088.サンタがやって来る
 12月になると、町中何処でもクリスマスの装飾が溢れている。
 最近では民家でイルミネーションで家を飾る所も増えてきた。
「うちの店も装飾する?」
 鎌倉市内で店を経営している友人たちも、数年前から豪華なクリスマスツリーや、派手なイルミネーションを店頭に施している。
「うーん、近所迷惑じゃないか?」
 そうだ、うちは住宅街に位置しているからあまり派手だとクレームがくる。
「この間、Twitterで見たんだけどさ。」
 そう言って侑が教えてくれた。
「函館の五稜郭タワーと金森赤レンガ倉庫にさ、壁をよじ登っているサンタクロースの人形が張り付いてて、可愛かったんだよ。」
 説明しながらTwitterの画面をスクロールし、目当ての投稿を見付けたようだ。
「これこれ」
 それは、壁を伝ってよじ登る姿のサンタクロースだった。
「これくらいなら可愛らしいよな」
「確かに」
 早速ネット通販で物色したけど、思ったものが見つからなかった。
「特注品なのかな?」
「うーん」
 侑が考えているときは何か案がある、けど。
「木製で、いい?」
「え?」
「ちょっと待ってて」
 少し前に、サンタクロースを作った。煮詰まってたから。
「はい」
「サンタ…100均で衣装買ってくる!」
 侑が楽しそうに自転車で出掛けていった。
 帰ってきた時には両手一杯に装飾品を抱えていた。
 木彫りのサンタクロースは赤いさん角帽を被り、赤いフードのようなものを着て、赤いマフラーを巻いてもらった。
「木製のトナカイが居たから隣に置こうかと思って」
木製と言っても、三角形の板に目鼻がついているような代物だ。
「侑」
「ん?」
「メリークリスマス」
 僕は思い切り侑に抱き付いた。
「ふふ」
「なんだよ?」
「随分と大胆になったな」
 確かにそうかもしれない。でも。
「侑を愛しいと思う気持ちが溢れてる。」
 そう言ったら、耳元に「俺も」と返ってきた。
 やっぱりクリスマスは、恋人たちの時間だな。