雅之&克巳シリーズ
=雪= 『歩道』

 午後から降り続いていた雪が止んだ。
 深夜一時、歩道を埋め尽くしている茶色い雪に奴はぶつぶつ言いながらカシミアのコートに両手を突っ込んだままで歩いている。
「ちゃんと足元を見て歩けよ、すっ転ぶ・・・」
と、言ったとたん転んだのは自分だったりした。
「ばーか」
 そのまま通り過ぎて行く・・・冷たいっ、ケツがびしょびしょだ。
 よろよろと立ち上がった。
 奴はタクシー乗り場と逆のほうへ歩いて行った。
「それじゃタクシー乗れないからな、今夜はお前んちに泊めろ。」
 なんでこっちが濡れているのに奴が家に泊まるんだ、わかんねーぞ。
「歩いて行く気かよ、凍死しちゃうぜっ。」
「んなこと言っていたら北海道や東北の雪国の人間は冬になるたびに全滅だ。だいじょーぶだよ、少し歩いていれば乾くから、そうしたらタクシー拾おう。」
 ・・・気を使っているのかいじめているのかわかんない奴だ。
 ふわり、と首筋に暖かいものが触れた、使い捨てカイロだ。こんなものポケットの中で握り締めていたのか?
「冷たいのはケツだよ、ケツっ」
「お前んちに着いたら暖めてやるよ。」
 不敵な笑いを残し奴は前を歩き続けている。
 ・・・やっぱり、いじめかな。