身長165センチ体重56キロ。どちらかと言えば精悍な顔つき…と、本人は言われたいようだけど遙か遠い「女顔」。名前も遙(はるか)なんて男女どちらでもいいような中性的でクラスメートからは遙ちゃんと呼ばれている。
成績は中の下。なんでも平均的…それが多田 遙(男)である。
ゲシッ
「いーかげん、起きろ」
寝起きの悪い遙は、今朝も二つ年上の兄、湊(みなと)に足蹴にされて初めて目覚める。
「来月から二年だろ?自分で起きろよな。オレは大学行ってお前とは生活が変わるんだからな。」
そこで遙は初めて気付いた。
同じ部屋にいるにも関わらず、湊は遙が気付く前に身支度を済ませている。
「なー、兄ちゃんはどーしてちゃんと起きられるんだ?目覚まし鳴ってないよな?」
湊の肩が小さく跳ねたことに、遙は気付かなかった。
「普段から心構えが違うんだよ、お前とは。」
そう言いながら押入に頭を突っ込むとガサガサと探し物を始めた。
「ほれ、オレが中学生の時に使っていた目覚まし時計。やるよ。」
枕元に置くと部屋を出て行った。
遙はもっさりと起きあがると、頭を掻いた。
「面倒くせー」
相変わらず湊が起こしてくれると高を括っているのだ。
パジャマを脱ぎ捨てベッドの上に放り投げると学生服に着替える。
学生鞄を手にすると部屋を出て階段を下り、リビングに鞄を置いて洗面所に向かった。
「あれ?兄ちゃん二度目の歯磨き?」
「朝飯前と後には歯を磨きたいだろ?」
しれっとして出ていく湊を遙は不思議な感覚で見送った。
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