第五十六話  前途多難
 響の従兄弟は、母親に連絡を入れていた。
 全てではないが、恋人が一緒だったことを告げていた。
 散々どのくらい付き合いがあるのか、受験に差し障りがない交際なのかと聞かれたので、付き合いは今日からであること、将来を見据えた交際をしたいと伝えた。
 いずれ相手を教えなければならない。
 母親は遥をもちろん知っている。
 前途は多難だ。


「見つかったのか?」
「うん。でもヤってる最中じゃなくてラッキーなことに服着て帰ろーとして、チュウしてたときなんだ。」
「そうか。響と付き合うことにしたのか…」
「兄ちゃん、オレ真剣なんだけど」
 遥は遥で、湊に相談をしていた。
「しばらく会わない方が良いかも知れない…って、俺なら言うと思わないのか?」
 身体を抱き寄せ、耳元で囁く。
「なんで?兄ちゃんには潤がいるじゃないか。」
 言って気づく、湊が風呂場でしていたこと…。
「兄ちゃん、潤とは遊びなのか?」
 抱き締める腕に力を込める。
「そうだと言ったら?」
「軽蔑する」
 腕の力が緩む。
「なら言わない。遥に軽蔑されないよう、潤を大切にするよ」
「兄ちゃん…潤のこと好き?」
「遥の次にな」
 そして離れていった。
「僕…やっぱり響が好きなんだ…父ちゃんと母ちゃんに言いたい、響んとこ、行きたいって。」
 湊は心の中でため息を付く。
「わかったよ、協力する。…って、嫁に行くのか?気が早いな」
「嫁…って…でもそうか、プロポーズされたってことは嫁に行くんだよな…」
 湊はあからさまにため息をついた。
「響の奴、そんなに遥が好きだったんだ。いつもウザい奴だなーって思っていたんだけど、そっか。」
 少し、悪いことをしたな…と反省した。
「じゃあ、大学行かないで就職したらいい。テレビ局の下働きなら入れるはずだ。」
「響がね、時間がきっちりしている仕事がいいって…」
「ちょっと待て!おまえ達いつから付き合ってたんだ?話が進みすぎてないか?」
 湊は久しぶりに遥と長話が出来てはしゃいでいた。