星の花束を抱いて番外17
2018−19 剛志くんと斉木くん
「祐一!」
「大声出さなくても聞こえてます。」
 相変わらず、コイツは可愛くない。
「じゃあ、答えを聞かせてもらおうじゃないか。進むか止めるか。」
 大体コイツは何を考えているのか分からない。
 男と付き合うのが嫌なら、着いてこなきゃ良いのに、文句言いながらも着いてくる。なのにプロポーズすると拒む。
「…今のままは、ダメなんですね?なら…」
 俯いたままボソボソとしゃべるから、これはダメなんだろうと覚悟を決めた。
「宜しくお願いします。」
「分かった!じゃあな…ん?今なんて?宜しく?え?えー!」
 パニック状態だ。
「ただし、条件があります。僕の個室をください。夜は別々に寝たいです。」
「…わかったよ。」
 背に腹はかえられない。
「それと、ベッド以外の場所ではしません。」
 何を?と、聞きたいところだが、我慢する。
「わかった。」
 俺は、零と陸みたいに暮らしたい。
 祐一は陸が好きで、俺は零が好きだった。
 そんな二人だから、アイツらを見習っても良いだろ?
 でも、祐一には祐一の考えがあるようだ。


 何回目かの…何十回目かのプロポーズを、やっと受けてもらって一ヶ月。
 新居を決め、引っ越しも完了して、初めての年末。
 今年も年越しライブではなく、新年ライブ。
 だから大晦日はメンバー全員、家族と過ごす。
「斉木くん!」
 相変わらず陸が無邪気に飛んでくる。
「もしかして剛志くんと一緒に暮らしてる?」
 途端に祐一が鋭い視線を向けてきた。
「当たったみたいだね。おめでとー。」
 この兄弟はどうして他人のことに首を突っ込む?
「なんでわかったか、教えてあげようか?まず、剛志くんが斉木くんから離れない。もう一つは、斉木くんがニコニコしてる。」
 …それは、分かり易い…。
「ニコニコなんて!」
「してるよ〜」
 祐一の否定を簡単に遮る陸。
「だって、斉木くんがこの現場にいること自体、おかしいでしょ?」
 うん。
 祐一は今、別の新人アイドルグループを抱えていて忙しい。
「それは!その…あ、そう!都竹!都竹くん一人だと大変だから。」
 俺は祐一の肩を叩いて否定する。
「彼は今、祐一と同じで別の新人を抱えている。」
 陸はニッコリ、笑った。


 元旦のライブリハーサルを22日に終えて帰宅する。
 祐一は、セックスしても声を出さない。
 たまに溜息のような吐息を漏らす。
「ふぅっ…」
 それきり、唇をぎゅっと結んで声を耐えている。
 きっと、恥ずかしいのだろう。
 でも、そんな恥ずかしさを超えるくらい、気持ち良くさせたい。
「それは、簡単だよ。」
 深夜ラジオ番組の生放送を終えて、零に相談した。
「そんなの、簡単だよ。剛志が抱かれたら良い。」
 は?
「斉木くんだって、男じゃないか。挿れたいんじゃないか?」
 挿れたい?
「そっか、そう、だよな。」
 そうだ。
 祐一が陸を好き=立ちだよな?
 失念していた。
「零」
「受け入れるのは、勇気がいるな。」
「だろ?」
 俺は、高校時代に零と寝た。
「自分がやっていることを、自分自身にすれば良いだけ。簡単だろ?」
 イヤイヤ、気持ちの整理が…。


なに?これ?


「簡単だったろ?」
「いや、簡単とかそんなもんじゃなくて、その、なんだ、俺、素質しかないみたい。」
 そうなんだ、心太状態だったんだ。
 挿れて出ての繰り返し。
 突然、零が笑い出した。
「剛志、斉木のことが大好きなんだなぁと。」
 いきなり、なんだよ。
「好きだから、多少の違和感も快感になるんだよ。」
 そうなのか?
「ま、二人が上手く行ってて、僕は嬉しいよ。」
 えっと。
 なんか、複雑な心境である。
 つまり、俺は祐一に惚れてるってことだ。


「明けましておめでとうございます」
 祐一が、0時丁度に言葉を発した。
 それまでずっと俯いていたのに。
「年越しの瞬間、剛志と二人っきりって、いいなって、思った。」
「だろ?一緒に暮らして、いいこともあるだろ?」
「いいことだらけだよ。剛志の意外な顔も知ったし。やっぱり違うんだと実感した。今までごめん、意地張ってて。」
 祐一が、素直になった。
 多分、零のおかげだ。
 本当に人間は一人で生きていくのは寂しい。
 君が側にいてくれて、俺の人生は明るく照らされていると、信じている。
「祐一、俺の側で、俺を支えていて欲しい。俺も、祐一のことをずっと支え続けていくから。寂しい思いはさせない。」


 母親の説得は、まだまだ続くけどな。



<剛志くんと斉木くん>END