| 「通いきれない?」 東埜は頭を抱えた。
 尋之は当初、ロケット(スペースシャトルの部品など)を作っている工場に勤めたいと言っていた。しかし色々調べてみるとやはり家族経営の工場が多いため外部からは雇っていないようだ。
 そのうち尋之の気持ちが本来の宇宙科学に戻っていった。
 「筑波エクスプレスがあるじゃないか」
 「ムリムリ、通うならアパート代の方が安い」
 「一緒にいたいって…」
 「好きなことできるならどっちでもいいんだ」
 すでに研究所から誘われているらしく、上機嫌な尋之にこれ以上なにをいっても無駄だ。
 
 
 『尋之、宇宙科学研究所に受かったんだって?』
 「…その話の出どころは芳だろ?そんなの嘘に決まってるじゃないか。あんなとこ、きちんと大学出てなきゃ採用にならないよ。」
 『ならどうして?』
 「いつまでもプー太郎じゃかっこわるいじゃないか…」
 『嘘の方がかっこわるいじゃないか』
 尋之は黙ってしまった。
 『大学、行けばいいじゃないか。どうせ東埜さんに迷惑かけるならあと少しくらいいいだろう?』
 「筑波で働くのは嘘じゃない。アメリカの大学に在籍していたというだけで大学の研究室の手伝いをさせてくれるんだ。しばらくしたら芝浦にある研究室に移動させてくれるっていうからさ。」
 『ちゃんと言えばいいのに』
 南中道が笑った。
 尋之は嬉しくなった。
 「真人、オレ芳が好きなんだ。」
 『うん』
 「負け惜しみじゃ、ないぜ」
 
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