それは進化なのか退化なのか
【一】
 3XXX年。
 人類は度重なる戦争や疫病の流行、娯楽の多様化による子育てへの無関心により、人口が極端に減少した。
 今から500年ほど前、女性にしか掛からない感染症で男性の1/1000となった途端、女性は国家機関レベルで保護され、人口増加の為に出産するためだけの存在と成り下がってしまった。
 それでも人口減少に歯止めは効かず、遂に男性でも出産が可能となるように、みみずを研究することとなった。

2021.11.20
【二】
「みみずは単体で子孫を生み出します」
「わかっている、そんなことは。しかし、出産の苦しさは散々女性たちを見ていてわかっていることだろう?十五人が限界だ。その為に性交渉は快楽を伴うのだ。快楽を味わって、苦しみを味わう。じつに合理的な仕組みだ。なので…」
 そう、男性の出産にも快楽が必要と、研究者たちは考えたのだ。

2021.11.21
【三】
「や、止めて…んっ」
 誰にも求婚されていないのに。
 僕は物心ついたときから、こうやってベッドの上から動くことが出来ないくらい、犯されまくっている。
「んっ、だめ」
 なのに、ちっとも妊娠しない。
 僕に脚を開かせるのは、主に父と兄だ。
 時々叔父がやってくる。

2021.11.22
【四】
「モモ、出るよ、出る、出るっ…んんっ」
「ああっ、中、熱い」
 もう、お腹の中は精子でパンパンだ。
「父さん、僕、失敗したのかな?」
 父が僕の孔から太い楔を引き抜くと、ゴボゴボと音を立てて白濁の精子が溢れ出す。
「モモがイカないからじゃないか?もう、ガバガバだからな。」
 そう言って笑う。

2021.11.23
【五】
 笑われても、抵抗できない。
 僕は三人兄弟の末っ子。兄二人は女性の母親から生まれた。父が「提供させられた」精子から生まれたのだ。
 しかし、僕は伯父から生まれた。
 代々、男性から生まれた男の子は、妊娠が出来るように改造される。
 改造と言っても、今は薬で身体を変えられるのだ。
 ペニスとアナルの間に、膣が出来ると、子宮が出来上がった証だ。
 父は、今でも伯父と寝ているのに、僕も抱く。子供は多ければ多いほど、年金が沢山貰えるのだ。

2021.11.24
【六】
「モモ、一緒にお風呂に入らないか?」
 父がベッドを降りるのを待っていたかのように、長兄のアオが僕を抱き上げた。
「僕も手伝おう。」
 次兄のミドリも着いてくる。
「モモ、愛してる」
 二人は着衣を脱ぐと、身体に泡を沢山塗りつけて僕を間に挟む。
「やっ、乳首、感じるぅ」
 アオが、執拗に刺激してくる。

2021.11.25
【七】
「モモはこんなに感じやすいのに、どうして妊娠しないんだろう?」
「僕の子を生んでね?」
「だめだよ、僕の子だよ?」
 二人は年金のために必死だ。
「モモ、こっちの孔も使ってあげなきゃね」
 ミドリはそう言うと、泡だらけの身体で挿入してきた。
「なら、僕はこっち」
 両足を抱えあげられ、大きく脚を開くと、ズブズブと侵入してきた。
「やっ、二人は苦しい」
 目一杯勃起した怒張を前と後に挿入され、上下に揺すぶられた。

2021.11.26
【八】
「あんっ、あん」
「気持ち、いいのかな?」
 アオの肩に爪が食い込むほど、ぎゅっと掴まる。
「いい、いいからぁ」
 下半身を兄二人に支配される。
「串刺しにしようか?」
「も、なってるし」
「違うよ、ベッドで、ね?」
 一旦ズルリと抜かれると、喪失感が半端ない。

2021.11.27
【九】
「いい子だね、モモは」
 二人係りで身体と髪を洗われ、ドライヤーを掛けて貰ったが、相変わらず素っ裸のままだ。
「モモ、お待たせ」
 そう言うと、アオの腹に乗せられ、膣の方の孔に深く突き入れた。
「あんっ」
 襞を、ゴリゴリと擦られる。
「こっちも、お待たせ」
 背後からミドリが尻孔に突き入れる。
「うふ…っ」
「気持ちいいのかい?」
 きつい隧道を突き進む。

2021.11.28
【十】
 下から突き上げられ、後から揺さぶられる。
「凄い、凄いのぉ」
「父さん、早く」
 半ば失神し掛けた所に父が来た。
「可愛いなぁ、モモは。」
 そう言うと天を向いた男性器が、僕の口を犯した。
「んーっ、んんっ」
 力強く腰を振る。
「ほーら、モモが串刺しになった。」
 そう言うことだったのか。
 三人は長い時間を掛けて、たっぷりと僕を犯し、大量に精を放った。

2021.11.29
【十一】
 暫くすると、倦怠感が訪れた。
 今までこんなことはなかったのに。
 微熱もある。
 アオが医師を呼んでくれた。
「妊娠、ですね。」
 妊娠。
 遂に。
 でも。誰の子供なんだろう?

2021.11.30
【十二】
 膣に挿入するのは父かアオ。ミドリと叔父は尻に入れる。
「やっ、父さん、堕ちちゃうから、ダメだってぇ」
 男の妊娠は無理やり身体を変えているので、なかなか定着しない。
 だから、妊娠が判明してから2ヶ月は性交を禁止されることが多かった。
「あっ、やん」
 父は変わらずに脚を肩に担ぎ上げ、ガンガン突いてくる。
「も…ヤダ、赤ちゃん、死んじゃうよぉ」
 父の暴挙を止めてくれたのは、アオだった。

2021.12.01
【十三】
「父さん、モモは大事な子供を宿しているんです、少し我慢してください。」
「モモの子は、俺の子じゃない。だから、俺の子を孕ませるんだ。」
「往生際が悪いですね。モモはミドリの子を妊娠したんです、仕方ないでしょう?」
 DNA鑑定をしたところ、ミドリの子供だった。
 つまり、僕は尻穴に入れられて妊娠したらしい。
 なんのための膣なんだろう?
 父はブツブツ言いながら、伯父の家に出掛けていった。
「モモ、ゴメン、口でしてくれないか?」
 アオはパンツからペニスを取り出すと僕に咥えろと要求した。
「妊娠したらモモの色気に当てられるんだ。可愛いよ、モモ。」
 じゅぶじゅぶとイヤらしい音をたててしゃぶる。
「あぁ、モモ…モモ」
 喉の奥に熱い飛沫が叩きつけられた。

2021.12.02
【十四】
「モモ…愛している」
 アイシテイル?よくアオとミドリはそう言うけど、何、それ。
「わかんないか。モモは生まれてからずっとこの部屋にいるもんな。ずっと俺たちに好き勝手にされてるもんな。そうだ!」
 言うと、長兄は部屋を出ていった。
 入れ替わりにミドリがやって来た。
「モモ、嬉しいよ。僕の子供だったなんて。このまま僕と結婚しないか?」
 膝に僕を抱えると、尻に屹立したモノを突きいれた。
「ミドリ、ダメだって、堕ちちゃう」
「でも、モモを見るとこんなになっちゃうんだ。愛しているよ」
 まただ、またアイシテイル。

2021.12.03
【十五】
「んっ、あっ、そこ、イヤ…」
 入れられれば気持ち良くなる。
 乳首を強く吸われて、イキそうになった。
「やっ、イクぅ」
 僕は、セックスしか、出来ない。
 その時、頭に浮かんだことだった。
 アオもミドリもガッコウという名前の所に行っているけど、僕は行ったことがない。
 そこは、人間として生きていくための知識をつけてくれるんだそうだ。
 僕には、そんな必要がないと、父に言われて、抱かれた。
 ガッコウの代わりに、この部屋に入れられたのだ。
 最初は膣がなかったから、尻ばかりでセックスした。
 薬を飲んで膣が出来上がってから、子供を孕むために膣に入れられた。

2021.12.04
【十六】
 僕の穴は、どっちも気持ち良くなるように開発されたのだ。
「ねえ?聞いてる?モモ?」
 僕の身体を揺さぶりながら、ミドリは問う。
「モモを、誰にも触れさせたくないんだ。」
 そうか、アイシテイルは独占欲なのか。
 そこに、アオが戻ってきた。

2021.12.05
【十七】
「モモ、一緒に…こらっ、ミドリ、モモが子供を生めなかったら、始末されちゃうだろ?」
 始末?妊娠しないと始末って?
「でも、」
「いいから、手伝え」
 アオはそう言うと、僕に服を着せてくれた。
「僕とミドリのお下がりだけど、サイズはいいと思う。着てごらん。」
「いいの?」
 生まれて初めての、服。

2021.12.06
【十八】
「これが、下着。脚を入れて、」
 足元にミドリが座り込んで、脚を持ち上げる。
 交互に脚を上げて、それに脚を通す。
 今まで僕の身体に纏うものは、シーツ、毛布、布団の三種類。
 初めての下着は、柔らかくて気持ち良かった。
「上に、シャツを着て、」
 今度は左右の腕に布を通し、万歳をさせられる。
 これも柔らかかった。

2021.12.07
【十九】
「これを着けないと、」
 ミドリが布の上から、乳首を押す。
「あっ、」
「ほら、擦れると立ってくるだろ?それを防ぐためだ。」
 乳首に絆創膏を貼られた。
 次に、淡いパステルカラーのセーターが手渡された。
「着てごらん」
 僕は腕を通すと、頭をいれた。
「そう、上手だ。」
 最後に膝より少しだけ上の長さのショートパンツを渡された。
「これくらいの長さなら、モモに似合う」
 脚を入れると、なんだかこそばゆい感覚に襲われた。

2021.12.08
【二十】
「変じゃ、ない?」
「思った通り、良く似合っている。それを着て、モモの服を買いにいこう。モモが子供を生んだら、学校にも行こう。」
「アオ?」
「モモは、誰が好き?」
 スキ?
 また、難しい言葉が出てきた。

2021.12.09
【二一】
「分からないのか。なら、誰がモモに挿れたとき、一番気持ちいい?」
「うーん…みんな?」
 父も伯父も太くて長いから奥までゴリゴリと擦られるから気持ちいい。
 アオとミドリはガチガチに硬いから周りの壁をズリズリと擦ってくるから気持ちいい。
 でも…。
 僕は一人でベッドで眠るとき、あんなに一杯にセックスしても、自分のペニスを弄ってしまう。
 僕も、誰かを抱いてみたい。
 僕にだってペニスがあるのだから、誰かに挿れてみたいと思うのはいけないのだろうか?

2021.12.10
【二二】
「モモ、凄く可愛い」
 ミドリが満面の笑みで僕を抱き寄せた。
「モモにはいつでも笑っていて欲しい。」
 アオもミドリも無茶を言う。
 楽しくもないのにどうして笑っていられるのだろう?

2021.12.11
【二三】
 お腹の子が生まれたら、僕はミドリのものになってしまうのだろうか?
 なんか、やだ。
 ミドリが嫌いなわけではなく、単純に嫌なんだ。
 かと言って父に縛られるのも嫌だ。
 もっと、色んな世界を見てみたい。
 それは我が儘だろうか。
「じゃあ、出掛けよう」

2021.12.12
【二四】
 アオが僕の手を取り、ドアの外の世界を見せてくれた。
 …扉の外は、僕が思っていたものとは違っていた。
 テレビで見た、キラキラした街中ではなく、荒廃した街。
 倒れ掛けたビルがそこここで幅を利かせている。
「なに?これ。」
 思わず声が漏れた。

2021.12.13
【二五】
「父さんがモモを家から出さない理由だ。こんな危険な場所へ可愛いモモを出したくないのだろう。でも、僕たちはモモに教育を受けさせたいし、セックス以外にも楽しいことがあるってことを知って欲しい。」
「うん、僕もそうしたい。」
 僕の人生は僅かに15年間だけど、知らないことだらけだ。
「アオ、モモに正しいことを教えてやってくれ。」
 不意にミドリが言った。

2021.12.14
【二六】
「正しいこと?」
 僕は首をかしげるしかない。
「この街は、貧しい人々によって強奪や人殺しが起きて荒廃したんだ。地方に行けばまだ栄えている所もある。そして農産業と畜産業は栄えている。父さんみたいな資産家は働くことが悪のように思っている。そんな国なんだ、ここは。」
 ミドリは僕に言い聞かせるような口調で語った。
「きっと、女性が沢山生まれるようになれば、また世界は豊かになる。生産性のない男が増えすぎたんだ。モモは、僕たちの救世主なんだ。」

2021.12.15
【二七】
 え?なんのこと?
「モモ、女の子を生んで欲しい。その子にアオの種を着けて純正種の女の子が欲しいんだ。そうすれば今度こそ女性の量産が叶う。」
 僕には理解できないことを、二人が交互に話す。
「モモは、僕が大切にする。」

2021.12.16
【二八】
「なに?僕が女の子を生んだら、アオが僕みたいにしちゃうの?朝から晩まで、ベッドの上に縛り付けるの?」
「そんなことはしない。けど、似たようなことになるかもしれない。」
 誰か、僕にも分かるように説明して欲しい。

2021.12.17
【二九】
 妊娠して9ヶ月を過ぎたとき、病院から迎えがきた。
 国の制度で、最新の医療で僕が安心して出産できるようサポートしてくれるのだ。
 病院では、僕のような妊夫に向けて国のことについてなど、色んな話をスピーカーから流してくれていた。
 ショッキングな内容は、子供の父親についてだ。

2021.12.18
【三十】
 男性が妊娠するために長い間研究を重ね、自ら精子と卵子を作り出す身体に変えられていたということだ。
 つまり、今、僕のなかで育っている子は、僕が一人で作り出しているのだ。
 こんなに沢山、性交をしなくても子供は生まれてくるのだ。
 そして、女の子が生まれたら、その場で連れていかれてしまうということも。
 僕は、顔を見ることも出来ないのだ。

2021.12.19
【三一】
 アオとミドリがどうして女の子を連れて帰れると、信じていたんだろう?
 父さんの女の子もいないのに。
 そして、僕の生む子はミミズと同じ、一人で受精したのに。
 セックスするのは出産の痛みを乗り越えられる快楽だから。
 快楽はご褒美なんだ。
 男の子ならいいのに。

2021.12.20
【三二】
 男の子なら、一緒に帰れるのに。

 しかし。
 生まれた子は両性具有だった。

「女の子じゃないから、連れて帰ります!」

2021.12.21
【三三】
 僕はそう告げて帰路に着いた。
 そこに、ミドリが迎えに来ていた。
「モモ、偉かったな。」
 そう言うと僕の生んだ子供を抱き寄せた。
「アオに嫁がせるのは惜しいな。俺が貰うか。」
「え?」
「うそうそ。でもモモの子だから、可愛くて仕方ないんだ。しかも、俺の血を受け継いでいるなんて。」

2021.12.22
【三四】
 僕は逡巡した。
 しかし、事実を告げることにした。
「ミドリ、この子男の子で女の子なんだ。」
「両性ってこと?」
「うん」
「なら、暫くは家にいるんだね。良かった。」
 暫く?

2021.12.23
【三五】
「あ、そうか。モモは知らなかったね。多いんだよ、薬を使うから。」
 ミドリは言葉を濁したが、僕のように薬で子を生めるようになった人間が生む子供ははじめから両性であることが多いのだ。つまり、薬が子供に影響しているのだ。
「アンズ…可愛いだろ?名前。」
「ミドリ?」
「僕たちは色の名前しかつけて貰えないからさ、せめて可愛い名前にしてあげようと思ってた。モモ、その子がモモの子だってことは、紛れもない事実だから。僕はアンズも愛してるよ。」

2021.12.24
【三六】
 ミドリは知っているのだ。
 アンズが僕一人の子だってことを。
 そして、アンズも一人で子を成す。
 ミドリは、僕たちの生活を保証するために存在している。
 僕たちを抱くのはその対価。
「ミドリ、僕学校には行かない。その代わりミドリが勉強を教えてくれたら嬉しいな。」
 ミドリはアンズと僕を抱き締めた。

2021.12.25
【三七】
「いいよ、僕でいいなら。」
 僕たちは、家族になった。
「ミドリ、愛してる」
 僕はまた、子供を生むだろう。
 ミドリに抱かれて、アオに抱かれて、父さんに伯父さんに…。
 そして、地球の未来を託していく。
 いつか、人間が沢山、地球上に溢れますように。

2021.12.26 完