| 学校に着く早々、心くんの周りに女生徒がわらわらと集まって来た。 「川崎君、これもらってくれる?」
 そーかそーか、バレンタインか…と、呑気に構えていた城くん。
 あっという間に両手一杯に抱えている心くんに対し、城くんは手ぶら。
 同じグルーブのアイドルなのに…。
 
 
 結局、教室でも帰り道でも、城くんに渡されるチョコレートはなかった。
 
 
 今日はラジオ局でのお仕事。
 入り口では入り待ち出待ちの女の子たちが大勢たむろしている。
 城くんと心くんは学校から直でここへやって来た。
 「きゃー、心くん〜」
 又しても朝と同じ状況。
 スタジオへ向かうと、神宮寺くん、桧川くんも同様に一杯の荷物を抱えていた。
 「僕って人気ないんだ」
 と、ぽつり呟いたけど、そんなに気にしている風でもない。
 
 
 仕事が終わり、帰路着く。
 マネージャーに送ってもらって各々の部屋へ戻っていく。
 城くんは部屋へ辿り着くと小さな紙袋を抱えて、
 「ちょっと悠希んところへ行ってくる」
 と、駆けだした。
 心くんは何処かへ電話を掛けていた。
 
 
 「はい、バレンタインのチョコレート…と思ったけど、アクセサリーにした。」
 「城…ありがとう。だけど今日はまだ12日だよ?」
 そこで城くん、はたと気付いたのです。
 今年のバレンタインは日曜日だったことに。
 「みんなが配っているからてっきり今日だと勘違いしてたよ。」
 「だけどもう用意してくれてたんだ、ありがとう。」
 桧川くん、大胆にも玄関先で城くんをぎゅっと抱きしめました。
 気を付けないと隣室の人に見つかるのに。
 「城、二人で暮らさないか?ここを出てマンション借りようよ?」
 
 
 
 日曜日の夕方。
 事務所にひとり呼び出された城くん。
 会議室に山のようなプレゼントが積んでありました。
 全部、城くんあてのチョコレート。
 羨ましいような可哀想なような…。
 城くんはそれを全て持ち帰り、全ての手紙に目を通したのでした。
 
 
 チョコ?
 まだ冷蔵庫に眠っています。
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