ちょっと、待った!
オレはすれ違い様、はっしと男の前髪を掴んだ。
男は
ニヤリ
と、笑う。
捕まえた
今度はオレが笑う。
その男の名は
ラッキーの神様
「送信…っと。」
携帯電話からメールを送信すると、始業式に出席するべく、玄関を出た。
「遥、あなたは無理しなくてもいいからね。」
突然母親にそう言われた。
遥が大学に行って勉強したいことがあるのなら行っても構わないが、行きたくないならそれはそれで構わないということなのだ。
期待していないわけではない、個性を尊重しようというのだ。
「おはよう」
玄関ドアを開けると、本当に偶然、響が通過しているところだった。
「出てこないかなって、念じてたところ。早速ラッキーの神様、御利益があったな」
昨日のダメージはないようだ。
「あれから母親には遥と付き合っていること、話した。つーか、聞かれた。僕が遥のこと好きなのは知ってたしね。」
当たり前のような表情で話す。
「うちの母親、そっち系の話好きなんだ。」
「そっち系?」
「遥、知らないか。ならいいや。兎に角、母親はなんとかなりそうだ。…実際、息子が男好きで困らないのか不安だったんだけどな。」
響がそんなに切羽詰まった雰囲気ではなかったので、遥は安心した。
「遥ちゃん、おはよう」
潤が合流した。
「航が見たら激怒しそうな光景だね」
何も知らない潤は呑気に笑う。
「そうだよな、怒るよな」
遥は至って真面目に思う。
「あ、潤、そっち系ってなに?響が教えてくれないー」
「男同士の恋愛小説…だろ?響が言いたいのは。」
「なんじゃそれ?今流行ってんの?男同士。」
「さあ?」
…男同士しか知らない連中が何を言う…
「じゃあ、僕は先に行くよ」
「うん、行ってらっしゃい」
軽く手を挙げ、響は学校へ向かった。
「航に会いたくないのかな?」
「多分」
嫉妬する自分がイヤなんだろうなー遥は少しずつ響を理解し始めた。 |