこの間、新しいスーツケースを買っていたから。」
「…なんでそれを陸が知っているんだよ…」
「スマホで注文しているんだもん。見ちゃった。」
「プライバシーの侵害だな。ま、いいけどさ。イギリスへ行ってくる。」
「いいなぁ…僕も海外、行きたい。」
「あれ?陸って海外…」
「行ったことない。」
 僕等の会話を偶々、斉木くんが聞いていた。
「それじゃあ、ACTIVEで海外の仕事、入れましょうかね。」
「え?本当?」
「はい、陸さんのためですから。」
「祐一…陸に相変わらず甘いな。」
「はい」
 あ、僕は今、この場所にいたらまずいのでは…。
「帰ったら、おし…」
「今日は自分の家に帰る日です。」
「こいつ…」
 あ、剛志くんが拗ねた。
「剛志くん、音合わせ、してくれる?」
 話を逸らそう。
 剛志くんもイソイソと着いてくる。
 このカップルは、斉木くんの方が分が良いんだな、うん。



 ―お正月LIVE、あの曲を強引に演ることにしました。乞うご期待!―
「送信」
「強引にって、デビュー曲?」
「うん、幻のデビュー曲。」
 そう、僕達のデビュー曲はあまりっていうかここ5年は演った記憶がない。それもお客さんを入れていない、プライベートな集まりで…つまり誰かの結婚パーティー的なもので…演ったような気がする。だからファンの前で演るのはブレイク前だけだったような気がするんだ。
「誰か公式な記録、とっていない…な、前の事務所の時だもんな。」
「そうそう」
 だから幻なんだよね。
 今日、僕が提案した。
 少しアレンジをして、明日のリハーサルで演奏してみる予定。
「楽しみだなぁ」



「って全然音が変。」
 零がダメ出しをしてきた。
「確かにデビュー曲って昔過ぎて幼稚な感じだけどさ、これは絶対に違う。アレンジがおかしいのか?」
「ダメ?」
 そこから延々二時間、5人で角を突き合わせて頑張った。
 幻のデビュー曲は、現実のものに…って大袈裟です、はい。



 ―明日をとっても楽しみにしてて欲しいって全力で書きます、はい―
「送信」
「一日に何回更新してる?」
「最低3回」
「無口な陸のイメージが崩壊だな」
「無口なのは変わらないよ、呟いてるだけ。」
「はいはい、陸?」
 んっ
 返事は、唇で塞がれた。
「明けまして、おめでとう。」
「え?」
 時計は、0時を回っている。
 聖は夾ちゃんのマンションに泊まりで行っているから今夜は二人きりの年越し。
「おめでとう…あっ!」
 ―明けましておめでとうございます。それではLIVEのために体力温存、おやすみなさい。―
「送信」
「また?」
「うん。でもこれで終わり。これからは、二人の時間ね。…今年もよろしく。」
 零はニッコリ笑ってギュッと抱きしめてくれた。





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