79.ひたすら睡魔に襲われる
 眠い
 撮影中だろうが、授業中だろうが、入浴中だろうが、食事中だろうが眠いものは眠い。
「季節の変わり目だからかな?」
「忙しいからじゃない?」
「今まで暇だったからじゃない?」
 ムクッ。
「何か言った?」
 …授業中だった。



「城くん大丈夫?」
 帰り道、電車の中でまたウトウトしていると心くんが心配そうに声を掛けてきた。
「夜、ちゃんと寝てる?」
「…寝てるよ。」
 正しくは寝かされている。
 23時から24時の間に部屋の電気が消されてしまうのだ。
 そして朝5時になると叩き起こされて受験勉強。
 7時に朝ごはんで7時半に登校…。
「夜行性の城くんが頑張ってるね〜」
「うん」
 だって、悠希は早寝早起きなんだもん。
「悠希に散歩の時間を割いてもらって勉強見てもらっているから、少しでも成果を見せなきゃなって
思っているんだけどね。」
 それよりなにより、心くんには絶対に言えないけどさ、同じベッドで悠希がボクのことギュッて…ギュッ
てして寝るんだよぉ。
 ドキドキしちゃって中々寝付けない。
「城くん。」
「ん?」
「お風呂に入ってすぐに寝たら眠れないから、二時間は身体を冷ましてね。」
 …なんか…意味深?
「それと動悸息切れはご法度。桧川くんにちゃんとお願いした方がいいよ。」
 …何を?
「…しないの?」
「え?」
「え?」
「だから…」
「ごめんっ、城くんと桧川くんはそんなんじゃないよね。僕みたいに毎晩セ…何でもないっ」
 心くん、確信犯だね。
「…キスは、するよ?」
「そんなの当たり前…じゃないの?」
 心くん、ありがと。眠くなくなったよ…。