| 「せんせー」 廊下をバタバタと駆け寄る女生徒に視線を移す。
 「廊下を走るな」
 南中道は今日不機嫌だ。
 「ねーねーせんせーはどんなタイプの子が好きなの?」
 「仁志先生」
 「本当に?一緒に暮らしてるって本当?」
 「プライベートに関しては一切ノーコメント。相談事なら乗るけど。」
 「先生が好きなんです。どうしたら…」
 「しつこい!僕は仁志先生が好きなの!」
 くるり
 と、方向転換すると理科準備室に消えた。
 「ごめん、南中道先生愛想がなくて。」
 半べそをかいている女生徒を慰めるのは仁志。
 「昨日嫌なことがあったらしくて機嫌が悪いんだ。今朝は無視され通しだよ。」
 その言葉を聞いたら女生徒は納得して帰った。
 後から理科準備室に来た仁志は
 「南中道先生、生徒に気分で対応しないでください。」
 と、一応大人の対応をする。
 「和隆さんが!…東埜さんになんか会いに行くから…分かってても、ヤダ。」
 「君だって毎晩尋之くんと電話しているじゃないか。…って、この話は帰ったらにしないか?」
 しかし、何故か南中道はケロッと機嫌が直っていた。
 
 
 仁志の妹は好きな人が出来て父親の思惑には参加しなかった。南中道には初めから勝算があったのだ。
 南中道の家族が経営する会社は相変わらず順調で特に問題はない。
 「親族経営をしないことにしたので僕は気が楽なんです。好きな研究も出来る。理事長が話の分かる人で良かった。」
 「ノーベル賞狙いじゃないか?何年か前に若い人がもらったじゃないか。真人はいくつか論文を出しただろう?」
 「学会には呼ばれませんよ?」
 「だからノーベル賞なんじゃないか」
 「よくわかりません」
 「実は僕もよく分からない」
 「僕が分かったことは一番知りたいことです」
 「なに?」
 南中道は黙って仁志を押し倒した。
 
 
 
 長い間ご愛読いただきありがとうございました。全く可愛げのない登場人物になってしまいましたが、私は南中道が好きです。でも主人公は仁志です(笑)
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