短編集2020
姉の同級生〜同級生シリーズ〜
 最近、姉の萠子(ほうこ)が、家に同級生を連れてくる。
 いつもリビングルームでお茶をして帰って行く。
「あの人、なに?」
「同級生」
「それは…そうか。で、何用?」
「紅茶が趣味なの。」
「へー」
 さっぱりわからん。
「つーか、なんで毎回僕も同席させられるの?」
「簡単よ、甲子郎(かねお)くんが、耀太(ようた)も一緒にって」
 ますますわからん。
「明日からは僕抜きでお願いします。」
「それは無理。耀太込みでお茶とお菓子を持参してくれるの。」
 なんだ、それ。
「そもそもどうしてうちに来ることになったんだ?」
 姉は首を捻り「さあ?」と言ったが、口元が笑っていた。
 絶対、何か知っている。

 土曜日。
 今日も甲子郎は来た。(名前を覚えてしまった)
「これはインドから取り寄せたファーストフラッシュで…」
 本当だ、蘊蓄を語ってる。
 お、このクッキー、「美味い」思わず呟いた。
「え?美味しい?」
 甲子郎が食い付いた。
「それは、夕べ僕が焼いたんだ。良かったらまた焼いてくるよ。」
 満面の笑みで答える。
「良いんですか?美味しいなぁ。」
 ちょっと大袈裟。

 翌日。
 姉もいないのに、甲子郎が来た。
「姉ちゃん、ピアノのレッスンに行ってて…」
「あ、違うんだ、はい。」
 紙袋に重たいほどクッキーが入っていた。
「昨日褒めてくれたから」
「え?でも、貰う理由がない」
「なら、付き合ってくれないかな?」
「どこへ?今日は暇だから別に」
「いや、そうじゃなくて…耀太くんが好きなんだ。」
「…はあ?」
 甲子郎、大丈夫か?
「学校で見掛けて、可愛いなぁと」
「いやいや、可愛いなら姉ちゃんでしょ?」
 待ってくれよ。確かにちょいちょい可愛いって言われるけど、まだ成長期だからな、これから背も伸びる…きっと。
「中学生と高校生だからダメなのかな?」
「イヤイヤ、そういうことじゃなくて」
「なにがダメなんだい?まさか…」
 まさか男同士だから?とか言わないよな?
「萠子ちゃんとは同級生なだけだから。」
 ちがーう!
「なら、お試しで!」
「無理」
「僕、外の高校に行きたいんで、受験勉強するんで。」
「なら、勉強見てあげるよ」
「いや、従兄弟の兄ちゃんが来てくれるから」
「従兄弟の兄ちゃん?」
 ガバッ
 甲子郎が抱き付いてきた。
「ちょっ!」
「嫌だ、男が近寄ったら取られる」
 なんだ?こいつ?
「どうして耀太くんは自分の利点を認めないんだ。」
 突然、キスされた。
 待てよ!ファーストキスだぞ!
「んーっ、んー」
 抵抗したがダメだった。
 くちゅくちゅと音がして、口ん中犯された。
 でも、気持ちイイ。
 甲子郎の唇が離れたら、身体の力が抜けた。
「僕なら、もっと気持ちイイことがしてあげられる。」
 もっと、気持ちイイ?
「なら、お試しで」
 中学3年、夏はこれから。

 当然、夏休み中にバックバージンを奪われた。

2020.06.18
弟の同級生〜同級生シリーズ〜
 耀太に彼氏が出来た。
 姉としては複雑だ。
「甲子郎くん、念願叶ってどうよ?」
「そんなこと、聞きたいか?」
 弟の痴態なんか聞きたくないっちゃあ、聞きたくないが、知りたい気持ちはある。
「萠子、耀太に変な虫が付かないように見張れよ」
 コイツはなんで命令口調。
 しかし、何故か私は逆らえない。
 だから耀太もコイツに売った。
 切々と恋心を伝えてくるから、そんなに好きなら手伝ってやるとは言ったけど、まさか弟だとは思いも寄らなかった。
 耀太も耀太だ。
 まさか絆されるとは、誰が思い付くのか。
 変な虫ね。
 甲子郎くんには悪いけど、最近、来てるよ。

「ただいま」
「◎☆△×□★○!!」
「▲●◆★+⌒(ё)⌒>°))))彡!!」
 遠くから言い争う声がする。
 きっと変な虫が来ているのだろう。
 この変な虫を私が教えなかった理由は一つ。イケメンなのだ。
 しかも若いのに礼儀正しい。
 出来ることなら甲子郎くんより変な虫くんの方が耀太にはいい。
 …姉としては、女の子をお薦めするが。
 そして!
 なんなら私が…と、思っている。
「絶対!後悔させてやる!」
 ん?
 変な虫くんが耀太に啖呵を切って出て来た。
 さっきの言い争いは喧嘩だったのか。
 ドスドスと階段を降りてきたが、私を見留めて「お邪魔しました」と、満面の笑みで帰って行くところは、品を感じる。
 ドスドスと階段を降りてきた耀太は「真玄(まさはる)のばーか!」と、背中に向けて悪態をついていた。
 真玄くんというのか。
 しかし、我が弟ながら子供だなと思う。
 甲子郎くんはこいつのどこがいいのか、わからん。

2020.06.19
姉と弟の同級生〜同級生シリーズ〜
「お前っ、ばっかじゃねーの!」
「なんでだよ!」
「だって!二つも年上って…じじいじゃねーかよ!」
「…じじいか?そんなに老け込んではいないぞ?甲子郎は。」
 真玄がヘンだ。
 彼氏が出来たと言ったら、烈火の如く怒りだした。
「そのうち、ケツ、掘られるぞ!」
「それ、ア○ルセ○クスだろ?」
 真玄が口をパクパクしてる、更に怒っているのだろう。
「お前なんか…しらねーよ!」
 ドタバタと帰って行った。
 何が気に入らないんだか?

「耀太くん、今日はケーキを焼いたんだけど、うちに来ないか?」
 甲子郎との動物園デートの帰りに、ケーキで釣られた。
 甲子郎の部屋で、また気持ちイイキスをされた。
「んんっ」
 はぁーっ、キス、気持ちイイ。
 ん?
 なんでパンツに手…!!
「何すんだよ!」
 …時既に遅し。
 なんでこんな日に、脱がされやすいズボンを履いてきたかな?
 一気にズボンとパンツを脱がされて、小さく縮こまっているモノを握られた。ヌチヌチと扱かれると、条件反射だ、ムクムクと起ち上がる。
 「耀太くん、可愛いよ」って言われて、尻孔弄られ、ロストバージン。
 なんてこったい!
 痛ーのってなんのって、この世の物ではない!
 もう、甲子郎とは別れる!

「つーわけで、別れた」
 これで真玄の機嫌も直るだろうと、タカをくくっていた。
「お前っ、耀太っ、ばっかじゃねーの!」
 またかよ!
 「なん」でまで言わせてもらえず、またしてもキスされた。
 なんで、キスに弱いんだ、俺。
「んーーーーーっ」
 あ。
 気持ちイイ。
 忽ち腰砕け。
 真玄にも、ちゅくちゅくとキスされながら、脱がされた。
 そしていつまでもケツを弄り倒された。
「あん」
 え?なんだって?なんで俺がアンアン言ってる?
「ああん」
 え?キスより、気持ちイイじゃんか。
「耀太、じじいより、俺にしろよ。連れて歩くにも見栄えがするだろう?」
 確かに。
「耀太、好きだ!」
 へ?
 なんなんだ?今年は。男にばかりモテる。
 曖昧な返事をしていたら、二人目の彼氏が出来てしまった。
 彼氏を作るときは計画的に…かな?

2020.06.20
同級生の弟〜同級生シリーズ〜
 中学三年の時、一年生に恋をした。
 名前もなにも知らなかった。
 それから二年が過ぎたときだった。
 同級生の弟が、その人だとわかった。

「んっ」
 キスに弱い耀太を、キス攻めで落とす。
「甲子郎くん、も、ヤダ…気持ちイイ…」
 あー、可愛い。
 イキ顔も見たい。
 これが全ての間違いだった。

「もうっ、もう来ない!さよならっ!」
 え?
 フラれたのかな?
 ヤバい。調子に乗りすぎた。
 キスで気持ちイイと言われたから、弄ってハメたらフラれた。
 よく考えたら当たり前だ。
 家の前で待ち伏せして…。いや、ダメだ、逆効果だ。
 メールを入れておいて明日会いに行こう。

 ショックだった。
 耀太くんの家から、超絶イケメンの男の子が走り出てきた。
 もしかしなくても、ライバルだ。
 あんなイケメン、太刀打ちできない…けど、別れたくない!

2020.06.21
同級生の恋人〜同級生シリーズ〜
 耀太に彼氏が出来たと言われ、かなり焦った。
 世の中に耀太を狙っている男が、自分以外にいるなんて思いも寄らなかったからだ。
 しかも、何もかもにおいて先を越された。
 大事に大事に育ててきた友情と愛情を、かっ攫われてしまった。

「耀太を、返してください。おっさんにはそれなりに相応しい人がいるでしょ?」
 耀太と待ち合わせをしているという場所にのりこんだ。
 幸いにも俺の方が背が高かったので、威圧的に出てみた。
「耀太くんは、オレを選んだんだが?」
「ケツ掘ってフラれたじゃないですか?」
「それは、まあ、急ぎすぎたかなとは思っている。でも今日も待ち合わせているし、まだ諦めては、」
「遅いです、もう、俺のモンです。」
「え?」
「寝ました。あなたが開通してくれたお陰で、すんなりと。」
 ニヤリと不敵に笑って…いるかどうかは不明だが、頑張ってみた。
「耀太くんが?」
「はい」
 敵は耀太に電話を掛けた。
「もしもし?耀太くん?あ、…切られた。」
「ご愁傷様。そんなわけで、よろしく。」
 今なら、間に合う…。
「待て、待て待て!」
 ゼイゼイ言いながら、耀太が飛び込んできた。
「やっぱり、真玄…ちょっと待ってくれ。」
 息を整えるまで待てと言われ、おっさんと俺は大人しく待った。
「兎に角、不毛な付き合いだ、俺は決めた!」
「お前は考えなくてイイ、ただ感じていれば良いと言っただろうが。」
 チッ、気付いたか。
「その、感じるだけなら一人より二人の方が俺には都合がイイ。俺はどっちとも付き合う。いいな!」
 こいつ、馬鹿なくせに知恵は回る。
 いや、違うな。
 ただ、スケベなだけだ。
「それと!女の子を好きになったら二人とも終わりだ。つまり、繋ぎだからな!」
「分かった。」
 俺は頷いた。
「甲子郎くんは?」
「わ、分かったよ。」
「よし、じゃあ今日は甲子郎くんとデートだから。じゃあな、真玄。」
 二人は去って行った。
 なんだよ、おっさんより手強い相手は耀太かよ。
 なら、迎え撃つだけだ。

2020.06.22
所有の証〜前編〜
「はぁっ…ん…」
 丁度、シャツの襟からは見える位置に噛み付かれた。そしてチュウチュウと吸い上げられる。
 痣のようなキスマークを付けられる。
 それは、浅野の所有の証。
「石井、ここ、舐めてもいい?」
「ん…舐めて…あんっ」
 乳首を舐めるのが好きらしい、飽くこともなく舐める。偶には強い刺激が欲しいけど、ずっと舐めている。
「あっ」
 ピンポイントに僅かな刺激が延々と続く。
「あさ…のっ、下…も、」
「下もなに?」
 絶対、強請るまで触れないのだ。
「擦って」
 二人とも蜜口にたっぷりと蜜が溢れていた。
「オレは石井の乳首を舐めていたいんだけどな」
 器用に乳首を舐めながら互いのペニスを擦りつける。
「あっ、熱い」
「ん、石井のが熱い」
「浅野のも」
 それでも、どちらも僅かな刺激で物足りない。
 もっと、グリグリと擦って欲しい…なので、腰を前後に揺すってみる。
「こっちも、舐めてあげるね」
 そう言ってもう一方の乳首を舐め始める。
「あぅっ」
 新しい刺激に、愉悦する。
 自らペニスを擦りつける。
「石井、焦るなよ。ゆっくりゆっくーり、溶かしてやるからな。」
 その台詞に、身体がブルリと震えた。
 とろとろに溶かして欲しい。
「あ、そうだった」
 何かを思い出して身体を離す。
 途端に寂しくなる。
「あさ…の?」
 俺達は身体を重ねるようになってから、かなり経つけど、互いに名字で呼ぶ。
 プレゼントに結んであるようなピンクのリボンを手に戻ってきた。
「石井にプレゼント」
 そう言うとペニスの根元からグルグルとリボンをギチギチに巻き付けてきた。
「ちょっ、」
「今夜は、射精出来ないよ?」
「ヤダ、そんな」
 手を伸ばして解こうとすると、その手を一纏めにしてペニスと一緒に縛られた。
「何すんだ」
 言いながらも期待に胸が踊る。
 酷くされてみたい
 そんなことを前回のセックスで言った。
 浅野にとっては精一杯の酷いことなのだろう。
「あ」
 浅野が困ったように眉を下げた。
「これじゃ、乳首を舐められないな。なら、」
 枕を腰の下に入れると両脚を持ち上げられた。
 後ろの孔が浅野に丸見えだ。
「ここ、舐めてあげようね」
「ヤダ、恥ずかしい」
 そんな言葉には構わず、舌を這わす。
 優しく、優しく舐める。
「あぁっ…はぁっ、」
 皮膚がふやけてブヨブヨになっていそうだ。
「柔らかくなったよ」
「言わなくて…いいから」
「そ?なら、」
 ツプと、何か冷たいものを押し込まれた。
 浅野は変わらずに襞を一つずつ舐めている。
 ブンッ
と言う音と共に、内壁が動いた。

2020.06.23
所有の証〜中編〜
「あっ、なに?」
「言わなくて良いんだよね?」
「違っ…あんっ、なに?なんなの?」
「ローター。知らない?」
「知らな…いっ」
 俺は、お前が初めての相手だからな。
「石井、初々しいな。」
 羞恥に顔が熱くなる。
「こんな顔、誰にも見せたくない。」
 見せるか!
「ローターだけで、イキそう?」
「イカ…ないっ…ん」
「でも、気持ちイイ?」
「ん」
「気持ちイイ?」
「うん」
「気持ちイイの?」
 絶対、言わせたがる。
「気持ち…イイ…んっ、けど、浅野が…欲し…あん」
 もっと奥に、熱くて太いのが欲しい、そう言えば挿入れてくれるのは分かっているけど、まだ理性が残っていて言えない。
 浅野は指にローションを塗ると孔に埋められ、ローターが奥に押し込まれた。
「あっ、あっ」
 当たる。イイ所に当たる。
「気持ちイイんだね?涎出てる。」
 手で隠す。
「そっちじゃないよ、口。」
 浅野はティッシュで俺の口元を拭う。
「初めてじゃないんだから、ちゃんと言って?」
 もう、もう、我慢できない。
「挿入れて!浅野のおちんちん、突っ込んで。」
「よく出来ました。」
 浅野は拘束した手を外したが、根元に巻き付いたリボンはそのままだった。その意味を俺は知らなかった。
「挿入れるよ?」
 ローターが入ったままで、浅野のペニスが押し入ってきた。
「あっ、ローター…うっ、んんっ」
 圧倒的な太さと重量感に圧倒される。
 ローターは奥に奥にと押し込まれ、お腹の中でユルユルと震えている。
 浅野はゆっくりと抽挿する。
「石井、気持ちイイよ、凄く気持ちイイ。石井は?」
「イイ、気持ちイイ」
「ちゃんと、この形を覚えるんだよ?他の形は咥え込んだらいけないんだからな?」
「当たり前だ…よ」
 浅野以外の男と寝るつもりはない。
「気持ちイイのはこれだけ、分かった?」
 言うと、ズルリと浅野のペニスが抜けた。
「なんで?」
 浅野は手に何かを持っていた。それが何なのか、よく見えなかった。
「ちゃんと覚えたか確認します」

2020.06.24
所有の証〜後編〜
 ズブリ
 後孔に冷たいモノが挿入された。でも、形は…。
「おんなじ」
「正解。俺の型を取って作ったディルドー。気に入った?」
 グチグチと音を立ててディルドーが出入りする。
「あっ…あっ…」
「イキそう?」
「んっ、イキ…そう」
「イって良いよ」
「あっ、でも…浅野が、いい、浅野の熱いので、イカせてぇ」
 目尻から涙が零れる。
「あっ、あぁ…」
 その時、背骨を踏み潰されたような衝撃があった。
「な…に…あっ」
 身体に力が入らない。
「石井、肛門がキューキュー締め付けてて、ディルドーが抜けない。力抜いて?」
「抜いて…る」
 おかしい。なんか、ヘン。
「ダメか」
 浅野は諦めたように、蜜口を舌で舐めた。
「はぅっ」
 スポンッと、ディルドーが抜けた。
「凄いな、石井のドライオーガズム。」
 ドライオー?なんだ、それ。
 再び浅野のペニスが後孔に突っ込まれた。
「あん」
「ちゃんと俺の形を覚えていたご褒美、今度こそイカせてやるよ。」
 激しく抽挿され、中はトロトロになっている。
「あっ、気持ちイ、気持ちイイ、んんっ」
 お腹の辺りまで射精感は届いているのに、爆発的な快感がない。
「ん、出せない、なんで」
「石井、出すよ?」
「待っ…」
 根元に巻き付いていたリボンが一瞬にして解け、内と外に濃い精液が放たれた。

「キスマークだけじゃ、満足できなくなった」
 翌朝、目覚めたときに浅野が言った。
「完全に支配しないと不安だ」
「なんだよ、それ。」
 ホテルのレストランの厨房で、共に働く二人。
 浅野はフランス料理、石井はパティシエ。
「石井を狙っているのは女だけじゃなく男もいる。だからいっぱいお前に印を残したかった。」
 夕べの意地悪さはどこへやら、塩らしい浅野がいた。

2020.06.25
お届けものです〜前編〜
 夏休み。
 高校生なのに僕は堂々とアルバイトをしている。
 当然、学校では禁止されているのにも関わらず、だ。
 正解は、母が経営するアイスクリーム屋の店番である。
 普段は主婦のアルバイトがいるのだが、夏休みなので子供が家に居るため勤められない…で、僕に白羽の矢がぶっささった。
 アルバイト代はしっかりと貰う約束は出来ている。
「おはようございます」
 朝一で宅配便の人が配達に来てくれる。
 定期便だったり、注文したものだったり色々届く。
「おはようございます、今日も暑いですね」
 宅配便の人は笑顔で帰っていく。意外と若い人なんだなぁと、なんとなく見ていた。
 郵便屋さんは11時頃にやって来るけど、ハンコが要らないものは店先のポストに投函されているので、ほぼ会わない。ゆうパックは昼頃届くが、こちらも偶にである。午後一に書留が届くらしい…まだ受け取ったことがない。
 午後3時に再び宅配便の人が来てくれる、冷凍便で通販商品を送るためだ。
 僕は店頭に居るけど、母は店舗裏の製造所に居る。ここでアイスクリームの仕込みをしている。
 店が大忙しになると、アルバイト代が上がるのになぁ。
「こんにちは…って、氷山(ひやま)くん?」
 午後に来た宅配便の人が、朝と違う人だった。
「送田(そうだ)先輩!」
 僕が高校に入学したときに三年生だった先輩。
「お久しぶりです。」
「2年振りだね、バイト?」
「母の店なんです。店番。」
「そっか、バイト禁止だもんね。」
 箱に貼ってある伝票を機械で読み取っては保冷バッグに入れる作業をする。
「今日から僕が来るから、宜しく。」
「宜しくお願いします。」
 今朝まで来ていた人は、どうしたんだろう?と思いながら手を振った。

 翌朝、午前中はいつもの人が来た。
「午後は担当が変わったんですか?」
 早速聞いてみる。
「冷凍車専門のバイトが入ったので夏休みは彼が来ます。」
 そういうことか。
「高校の先輩なんです、送田さん。」
「そうですか、お知り合いだったんですね、良かったです。」
 彼は仕事を終えると帰って行った。
 昼過ぎ、珍しくゆうパックが届いた。郵便屋さんはさらっと帰った。
 午後は送田先輩が集荷に来た。
「先輩、夏休みのバイトなんですね」
「達彌さんが言ってた?」
「あ、そう、朝の…」
「兼古達?(かねこたつや)さん。あの若さで主任だよ。」
 何故か先輩は朝の人のフルネームを告げて帰った。

2020.06.26
お届けものです〜後編〜
 そんなこんなで高校三年の夏休み最終日。
 今日も朝から兼古さんがやって来た。
「おはようございます」
「おはよう、ございます。…あの、」
「はい?」
「送田君から聞いたのですけど、」
 先輩、何を話したんだ?
「今日でバイト終わりですよね?二学期からは受験も忙しいでしょうし…」
「あ、大丈夫です、僕、推薦が決まってるんで。」
 一学期の内に、推薦の内定が出ていた。
「なら、これ…」
 何の変哲もない茶封筒を手渡された。
「後で見てください」
 兼古さんは帰って行った。
 その後はお客さんが珍しく引っ切り無しにやって来て、昼休憩まで時間がなかった。
 バックヤードでサンドイッチを食べながら、兼古さんから渡された茶封筒を開けた。
『送田君から、貴方の恋愛嗜好を聞きました。良かったら次の日曜日、映画を観に行きませんか?』
 僕の恋愛嗜好?何のことだ?
 手紙の意味が分からないまま、午後の送田先輩の集荷時間になった。
「先輩はいつまでですか?」
「僕は9月末まで。あ、氷山くんは今日までか!残念だな。」
「そうですね。あ、連絡先交換しましょう!」
 そして、僕の夏休みは終わった。

 日曜日。
 よく分からないまま、兼古さんとの待ち合わせ場所に来た。
「氷山さん!」
「あ、ども。」
 …デート、だよな?
「あの、兼古さん、『恋愛嗜好』ってなんですか?なんとなく『恋愛指向』かなとは思うのですけど、それは僕がゲイだと送田先輩から聞いたってことでしょうか?」
 スマホのメモで漢字を説明しながら聞く。
「すみません、漢字が苦手で。で、そう言う意味です…違うんですか?」
 慌てた表情で僕を見ている。
「正解ではないけど間違ってもいないです。でも、どうして送田先輩とそう言う話になって、彼はそんなことを言ったのでしょう?」
 送田先輩は何を考えているのだろう?
「え?だって、彼と2年前に付き合ってたって…え??」
 完全に混乱している。
「分かりました、とりあえず映画を観て落ち着いてから確認しましょう。」
 …送田先輩、やってくれたな。

「氷山君、キス、してみたくないか?」
 高校一年の一学期、ガツガツと部活動をするのもかったるいので、軽い運動程度で済ませられる、バトミントン部に入った。
 週に二回の部活終わりに、突然、二年の先輩に言われた。
「そうですよねー、高校生になっ」
 二年の先輩が、いきなり噛み付いてきた。
 藻掻いてどついて、やっと離れた先輩に、「好きだ」と言われた。
 それを間に入って止めてくれたのが送田先輩だった。

「そうか、君はゲイに勘違いされやすいんだね。」
「いや、勘違いでもないんです。男が好きなときもあるんです。」
 兼古さんのことは嫌いじゃないけど、二度と会えなくても悲しくはなかった。そんな程度の好き。
 送田先輩は態と兼古さんを炊きつけた。なら、挑発に乗ってやろうじゃないか。

『達彌さんからお礼を言われた。』
 送田先輩からメールが来た。
『そうですか。僕からもお礼を言います。付き合うことにしました。で、しました。』
『ちょっと待て。』
『何をですか?人の恋路を邪魔しないでください。』
 電話が鳴った。
「何ですか?」
 送田先輩だ。
『何ですかって、達彌さんは、その…』
「ちゃんと僕を受け入れてくれましたよ?」
『まさか?』
「先輩、先輩は2年経ってもそんなことしているんですね。」
『そんなことって…氷山くん』
 僕は、電話を切ると、履歴と登録を消し着信拒否設定をした。

 9月の最終日曜日。
 僕は店頭にいた。
「おはようございま…す!?」
 現れた宅配便の人は先輩だった。
「兼古さんじゃないんですね、ご苦労様です。」
 僕は荷物を受け取るとさっさと背を向けた。
「兼古さんは日曜休み。」
「それは残念。」
 僕は背を向けたままだったので、先輩が帰ったのは気配で悟った。
 午後、集荷の時間。
「ありがとうございました。あの…お届けものが一件あるんですけど。」
「あれ?四国便ですか?」
 東京では四国の便が翌日の午後に届く。
「いえ、ポスト投函の方なんですけど、入らなくて。」
 何だろう?
「お店の前に置いたので、受け取ってもらえますか?」
 突然、手を引かれた。
「何?」
 店先に、大きなバラの花束が置いてあった。
「意地悪して、ゴメン。兼古さんに全部聞いた。」

「兼古さん、僕、ずっと送田先輩が好きだったんです。先輩も知っているのに、何かと言ってはちょっかいを出してくるのに、逃げるんです。だから諦めました。一度も、付き合ってなんかくれません。」
 手を繋いだことだって一度もない。
 いつだって触れてくるのは気まぐれな先輩の方。
 でも、先輩だって誰とも付き合わなかったじゃないか…。
「だから、恋することが怖いんです。手を伸ばしたら逃げられるから…」

「今更、遅いんです。」
「分からなかったんだ、僕が子供過ぎて。愛だとか恋だとか。男同士の恋愛なんて分からないから。」
「だからっ、好きだって言ったじゃないですか。」
「その、好きが分からなかったんだ。ただただ、氷山くんが可愛かった。」
「本当に?」
「本当に。」
「信じていいのですか?」
「信じてくださいっ。そして教えてください。」
 僕は態と大きくため息をついた。
「全部、教えてあげますから、もう意地悪しないでください。」
「しない、兼古さんにはしっかり謝っておく。」
「お願いします。…花束、ありがとうございます。」
「あの…もう一度連絡先を、」
「解ってます。」

 あれから半年。
 無事に僕は大学生になって地学について研究している。
 倫彦(みちひこ)…あ、送田先輩は、従順に脚を開いている。もう、僕がいないと我慢できない身体になっているはず。
「あっ…そこっ、そこがイイ…んんっ」
「倫彦、好きだよ。」
「ん…ん…」
「僕からのお届け物、受け取って。」
「あんっ」
 倫彦の喘ぎ声を聞きながら、僕もまた下腹部に甘い疼きを覚え、脚を開く。
「倫彦、きて…」
 何のことはない、互いに互いがいなければ、我慢できない身体になっていた。
 ただ。
 あの時倫彦に恋愛について教えると言ったのに、セックスしか教えてあげてない。
 まぁ、先は長いから、いいか。
 2年も待ったしね。

2020.06.27
同期会〜前編〜
「んっ…あっっ」
 どうして、こんなことに、なっ…たんだっけ?
「あぁっ…いぃ…」
 深…い。
「鷹勢(たかせ)、中で出して、いい?」
「してっ、い…い、中、いっぱい、出し…て」
「後でちゃんと掻き出してあげるから」
 あ、出てる…すっごい、熱いの…出て、る。
「ああんっ、スゴく…気持ちイイ」


 目が覚めて、男の腕枕で寝ていたことを知る。
 鷲来(わしき)?
 同期で入社した営業部の鷲来旭良(あきよし)は、常に営業成績トップのエリートだ。
 そっか、夕べはコイツとセックスしたんだった。
 小さく溜息をついた。
 時々、やってしまう。
「鷹勢?起きたのか?」
 まだ目が開けられない状態で、俺のことを気に掛けてくれる。
「ああ、おはよう。」
 ゆっくりと目を開けると、俺を抱き締め、「おはよう」と、これでもかと言うほどの甘い声で挨拶を返してきた。
「鷹勢、ずっと好きだったんだ。このまま、付き合わないか?」
 驚きで声が出せない。
「え?だってお前、社長の娘と縁談…」
 途中、キスで遮られた。
「ん…」
 気持ちイイ。
「断った。」
 少し離れてまたくっ付く唇。
「んんっ」
 超絶気持ちイイ。
「鷹勢、可愛い。」
 その声も気持ちイ…ん?
「今、可愛いって言わなかったか?」
「あ、イヤだった?なら…スゴくイイ夜だった。」
 コイツ…もうっ、顔が熱いじゃないか。
「もっと、愛を深めたい。」
 もっと?
「俺は愛がない!」
「え?だって夕べ…ええ!?」
 「時々あるらしいんだ、喘ぎながら愛してると言ってる。俺が愛してるのは行為そのもの、お前じゃない。」
「なら、もう少し付き合ってよ。何回かしたらきっと好きになるから。」
「凄い自信家だな。お前と付き合い始めたら、俺は仕事が出来なくなる。」
「まさか!鷹勢ほどの人なら、誰も文句言わないだろ?研究費も潤沢に出ている。」
「出来上がればな」
 そう、俺の手がけている糖質0の甘味料は研究成果が無ければ、クビだ。
「だから余計なことに煩わされたくない。」
「余計なこと…鷹勢にとって恋は余計なことなのか。」
 俺は、言葉選びをしくじったらしい、鷲来の気持ちに油を注いだ。

2020.06.28
同期会〜中編〜
「ふーっ」
 朝から溜息が漏れ続けている。
 普段は社内の男とは絶対に寝ない。
 夕べは何をとち狂ったのだろうか?
 同期会になんか行くんじゃ無かった。
「鷹勢さん、今朝は顔色が悪いですね、体調が悪いようだったら帰っては?」
 同僚に気を遣わせてしまった。
「すみません、夕べ同期会があって飲み過ぎました。今後は気を付けます。」
「鷹勢さんの同期会だと、鷲来さんも居たんですか?」
 女性研究員の声が色めき立つ。
「ええ、同期ですから。」
 きゃっ、と言う声が聞こえた。
 自慢では無いが、鷲来と俺は社内で仕事が出来る上に美人で有名だ。
「鷹勢さんと鷲来さんが並んだら圧巻だろうな。」
 男性社員が溜息を付く。
 その二人がまさかの昨夜、組んず解れつの事態だったとは誰も想像すらしていないだろう。

「かんぱーい」
 同期会は1年振りだった。
 海外から戻ってきた同期の労い会だ。
 俺の隣にも鷲来の隣にも、女性社員が数人いた。
 主役の周りは男性ばかりだ。
「主役にも華を持たせてやってよ。」
 女性社員に声を掛けると、「確かに」と言いながら全員散っていった。
「鷹勢、サンキュ。助かった。」
 小声で鷲来が言ってきた。
「だって鬱陶しいだけだから。」
「それは、そういうことか?」
「そういうこととはどういうことだ?」
 社内の人間には絶対に言いたくない、自分の性癖。
 鷲来が店員に何か注文していた。
「お待たせしました」
 やって来たのは日本酒「酔鯨」、高知のお酒だ。
「こっちにしないか?」
「いいね」
 硝子の器でなんとも涼しげだ。
 口当たりが良くて杯を重ねた。
 「獺祭」「花の舞」「菊水」と、有名どころが鷲来の注文で次々と運ばれた。
「鷹勢、この後時間ある?」
「んー、あるよぉー」
 呂律が回っていない、のは覚えている。
「付き合って欲しいところがあるんだけどな、ダメ?」
「おーけーおーけー、行くぅ」
 酒に、飲まれてた。


「「ここ、どこ?」って聞くから、「鷹勢が気持ち良くなる所。」って答えたら「気持ちいくなるぅ?」って。それで僕はちゃんと鷹勢に言ったよ、キスしていい?って。「んー、いいよぉー」って、可愛く答えた。ドキドキしながら唇を重ねると、鷹勢は大胆に舌を入れてきた。」
「う、嘘だ」
「嘘じゃないよ、それで僕も腹が決まった。鷹勢が忘れられなくなるような夜にしてやるって。」
「何でだよ!」
「言ったろ?好きだから。」
「う…」
「鷹勢は自分から服を脱ぎ始めて「鷲来ぃ、早く気持ちいくしてぇ」と、誘ってきたよ。酔っ払っているから風呂には入らずにベッドへ行った。」
「マジかよ」
「もしかして、隠してたつもり?ゲイだって。」
「つもりだ」
「なら、無理だ。僕は入社式の日に気付いた。そして、鷹勢はやっぱり可愛い。鷹勢の部屋に誘ってくれて今夜も又、僕と二人きりになるなんて。」
「…から」
「なに?」
「夕べ、善かったから。」
「なら付き合うって言って。」
「やだ。社内の男とは絶対に付き合わない。」
「なら、帰る。」
「ま、待って、」
「どうする?」
「付き合わない、付き合わないけど、同棲しないか?」
「いきなり、プロポーズ?いいよ。准、おいで。」
「名前で呼ぶな!」
「プロポーズしたのに名前はダメなんだ。」
「う…仕方ないな。許す。」
「准、じゅーんくん、准ちゃん…准がいいかな?」
「…ごめん。俺は…」
「僕の写真、持ってるよね?それで何回した?」
「なんで、なんで知ってるんだよ。恥ずかしいな!そうだよ、俺はお前に惚れてんだよ!でも、お前は興味なさそうだったから、ずっと我慢してた。なんで…」
「しながら、教えてあげる。」

2020.06.29
同期会〜後編〜
「後を着けてた。」
「えっ…ちょっ、んっ」
「准が帰りに何処へ行くか、着けてた。」
 手で俺の昂りを扱きながら、耳元で囁くように告白する。
「二丁目で話してることを聞いてた。身に覚えあるでしょ?」
 悔しいので首を縦に振ることで肯定する。
「重症な位の片思いをしていて、隠し撮りした写真で、」
「分かった、ごめん、許して」
 俺は何回酒で失敗するんだ、その時も店にいた男と寝た。
「ちょっ、ダメだって、」
 鷲来は後孔に指を突っ込んできた。
「なんで?明日は土曜日。朝まで鳴かせるつもりなのに?それとも僕を煽ってる?」
 くちゅくちゅと孔から音がする。
「准、スゴくヤラシイ音が出てる。」
「おま、弄る…から」
「旭良。呼んでみて、准。」
「ヤダ」
 指が増やされ、ぐちゅぐちゅと激しく掻き回される。
「ん」
「准を気持ち良くさせてるのはどの指だ?」
「そんな…わかん…ない」
 ぐっぐっと、奥に進む。
「ここまで入る指だから?」
「なか…ゆ…び」
「あとは?」
「ひと…さし、ゆび」
「当たり。よく出来ました。ご褒美をあげないとね。」
 鷲来のキスが降ってくる。
「ん…んんっ」
 舌が絡まり、唾液が滴る。
 鷲来は左腕で俺の腰を抱き上げ、怒張を脚の付け根に擦りつけてくる。
「んんーー」
 気持ちイイ。
 中、擦って欲しい。
 片脚を鷲来の腰に巻き付けた。
「欲しい?」
「欲し…鷲来の、それ、挿入れてぇ」
 泣きながら懇願する。
「准、可愛いよ。」
「旭良、あき…よし…好き、愛してる。」
「准は、本当にこれが好きなんだ。」
 ずぶずぶと、鷲来の肉棒が俺の肉壺に突き刺さる。
「違っ…セックス、旭良とだから、好き。あぅっ…イイっ」
 どうしても鷲来には俺の言葉がストレートに伝わらない。
 中を擦られて意識が飛びそうになると、パンパンに膨れ上がったそこをギュッと掴まれて引き戻される。
「ちゃんと、感じて」
「いっ、はぁっ…」
 もう言葉は出て来ず、ひたすら喘ぐばかりだった。
「准、准」
 鷲来の切なげな声が聞こえる。
「うっ…」
 小さなうめき声と共に、最奥に熱い飛沫を大量に感じた。
「熱い…火傷しそうだ」
 息も絶え絶えに、それだけを伝えた。


「勝手なこと言ってるけどさ、社長の娘って何歳だか知ってる?17歳だぞ。淫行だよ、淫行。」
 今朝も鷲来の腕枕で目覚めた。
「僕はさ、入社式の日に一目惚れしたわけ、すっげー美人が同期にいるって。ずっと見てたら目が合ったんだ。で、照れたからこれは脈ありだと。」
 俺はただひたすら目をぱちくりするばかり。
「そん時俺、まだ鷲来のこと好きになってない。二度目の同期会の時に遅れて来て、顔に貼り付いた髪をはらったときの仕草が色っぽくて、それで気になった。だから毎回同期会だけは行ってたんだ。」
 鷲来は嬉しそうに抱き付いてきた。
「なんでだろ?僕たち少しずつ話しが食い違うんだな。違うんだ、僕と目が合って照れたから同類だと直感が働いたってこと。でも准の好きになってくれた切っ掛けが分かってよかった。」
 これには俺も盛大に照れるしかなかった。
「それでさ、どっちが引っ越す?それとも新しく部屋を借りる?」
「そっちとこっち、どっちが会社に近い?」
「准」
「なら、こっちに来いよ。なんなら今からでも。…早いほうがいい。」
「准ちゃーん」
 鷲来がまたもや抱き付いてくる。
「やっぱり可愛いよ!僕としてはこれから二回戦と思ってたけど、とりあえず引っ越してきたら今夜も明日も明後日も!」
「変態!」
 ま、同じこと考えてるけど。
 好きな人と両思いになれたのなら、ずっと一緒に居たい、そんなもんでしょ。
 俺達は早速、とりあえずの引っ越しに取り掛かった。

2020.06.30
認知して〜前編〜
 ガタッ
 夕方の校舎の見回りは苦手だ。
 1980年代、神奈川県の教育方針に高等学校100校計画というのがあった。増え続ける子供を受け入れるための建設ラッシュ。
 しかし、時は流れ少子化となった現代、100校も要らなくなった。
 教室は下層階のみ使用し、上層階は立ち入り禁止。いずれ廃校となる。
 僕たちは何処に配属されるんだろうか?
 そんなリアルな問題を抱えて、見回りをしていたら、小さな変化を聞き逃していた。
 最奥の空き教室から、手が伸びてきて、僕は空き教室内に引きずり込まれた。
「騒がないで」
 目深に被った野球帽に大きなマスクをした少年…きっと生徒…が、いた。
「こんなことして、ごめんなさい。でも、卒業する前にボクのこと、認知して欲しくて。」
 この声。
「三年A組の桜川陽色(さくらかわひいろ)だな?」
 少年は帽子とマスクを外した。
「嬉しいです。良かった、ボク、先生に認知されてたんだ。」
 言うとギュッと抱き締められた。
「お願いがあるんです」
「僕は君の授業を担当していないから、力にはなれないけど、相談くらいなら聞いて上げられる。」
「キスしてイイですか?」
「なんだ、そんなこと…ん」
 待て、待て待て待て待てっ!
 なんで僕は男子生徒にキスされているんだ?
 つーか、スゴいテクニシャンだ、脳みそ溶けそう。気持ちイイ。
 身体の力が抜ける。
「せんせ、ありがとうございました。」
「早く、帰りなさい」
 僕は腰を抜かしたらしい。暫く身動きが出来なかった。

 僕の見回りは週に一回で木曜日。
 今日は警戒しながらやって来た。
 なのに、桜川は別の教室にいて、まんまと引っ掛かった。
「先生、好きです」
「あ、ありがとう」
 ガッ
 また、キスされそうになったが、寸での所でガードした。
「なんで?」
「なんでって、キスっていうのは双方の合意が必要であって、一方的な想いですることじゃあ、ない!」
「でも、せんせはボクの名前を知っていたじゃないですか。」
「そりゃ、仕事だし…」
「え?名前覚えるのって仕事なんですか?」
「そうだよ?」
 気付いたら二人とも床に体育座りをして話し込んでいた。
「せんせは、恋人いるんですか?」
「個人情報なので教えません」
 小さく「ケチ」と呟いていたが、無視した。
「じゃあ、帰ります。せんせ、また。」
 桜川が立ち上がりかけたので、気を抜いて上を向き「また明日」と、声を掛けた隙にキスされた。
「桜川っ!」
「早く、好きになってください」
 良かった。この間みたいに舌入れられたら、腰抜かすところだった。
 しかし、あいつはなんであんなにキスが上手いんだろう、羨ましい。

2020.07.01
認知して〜後編〜
 翌週は見回りを水曜日に代わって貰った。これなら大丈夫だろうと気を抜いて見回りをしていた。
「せんせ、狡いです。」
 桜川は遂に最上階の階段上、エントランス部分に堂々と立っていた。
「今日は水曜日です。」
「だからなんだ?」
 少し、後退る。
「危ない!」
 階段を踏み外しそうになった身体を、桜川が支えてくれた。
「あ、ありがとう」
 言い終わる前に、腰砕けのキスをされた。
「んっ」
 ダメだ、力が入らない。
 ヘナヘナと頽れ落ちる。
「せんせに、ボクが忘れられないようにしてあげます、ボクがいなきゃ生きていけない身体に…」
「やめ…」
 唇を、塞がれた。

 階段の上で、スラックスとパンツを一緒に脱がされ、生徒にペニスをしゃぶられているなんて、確かに忘れられないだろう。
「あっ…ヤダ…ん」
 桜川は潤んだ瞳で見上げている。
 嫌がらせじゃないのはわかる。
 そして、僕は今、史上最高に気持ちイイ。
 初体験は中学二年、同級生だったその後途切れなく彼女はいたけど、就職して10カ月、仕事に追われていて恋人もいないし、セックスもない。AV見ながら一人で抜くのが精一杯。
 初めて、リードされた。
「せんせと、ボク、5歳しか違わないんです、恋するなというのは無理なんです。」
「でも、これじゃ、強姦…だぞ」
「出すのは口と手、どっちがいい?」
 僕の言うことなんて聞いてない。
「桃木(ももき)せんせ、背徳感なんか今は不要です、ただ、感じて。」
「んっ」
 当たり前だ、こんな、気持ちイイの、感じるなって言う方が無理だ。
「分かりました、口に出したいんですね、視線が訴えてます。」
 桜川は僕の股間に顔を埋めて再び舐め始めた。
「あっ、あっ、」
 ヤバい、声が出ちゃう。
「ふっ、ふんっ」
 喉の奥に、声を押し込める。
「あっ、出るっ」
 身体を丸めて、桜川の頭を抱える。
「ごめ…陽色の、口に…出しちゃった。」
「せんせ…静流(しずる)、ボクの、彼氏になって。」
 たった3週間で、落ちた。

 考えてみたら、僕は無意識のうちに桜川を目で追っていた。
 背が高くて、日焼けした肌。一重の瞼はスッキリとした涼しげな印象だ、決して重たそうではない。スッと伸びた鼻梁だが高くはない、薄い唇だが大きい口。顔は小さくもなく大きくもなくなので、どこにいても目に付く。
 放課後はいつでも校庭にいた、サッカー部だったから。長い脚はサッカーには向かなかったのだろう、派手な活躍もなく高校生活でのサッカー歴を終えた。
 なんで、追っていたのだろう?
 そうだ、いつも校庭から視線を感じたからだ。その視線の主は判らないままだった。

 翌週の木曜日の放課後。
 校舎の最上階、最奥の教室。
 机がガタガタと音を立てている。
「んっ、んんっ」
 桜川はまた僕のパンツを脱がした。
 僕も抵抗すれば良いのに、流されてしまう。
 桜川は二人分のペニスを握ると一緒に扱く。
 僕が声を出さないようにか、ずっと口は口で塞がれたままだ。
 どくん
 キタ。
 精液は桜川が用意していたハンドタオルに吸収された。
「静流せんせ、ボク、来週から月曜登校だけなんです。だから…」
「なら、こんな不毛な関係、終わりに…」
「ヤダっ、せんせは、ボクのこと、嫌いなんですか?すぐに終わらせようとする。」
 桜川が、僕の胸に顔を埋める。
「なら、ウチに来るか?」

「静流、可愛い。だから泣かないで。」
「イヤっ、イヤだ、ああんっ」
 こんな、こんななんて…
 家になんか連れ込まなきゃ良かった。どんどん自分の本性を暴かれていく。
 違う、僕は男なんか好きじゃない。女の子と恋をして、平凡に結婚して子を成す。それが良いに決まっている。
 なのに、どうして好きになるのは男なんだろう?どうして好きになってくれるのは女の子なんだろう?
「中、キュッと締め付けてくる、」
「ダメ、言わないで、陽色」
 陽色のキスが気持ちイイのは、気持ちが入っているからなんだ。
「静流せんせ、静流。」
 ピストン運動が延々と続けば良い。
「スゴ…気持ちイ…」
 語尾が揺れる。
 僕は男が好き、こうして挿入れられるのが好き、自覚してしまえばどうってことはない。
「陽色、イクっ」

 陽色は受験も終わっているので、暇だ。だから毎日やって来てセックスしていく。
「静流、大学、ここから通ってもいい?」
「お前さ、よく僕の名前知ってたな。」
「え?だって、教育実習で言ったじゃないですか、桃木静流ですって。せんせとボク、どっちも春の花が咲くなって思ったんですよね。」
「教育実習って、2年前じゃん。」
「忘れられなかった。でも決定的だったのは、赴任されてから廊下ですれ違った時、名前の通り良い匂いがしたんです、それからはもう、虜です。毎日、学校に来るの、楽しかった。」
 良かった。
 ただの性の捌け口かと思った。
 女の子を襲ったわけじゃないから、いいかとも思った。
「陽色、僕は嘘を言いました。」
「うん」
「君が、好きだから、名前を覚えていた。」
「だから、最初に名前を聞いたんです。賭けでした。」
「なんだ、最初から負けていたのか。」
 ふふっと、陽色が笑った。

 卒業式が終わってから。
 最上階の教室で机がギシギシと鳴っていた。
「陽色、ひ…いろっ」
 冠婚葬祭用のスーツを着た僕は、スラックスを脱ぎ捨て、机に跨がり、脚を開いていた。
「せんせ…い、好きです。」
 ガリッと、首の付け根を?まれた。
「静流せんせは、僕のお手つき、だからね。」
 机の音がガタガタに変わる。
「あんっ、奥、気持ちい…」
「最後の、性教育的指導、お願いします!」
「うわっ…んんっ」
 ガタンガタン鳴っていた机が静かになった。
「よく出来ました。」
 僕は陽色を抱き締めた。
 外したコンドームには、精液がたっぷり入っていて、二人して「エロ」と、笑った。
 最後に、陽色の制服姿の最後に、ここでしたいと言ったのは僕だ。
 校舎の見回りをしている際、何度か机のガタガタ鳴る音を聞いた。
 他のカップルがいたようだ。
 僕は念の為強姦ではないと確認をしたのち、気付かぬ振りをした。
 これからもここでこうして、抱き合うカップルがいるかもしれない。
「これからはここにも掃除当番を入れないとな。」
「そんなことされたら潜り込めない」
「そっか」
 僕は、スラックスを履いた。
「帰ろうか?」
「はい。」

 部屋のベッドを買い換えた。

2020.07.02
lリフォーム
 大祐は、同僚の設計士、当真にリフォームの相談をした。
「リフォーム会社でリフォームを依頼するって珍しいな。」
 その問いに
「祖父母の家がほったらかしになっているから、住もうかなと思ってさ。埼玉にあって便利なんだけど、両親が嫌がるんだよ。だから先日俺が相続した。」
と、返したので、当真は苦笑した。
「とりあえず現地を見に行きたいんだけど。」
「やってくれるか?」
「三途の川も金次第」
「死ぬのかよ」
「かもな」
 当真が不敵に笑った。

「1階が居間と台所と寝室、2階が昔は子供部屋だったけど客間にしていた。俺達が夏休みに遊びに来ると2階に泊まった。」
「全部屋和室だな。」
「洋間に出来るか?」
「なら、1階は一間にしてリビングダイニングキッチンにして、2階は一間でベットルームにするか?大きめのクローゼット付けて。」
「いいな、それでいこう。」

 大祐は社長と経理に相談して、社内割引を適用して貰い、3割引でリフォームが完成した。
 着手から四ヶ月、いよいよ引っ越しだ。

「ダイニングテーブルは祖母の嫁入り道具だった桐の箪笥をリメイク、戸棚は造り付け、あと必要なのはベッドだな。」
 大祐は両手を腰に当て、思案する。
「あまり大きくなくて良いぞ」
 答えたのは当真。
「俺の住所も移動した方がいいか?」
「当たり前だ」
 大祐は当真を抱き寄せる。
「やっと、気兼ねなくイチャつける。」
 両手で尻を揉む。
「ベッドが先だろ?」
「食事が先だ」
「俺はお前の食いもんかよ」
 当真は大祐に苦笑ばかりさせられている。
「大祐」
「ん?」
「リビングのソファは大きい方がいいな」
「だな」

2020.07.04
深夜残業 〜前編〜
「マジかよー、終電出たよー、徹夜かなぁ」
 思えば、残業が決まってからずっと、俺は文句ばっかり言い続けていた。対称的に美久羅(みくら)は黙々と作業している。
「宮宅(みやけ)ってスゲーよな、口と手が同時に動くんだ。あんだけ文句言いながらもう終わるじゃないか。」
 美久羅が俺のパソコン画面を見て慌てる。
「ソフトを使い慣れてるってだけだよ。ま、夜に手と口を使うことが多いしな。」
 時間が時間なもんで、舌で舐めるジェスチャーをして、つい下ネタになった。
「終電がどうの言ってたけど、ウチ来る?ここからタクシーで10分くらいだから。」
「うそ、そんなに近いの?あー、俺も会社の近くに住めば良かったなー。」
 美久羅の家に泊めて貰うことが決まったので、サクサクと作業を終え、美久羅の作業を手伝って徹夜は回避できた。パソコンの電源を落とし、帰り支度を始めたときだった。
「美久羅?」
 突然腕を取られ、ミーティングデスクに連れて来られると、そのまま押し倒された。
「宮宅が悪い、下ネタなんか振るから。」
 言って手を誘導されたのは、股間。
「な!」
 完起ち。
「前から、狙ってたんだよ、宮宅と残業出来ないかなぁって。」
 反論する間もなく、キスで口を塞がれた。
「得意の口と手、使ってくれる?」
 なに?頂いて、いいのか?
「安心しろ、俺、巧いから。」
 くるりと身体を反転させ、美久羅を机に縫い止める。
 チュッと、音を立てて唇から首筋へと降りていく。
「みや…」
「ん?」
 首を左右に振る。
「良いんだよね?」
 コクコクと頷く。
 ネクタイを外し、シャツの前を開ける。乳首に吸い付くと声を噛み殺す音がした。
「誰も居ないんだ、声、出せよ。」
 それでもフルフルと否定する。
「なら、これ、噛んどけ。」
 口にハンカチを突っ込む。
 外したネクタイで手を拘束する。
 コイツは被虐的なセックスを好むようだ。なので遠慮なく乳首に噛み付いた。
「んっ」
 喉の奥から音がする。
「善いの?」
 コクコク頷く。
 囓っては優しく舐めてを繰り返す。
「ここも、完起ち」
 真っ赤に熟れている。
「今度は…」
 歯でスラックスのファスナーを開ける。
 ジッジッとゆっくり、ゆっくり焦らしながら。
 全部下ろしボタンを外す。
 存在感がある肉棒が、解き放たれるのを待っている。
「期待、してる?」
 目に涙を浮かべながら、頷く。
 下着の端を歯で咥えてズリ下げ始める。
 俺の力だけでは脱がすことは出来ない、美久羅が腰を浮かさなければ。
 上目遣いで訴える。
 羞恥の色を浮かべ、腰を上げた。
 ズルッ
 下着が下ろされ、
ブルンっ
と、勢いよく飛び出した。
「あーあ、カウパー漏らしすぎ。」
 目を見ると逸らされた。可愛い。
 先っぽをちろっと舐める。腰がビクンと跳ねた。
「気持ちイイ?」
 コクコク
 パクッと咥えて舌を使いながら首を上下に動かす。じゅぶじゅぶと音がする。
「んんーーっ」
 美久羅の善がり声。
 チラッと顔を盗み見ると、口に突っ込んだハンカチがふーふーと音を立てている。
 相当興奮している。
 早く、突っ込みたい。
 しゃぶるピッチを上げる。
 途端に美久羅の肉棒が弾けた。
 よし、このザーメンを潤滑剤にして、突っ込むぞ。
 ソワソワワクワクしながら、立ち上がると、美久羅もいつの間にか、ネクタイの拘束を外し、立ち上がった。
「続きはウチでしよう」
 おいっ!生殺しかよ!

2020.07.06
深夜残業 〜後編〜
「はい」
 美久羅は当然のようにバスタオルとバスローブを手渡した。
「シャワー、使ってきて」
なんか、調子が狂う。
「お、おう。じゃあ、借りる」
 バスルームでシャワーを浴びながら、揶揄われているのかと少し不安になる。
 でも、仕掛けてきたのは美久羅で。
 美味しく頂いて良いってことで。
 あー、もうグダグダ考えない!やることはやる!
 勢い込んでバスルームを出、身体を拭くと借りたバスローブを羽織る。
「美久羅、」
「あ、出た?簡単なもの作ったから良かったら食べて。」
 そう言い置いて交代にバスルームへ入っていった。
 ダイニングテーブルには、焼きおにぎりと味噌汁が置いてあった。
 この短時間で器用だなと思いながらも、有り難く頂いた。
「美味っ」
 焼きおにぎりは塗ってある味噌が美味だった。市販品ではなく確実に手製だ。
 味噌汁もインスタントではなく、ちゃんと出汁からとってある。
 自分も料理は好きだけど、こんなに一からはやらない。
 あっという間に完食してしまい、両手を合わせて「ごちそうさまでした」と唱えていると、タイミング悪く美久羅がバスルームから出て来た。
「お粗末様でした。口に合ったか?」
「スゲー美味かった。美久羅が作ったのか?ちゃんと出汁とってて、器用だな。」
 美久羅が嬉しそうに笑った。
「オフィス街で昼にサラリーマン相手に定食屋をやるのが夢なんだ。定年後でいいんだけどな。」
 美久羅がこんな可愛い男とは知らなかった。
「宮宅、」
「ん?」
 ダイミングテーブルに片手を付き、もう一方の手で顎を掬われた。
「続き、しよ?」
 心臓がドキリと鳴る。
 美久羅は顔を近付けてくると、キスをしてきた。
 その頭をグッと両手で挟むと、深く口付けをした。さっきから美久羅が仕掛けてくるキスに、何となく違和感を覚える。正体が分からぬまま、行為に没頭していった。
 舌を絡め合い、時間を掛けて口付ける。
「寝室、行くぞ」
 ほんの少し唇を離し、そこに告げ、再び美久羅の唇を貪る。
 ガクッ
と、美久羅は膝の力を失ったように頽れた。
「大丈夫か?」
 慌てて支えると、コクコクと頷いた。
 先程の違和感の正体に、辿り着く。
 コイツ、俺のことが好きなんだ。
 そうとなれば扱いが変わる。
 膝裏に腕を入れると、美久羅をお姫様抱っこした。
「み、宮宅?」
「お姫様、今宵は私のお相手をして頂けますか?」
 そう、声を掛けると、「お、お姫様って…」と、絶句するものの、満更でもなさそうである。
 真っ直ぐと寝室へ向かった。
 ベッドに美久羅の身体を落とすと、美久羅が身に付けているバスローブの紐を解いた。
「やっ」
「ダメなのか?」
「イヤ、ダメじゃ、ない」
「して、いいんだよな?セックス。」
 美久羅が顔を真っ赤に染めた。
「ごめ…初めてなんだ。」
 え?
 初体験?
 初体験でこの誘い方?
「そっか…なら上手に出来ました。」
 もう一度、キスをした。
 そのままゆっくりと下へ降りてゆく。
「あ、そこ、や、」
「美久羅」
 潤んだ瞳が俺を見据える。
「やじゃなくて、イイだ。覚えろ。」
「ん」
 コクコクと頷く。この仕草は分からないなりの彼の表現方法だったんだ。そうと分かれば可愛く見える。
「それと幸輝(こうき)、」
 美久羅の瞳が大きく開く。
「お前の名前、俺が知らないと思った?で、俺の名前は知ってるよね?」
「公生(きみお)?」
「よく出来ました。」
 会社で育てた乳首に吸い付く。
「ああん」
「良い声だ、そんな風に鳴いたらいい。」
「みや…公生、全部教えて?」
「こんなん、ルールなんてないよ。気持ち良かったら良いって言えば良いし、されて嫌だったら嫌と言えば良い。それだけ。」
 言いながらも、乳首は弄り続けた。
「や…じゃない」
「やじゃないんだな、了解。」
 なんか…面白い。
 しつこいくらい乳首を舐めたり囓ったりを続けてみた。
「きみ…お、乳首、ヤダ、取れちゃう」
「気持ち良くない?」
「気持ち…イイ…けど、痛い」
 感度が良くなりすぎたようだ。
「じゃあ、こっちはどうかな?」
 両脚をグッと開くと、内股を舐めあげる。
「ひっ…あっ…んんっ」
 時々玉を口に含んでやる。
「うぐっ」
 脚の付け根に吸い付く。
「ヤダ、もう…して」
 して?
「まだ、ここでは触れても居ないのにもう入れて欲しいの?」
 首を左右にフルフル振りながら、
「違っ、おちんちん、触って欲しい」
 ふと見るとカウパー線液が蜜口から溢れていた。
 初めてなのに少し虐めすぎたかなと、早速溢れ出たモノを舐め取った。
「ああん、イイっ」
 ちゃんと口に出来るようになったなと確認しながら、砲身を口にすっぽりと含んだ。
 舌と唇を使って全体を刺激してやるともう喘ぎ声が止まらなくなった。
「いやっ、イイっ、気持ちイイっ、スゴっ、ああん…」
 舌で裏筋を舐めあげたとき、砲身が爆発した。
「あっ、あっ…ごめ、気持ちイイ…」
 さっきの野望?を叶えるときが来た。
 毛布を腰の下に突っ込んで、後孔を露わにする。
 そこに舌で今出された精液を塗り付けた。
「はあっ、や、ヘンになる、イイ、善すぎる」
 舐めただけでこの調子だ。
 舌と指で襞と内壁を擦る。
「聞こえる?幸輝の孔からヤラシイ音がしてる」
 態とぐちゅぐちゅ音を立てる。
「んっ、んんっ」
 もう、こっちが限界だ。
 自分の肉棒にコンドームを被せると美久羅の後孔の入り口に照準を合わせた。
「挿入いるよ?」
「ん」
 右腕で口を塞いでいる。
「ん、んん、んーっ」
 必死で耐えている。
「辛い?辛かったら止め…」
「やめ…んな」
 必死な目が俺を見る。
 そんなに、俺のが欲しいのか?
 ちょっと感動している。
 ゆっくり、ゆっくり侵入を進める。
「息を大きく吸って、で、吐いて」
 それでも緊張しているようだ。
 左手でペニスを、右手で乳首を扱く。
「ひゃっあっ」
 悲鳴のような声が上がった。
 お陰で力は抜けたので、一気に貫いた。
「挿入いった。」
 美久羅が俺を見る目の色が変わった。
「あっ、あっ、あっ、」
 リズミカルに声が漏れる。
 一定のリズムで抽挿すれば、漏れる声もリズムに合わせる。
 少し角度を変え、グリグリ擦るように奥の方に進入すると、明らかに声が変わった。
「あぅ、ダメ、そこ、イイ、あんっ、あんっ、」
 やっと見つけた、美久羅の善いところ。意外と深い場所にあった。
 集中的にそこばかり攻めると、美久羅は良い声で鳴いた。
「あーっ、ダメ、ダメ、そこ、ヘンになる、そんな、虐めないでぇ、ああん、ああん、なに、なんか、くる、くるぅ、あーーーっ」
 内壁がぎゅーっと収縮し、俺のを食い締めたお陰で、美久羅が達したのとほぼ同じに俺もイッた。

「公生…って呼んでもいいか?」
「二人っきりの時は。会社で呼ばれたら興奮しそう。」
 裸のまま、抱き合った。
「かなり周到に計画してたんだな、今夜のこと。」
「なんで?どうしてバレた?」
「いいのか?言っても。まず、残業。あの程度なら就業時間中に終わらせられる。わざわざ残業にしたのには、俺と二人になりたかった。会社でことに及んだのは、何か、確信があった、違う?最後はバスローブ。俺のは新品だった。」
 美久羅が俺の顔を見上げた。
「確信なんて一ミリもなかった。公生の優しさだけを頼りにしただけ。あ、でも公生がゲイって言うのは知ってた。」
 俺は美久羅…幸輝を抱き寄せ、口付けた。最初は浅く、徐々に深く…。
「今夜も、来て良い?」
「帰るの?」
「まだ、今日は仕事がある。」
「あ」
 金曜なのを忘れていたようだ。
「会社で、ミーティングデスク使いづらい。」
「それ、態と。…自分の首も絞めたけどさ。」
 つかの間の時間、二人で眠りについた。


2020.07.07
××したくない 〜前編〜
 「同性愛」と、キーボードを叩く。
 俺の恋愛対象は男だ。所謂「同性愛者」である。
「あった」
 同性愛者のブログを見つけた。
「恋人が出来ると、性的欲求が高まるが、必ずしも挿入を伴うセックスをしたいとは限らない。」
 これだ。
 ずっと、気になっていた。
 ゲイのセックスはアナルを使わないとダメなのかって。
 本来の機能とは逸脱しているからだ。
 織田信長はどうやって小姓を愛したのか。僧侶や神父や尼はどうやって性処理したのか。ずっと、模索していた。
 で、誰にも知られずに調べる方法は、インターネット。
 どうして今まで気付かなかったのか驚くほど自分が馬鹿だと知った。

男性同士のセックスについて
互いに手こきする

 おおっ!その手があったか!
 自分じゃない手が触れる。正にパラダイス!
 次。
ザーメンをかける
 えっ!それって気持ちイイの?
 ん?なになに?本来は隠すことだけど、それを掛けることとかけられることは背徳感がある。
 成る程、それで気持ち良くなるんだ。へー。
 次は?
排泄器官を使ってペニスを挿入(アナルセックス)
 あ。やっぱり。
 しかし?
 挿入することで排泄物が着いたりしたら萎えるし、細菌が問題なので注意が必要。
 確かに。
 で次は?
指をアナルに入れる
 これも先程と同じ注意が必要だが、普通他人には触れられない場所なので興奮する。
 そりゃそうだ。
 で、ゲイの間で一番人気なのが?
兜合わせ
 なにそれ?
 あ。
 性器を擦り合わせる。成る程。
 それが一番人気なんだ。
 ちょっと、安心した。
 ん?
 不動の体位って、まだあんのかよ。
69
 はあーっ。なんか、わかるー。

「んんっ、はあっ」
「あん、あん、」
 取り敢えず、互いの手で扱いている。
「気持ち、イイ」
「ん、気持ちイイ」
 先端の蜜を塗り付けたりしながら、熱く滾ったモノを扱く。
「マサキの手、気持ちイイ」
「ユウキの手も気持ちイイよ」
「あっ、あんっ」
「あっ、あんっ」
 俺の恋愛対象は双子の兄弟だ。
 同じ部屋で寝起きしていて、オナニーすら出来ない。
 なので思い切って打ち明けてみた。
「ユウキ、性処理ってどうしてる?」
「え?」
「俺、自分ではイケなくてさ。」
「じゃあ、」
 ユウキが食い気味に食い付いてきた。
「マサキ、俺のもして!」
で、先程の場面だ。
 もう、気持ち良くないわけがない。
「あんっ」
「あんっ」
 双子だけに喘ぎも揃う。
 そして、
「ユウキ、出るぅっ」
「マサキっ、僕もイクっ」
と、同時にイッた。
 勢い余りお互い顔に引っ掛けてしまった。
 いきなり2ポイントだ。
 ユウキははぁはぁと肩で息をしている。
「マサキ、すげー気持ち良かった!またしてよ!」
 上々の守備だ。  

 次は兜合わせだな、よし。
「マサキ、今日もしよ?」
 ユウキは積極的だ。
「今日はね、」
 パンツを脱ぐと、既に上を向いたモノが現れる。
「マサキ、やる気満々じゃないか。」
「そう言うユウキだって、ギンギンじゃん。」
 二人とも勃起していた。
 ユウキの足を跨いで、二つのペニスを一緒に握り込む。
「わっ、あちっ。マサキの、熱い。」
「ユウキのだって熱いよ?」
 今夜も先走りを塗り付けてヌルヌルにしてから、腰を使いながら互いに擦り着ける。
「んんっ、昨日とは違う気持ち良さ。」
 ユウキも腰を振り始めた。
 ぐちゅぐちゅと音がし始めた。
「マサ…キ、ちゅうしよ?」
 僕らは小さい子供の頃、よくキスをした。
 その感覚なんだろう、ユウキはよく、俺にキスを求める。
 砲身を二人で握り、ちゅうちゅうとキスをした。
「んっ」
「あうっ」
 二人の精が弾けた。
 また、顔まで飛んできた。
 ユウキは、それをペロリと舌で舐め取った。

「……」

 二日続けて上手く行ったので、もう今日は楽勝だろうとタカを括っていたら、「今日は眠いからいいや」と、言われた。
 性欲に勝る物があったか…と、少し意外だったが、仕方ない。
 しかし。
 翌日も翌々日も断られた。
 流石に1週間断られたときには拒絶されていると悟った。

2020.07.11
××したくない 〜中編〜
 ユウキにフラれて一ヶ月。
 誘う勇気が皆無となっていた。
 それでも、次の機会がいつかやって来るかもしれないと、色々調べてはいた。

「……」

 眠れず、ベッドの中で寝返りばかり打っていた。
「マサキ…」
 ふと、ユウキに名を呼ばれた。
「寝られないの?」
 自分とは反対側の壁際のベッドで寝ていたユウキが、声を掛けてきた。
「うん」
「マサキ、勉強部屋のパソコンで調べてたこと、ちゃんと履歴を消しておけよ。」
 我が家は双子のために寝室と勉強部屋を分けてくれていた。…勉強部屋といっても三畳間に机とデスクトップパソコン、本棚があるだけだ。
「エロい画像がいっぱい出てきた」
 ユウキがマサキのベッドに近づく。
「俺とあんな事したの、練習だったんだろ?」
 ギシッと、ベッドが軋む。
「違っ…んんっ」
 まさか。ユウキが、キスをしてきた。
 拒絶してたんじゃないの?
 重なる唇を舌がこじ開け、口腔内に侵入し、暴れ出した。
「ん、んんっ」
 俺はただただ、動揺するばかりだ。
「もっとエロいこと、しよ?」
 もっとエロいこと?
 ユウキがパジャマとパンツを脱ぎ捨てた。
「ほら、マサキも裸になってよ」
「ちょっ!」
 パジャマのズボンとパンツを一気に下ろされた。
「マサキが調べてた、不動の体位してみたい」
「ユウキ?」
 ユウキが俺の顔を跨ぐ。
 目の前に血管が浮き出たユウキのペニスがある。
 俺はゴクリと唾を飲み下した。
「!!」
 ユウキが、俺のペニスを咥えたのだ。
 気持ちイイ、気持ちイイ、気持ちイイ!
「んっ、んっ、んっ、」
「喘いでないで俺のもしてよ」
 グイグイと口元に押し付けてくる。
 こんなに気持ちイイの、ユウキにも味わわせてあげたいと思い、口の中に導いた。
「んっ」
 ユウキの喉から喘ぎが漏れる。
 びちゃびちゃと二本のペニスをしゃぶる音と、喘ぎ声が寝室内に響く。
 唇を窄めて括れを舌でなぞるーと、ネットに書いてあったことを思い出し、辿々しいながらもやってみた。
「やあっ、マサキ、ずるっ…い」
 ユウキのペニスが膨らみ、一回り大きくなり…爆発した。
 俺は出されたモノを飲み下した。
「あっ、あっ」
 先にイクとは思っていなかったらしく、肩で息をしている。
「マサキ」
 クポックポッと、俺のペニスをイヤラシい音を立ててしゃぶる。
「ああん、ユウキ、気持ちイイよ」
 涙声で伝える。
 すると、ユウキは俺のアナルに指を入れてきた。
 たった一本の指だが、存在感は半端なかった。
 ユウキの指が俺の中にあるという事実が、恋情をそそる。
 愛しくて愛しくて、俺はユウキのペニスの先端にキスをし、小さな孔を穿るように舌先で舐めた。ユウキのペニスがピクピクと反応するのが嬉しい。
 ユウキにとって、俺との行為は練習なんだと言われたとき、絶望感に囚われた。
 ユウキは、俺がしたことをそんな風に考えたんだ。
 なら、俺の気持ちは俺だけの物として封印しよう。
 今は、今だけは俺の身体で気持ち良くなって欲しい。
「マサキ、ここ、気持ちイイの?」
 アナルの奥深くに指を入れられ、内壁を擦られる。
「う…ん、気持ちイイ」
「少し指を増やしてみるよ?」
 二本、三本と指が増えていく度に快感が増す。
 なんか、気持ちイイというかむず痒い。
 もっともっと奥を擦って欲しい。
ズルリ
 ユウキの指が抜かれた。
「一番、注意が必要な行為。」
 一番、注意が必要な行為?
 ユウキに再び口付けられた。
「挿入れていい?」
 いれる?
 何を?
 どこに?
「痛っ」
 三度、口を塞がれる。
「んん〜っ」
 アナルに挿入いってる!
 俺はユウキの胸をぎゅーぎゅー押し返した。
「嫌だ、アナルセックスしたくない」
「なんで?」
「だって、俺ら兄弟だから」
「兄弟だから駄目なの?」
 ユウキは俺の言うことなんか聞いていない、勝手に腰を振っている。
「嫌だ、抜いて!したくない!」
「ムリ。マサキの孔、超絶気持ちイイ」
「イヤ…んっ…あんっ」
 気持ちイイに決まってる。
 クセになるほど気持ちイイに決まってる。
「マサキ、誰に抱かれようとしてたの?」
 …抱かれる?
いやいや、俺は挿入はなしでって。
「マサキ、好きだよ」
 え?
「誰にも渡したくない。俺で練習じゃなくて本番にして。」
 ユウキの言葉が嬉しくて、俺は為すがまま為れるがまま、最後までやられた。

「練習じゃない?俺としたかった?」
「うん。けど、挿入れなくても気持ち良くなって欲しかったから、色々調べてた。」
 ユウキが満面の笑みで抱き締めてくれた。
「だから判るように履歴を残してたんだ。」
 いや、単純に見落としてた。
「マサキ、マサキも俺のこと好き?」
「うん、ユウキが好き」
「じゃあ、これから俺達、恋人だ。」
 ちゅっと、リップ音付きでキスが落とされる。
「とりあえず、毎晩出来るな」
「おま、人の話聞いてたか?」
「うん。マサキとアナルセックスを毎晩するって。」
「俺はしない!」
「俺はしたい!」
 うー。
 うー。
「週1なら…」
「やった!マサキ大好き!」

2020.07.12
××したくない 〜後編〜
「はっ…んっ、ああんっ」
 背後から串刺しにされ、乳首を弄られ、なのにペニスはリングを嵌められて射精を止められている。
 ユウキがセックスについてどんどん詳しくなりすぎ、毎晩嵌められている。
「ユウ…キ、苦し…」
「だって、マサキ挿入嫌がるからさ、スゴく気持ちいいってこと教えてあげたくて。」
 フルフルと頭を振る。
「気持ち、イイ…のはわかってる…んん…射精、させて」
「ダーメ、マサキは俺のオンナにするんだ。」
「やーぁ、オンナ、なりたくない」
「泣かないで」
 乳首に爪を立てられ、悲鳴をあげる。
「そんな、虐めないでぇ」
「マサキ、可愛い」
 ズクズクと後孔を犯されると、中の奥が疼き、ポイントを突かれると頭が真っ白になる。
「ユウキ、イキたい、イカせてぇ」
「俺のオンナになる?」
「なる、なるからぁ」
「毎晩、嵌めてもいい?」
「いい、いいから」
「中出しして良い?」
「いっぱい出してぇ」
 ズルリとユウキが引き抜かれた。
 仰向けにされると、大きく脚を開かされ正面から貫かれた。
「マサキの善いところは、こっちからじゃないと届かないんだ」
 最奥まで突き入れられると引き抜かれる。少し角度を変え再び突き入れられる。
「ひっ」
 何とも言えない感覚に、息を飲んだ。
 ユウキの目の色が変わる。
 同じ場所を何度も突かれる。
「ひいっ…ひぃぃっ…」
 気持ちイイが止まらない。
 中の内側の側壁が、ユウキが動くことでカリカリと擦られてそれも気持ちイイに拍車が掛かる。
 もう、頭がヘンになる。
「ユウ…!!」
 え?何?これ?
 内股がブルブルと震え、爪先が痺れる。
「待て、マサキ、ちぎれるっ」
 後孔も肉壁も収縮する。
 腹筋が縮む。
「マサキ、イッた?中イキした?」
 中イキ?そっか、精液出してない。
「あ…」
 なんか、堕落した気分。嬉しくない。
「マサキ?なん、で?なんで泣く?」
 必死で堪えた。のに。
「うぇっ、えっ、」
 嗚咽が漏れた。そうなると感情は止めどなく溢れる。
「嫌だ、ユウキのオンナになんかなりたくない、だから、アナルセックスしたくなかったんだ。」
 えんえんと泣きながら訴える。
「マサキ?」
 ペニスにリングを嵌められ、尻にペニス突っ込まれて、あんあん言いながらメスイキして。
「俺は…オトコなのに。」
 分かってた。ユウキに気持ちを伝えたら、ユウキが主導権を握ること。
「俺も、ユウキに挿入れたい。」
「いいよ」
 え?暴君のユウキが?
 「マサキになら、オンナにされてもいい」


「うっ…あっ」
 舐めて解して指を出し入れし、時間を掛けてユウキの後孔を拡張した。
「ユウキ、挿入れたい」
 ガクガクと首を縦に振る。
 性急に突き進むとユウキが仰け反る。それでも最奥まで到達すると唇を?みながら必死で堪えた。
「辛い?」
「ちょっと。でもへーき。マサキだから。動いていいよ。」
 俺様なユウキだけど好きなんだ。
 ズルリと引き抜くと肉壺の入り口が捲れて、ピンク色の肉が覗く。グッと突き入れるとグチュと音がして俺の肉棒を迎え入れてくれる。
 繰り返し繰り返し、出したり入れたりしていると、ユウキの喘ぎ声が艶めいてきた。
「ああんっ…ううんっ…」
 砲身がびったりと直腸に包まれて気持ちイイ。もう、爆発寸前だ。
 その時、
「あんっ、イクぅ」
 ほぼ同時にイッた。


「ユウキ、ごめんな。」
「マサキ、お前の気持ちはよく、わかった。」
 こんなに気持ちイイこと、確かに毎日したくなる気持ちはわかる。
「でも、俺はユウキが好きなんだ。自分勝手で我が儘で直ぐに怒るし部屋の掃除はしないけど、そんなユウキが好き。」
「うん、俺も。ハッキリ意見は言わないし、根暗だし、口煩いけど、気持ちがダダ漏れなマサキが好き。」
 なんだか悪口のようだけど、ま、いいか。
「でも挿入れるのは偶ににしよう?毎日だと疲れちゃって日々の生活が疎かになる。」
 ユウキが唇を尖らせたけど、不意に、
「触るだけなら、いい?俺は毎日マサキに触りたい。」
と、折衷案を出してきた。
「うん、俺もユウキに触れたい。」

「ユウキ、朝だよ?」
 隣で眠るユウキに、キスをして起こす。
「ん…」
 ユウキが手を伸ばし、俺を抱き寄せる。
「おはよ、マサキ」
 キスが深くなる。
 夜は扱くか咥える。その時に思い切り互いの身体に触れる。
 それでも身体中が火照る。
 その火照りを鎮めるために抱き合う。
 大抵そのまま眠ってしまう。
 身体を繋ぐのは、ユウキがどうしても我慢できない夜。
「なあ、マサキ。高校卒業したら、どうする?」
「俺は父さんの仕事を継ぎたいから、調理師免許を取ろうと思う。」
「父さんの仕事って、居酒屋だよ?夜が短くなる。」
 ユウキの不服が爆発する。
「でも15店舗も経営していたら、誰かに譲るのはもったいない」
「じゃあ、俺も一緒に働く。一緒なら終わる時間も同じだろ?」
「そうしたら一店舗任せてもらえるか交渉してみよう」
 我ながらナイスアイデアと思った。
「よし、父さんに掛け合おう…ずっと、一緒に居たいって。」

2020.07.13
絶対に秘密
 絶対に他人に知られたらいけない。例え家族でさえ。それがバイトの条件だ。
 なのに。

「ひっ…んっ、あんっ」
 その秘密を知られたのは当然のことなのだけれども、まさか脅されるとは思わなかった。
 しかも、漏らさないから抱かせろと言うのだ。
 仕事の後、毎回これだ。
「もう、ヤダっ!こんな仕事が終わる度に…」
「なら、しゃべっても良いんだな?人気ご当地キャラに元アイドルの田所祐太が入ってるって。」
「それは…」

 勢いでグループを脱退して事務所を辞めた。
 もっと自分には人気があると思っていたのに、売り込みに行っても全く相手にされない。
 仕方なく、顔がバレないこの仕事をやっている。
 ご当地キャラのイベントでは、『中の人』の控え室が同じだったりする。
 コイツがいるときは、着ぐるみを脱がないようにしていたのだけれども、コイツのステージ中に何故か戻ってきたのだ。
「やっと、顔を出したな」
 そして今に至る。

「やっ…も、出るっ、イクっ…」
 嫌なのに、毎回イカされる。
「祐太、気持ちイイよ、祐太」
 コイツ…サトウケンシロウは俺の名を呼びながら中に出す。
 最奥の飛沫を感じ、俺も達する。
 二人ともはぁはぁと息も絶え絶えになりながら、結合を解く。
「なん…で、こんなこと…する?」
 俺の横に転がって、視線だけこちらに向ける。
 呼吸が整った頃、「田所祐太のファンだった。」と、小さく呟いた。

 俺が突然グループを去り芸能界から引退(これはケンシロウの勘違い)し、ご当地キャラの中の人になっていたからムカついたらしい。
 そう言われて、自分の行動が身勝手だったと気付き、メンバーに連絡を取り、事務所にも頭を下げ再合流をした。
 これは、ケンシロウの為じゃない、俺のファンの為だ。

 中の人の契約が終わり、現場復帰した。
 中の人の経験が活かされ、演技力も評価された。
 でも、何か空しい。

 ご当地キャラのイベントに出掛けた。
 ケンシロウのご当地キャラを見付けると、「いつもの場所で待ってる」と伝えた。

 ホテルの部屋で12時迄待った。
 待ちくたびれて寝てしまった。

 深夜、部屋のインターホンが鳴った。
 俺は慌ててドアを開けた。
「なんで、キャラに伝えた?」
 ケンシロウが、息せき切ってやって来た。
「何でって、お前、中の人だろ?」
「俺は、アテンドだ。」
 アテンドとは、しゃべれないキャラに代わって話をする。
「そうだったのか」
 だから、ステージ中に控え室に戻ってきたのか。
「皆に頭を下げて、戻った。」
「そうか。」
「…して。」
「もう、脅す理由がないが?」
「過去に中の人だったって。」
「そんなこと、脅迫のネタにはならない。」
 そう言ったのに、抱き締められた。
「俺なしでは、要られなくなったか?」
「うん、だから抱いて。」

2020.07.14
片想い
【知る】
 人を好きになる切っ掛けなんて、十人十色。


 通学電車で、毎朝同じ場所に乗っている、自分と同じ制服の人…学生服なので学校が同じとは限らない…顔は見たことがない。なぜならいつも後ろ姿しか見えていないから。
 グリーンの肩掛けバッグは、他の人が使っていないので間違えようがない。
 ずっと開かないドアに向かって立っている。
 外の風景を見ているのか、停車駅の反対側のホームを見ているのかはわからない。
 終点で、初めてドアが開き、そのまま真っ直ぐ出て行く。
 一度、真後ろに立ったけれど、振り返らないので顔は見えなかった。

……

 ドアに映る男(ひと)を見ていた。
 最初に視線を感じて、ドアに映る男に気付いた。
 毎日、飽きもせず見ていた。
 ある日、真後ろに立たれて焦った。
 心臓がヘンなリズムを刻んだので、病気かと思った。
 意識しだしたら、振り返れなくなった。
 その男は、バッグにスヌーピーのマスコットが付いていた。

……

 一年して、進級した。
 クラス替えがあり、新しい教室へ向かった。
 そこには、グリーンの肩掛けバッグと、スヌーピーのマスコットが付いたバッグが、あった。

 片思いから変化の時が迫っていた。

2020.07.18
【会う】
 教室に入って、ドキドキした。

 二年に進級した。
 あの、グリーンの肩掛けバッグが、教室にあった。
 同じ学校で同じ学年だったんだ。
 自分より前の席に座って、前を見ていた。
 後ろを振り返って欲しいと、念じた。
 しかし、振り返らない。
 担任がやって来た。
 出席を取る。
「緒河佐(おがわたすく)」
「はい」
 名前を、知った。
 声を、聞いた。
 この一年の思いを、一気に叶えた。
「貴船潜(きふねくぐる)…貴船?」
「あ、は・はい!」
「何ボーッとしてる?」
「すみません」
 教室に張り詰めていた、緊張感が一気に解けた。

……

 スヌーピーのマスコットが付いたバッグが、教室にあった。
 周囲を見渡すと、あの男が、いた。
 席に着くと、また視線を感じた。
 担任が出席を取る。
 貴船潜…それがあの男の、名前。
 キーンと、耳鳴りがして他は聞こえなかった。

……

 佐が、振り向いた。

2020.07.19
【付く】
 思いを寄せると、神様は一度だけチャンスをくれる。
 それをどうやって掴むかが、運命の分かれ道。

 緒河佐。
 緒河、佐。
 二度、心の中で呼んでみた。
 振り向かないかなと、心の中で呟いてみた。
 お陰で担任の声を聞き逃し、クラス中に笑われた。
 緒河佐が振り向いた。
 目が、合った。
 思った通りの、浅黒い肌に黒目がちの大きな瞳に大きな口。顔の中央にドンと存在する鼻。少し高い頬骨。
 男らしい背中に合った顔だった。

……

 貴船潜。彼らしい名だと、何故かそう思った。
 再び名を呼ばれた。
 振り返ると、目が合った。
 どうして彼はいつも自分を見ているのだろうか?
 この胸はどうしてドキドキするのか?
 卵形の輪郭に尖った顎。少し厚めの唇にアーモンド型の目。
 鼻筋の通った美麗な男の顔に、憧れを抱いていた。

「緒河くん」
 貴船潜の声が、自分の名を呼んだ。
 振り返ると、そこに毎朝ドア越しに見ていた男の顔があった。
「なに?貴船くん」
「あ、名前覚えられちゃったね。実は…」
 どうして自分を見ていたのか、全て教えてくれた。
 また、心臓がヘンなリズムを刻んだ。
「友達に、なりたい」
 貴船潜が、言った。
「あのさ、」
 毎朝見ていたことを告げた。
「友達じゃなくて…」
 耳に直接「付き合いたい」と、伝えた。
 アーモンド型の目が、大きく見開かれたが、直ぐに伏せられ、「うん」と、返事が戻ってきた。
 その途端、頭の中には淫らに乱れる、美麗な顔を思い浮かべた。

2020.07.20
【変わる】
 朝の風景が、変わる。

 いつも通り、通学電車でドアに向かって立っていると、潜が乗り込んでくる駅に着いた。
 トン
 肩を叩かれる。
「おはよう」
 佐はゆっくりと振り返る。
「おはよう」
 思わず緩む口元を、手で押さえる。
 潜が顔を寄せてきて、ドアを指差す。
「本当だ、丁度映るんだ。」
 潜が嬉しそうに見ている。
「ずっと、背中しか見えなかったから気になってた。どんな顔をしているんだろうって。」
 佐は、見とれていた理由をどんな風に言えばいいのか困惑していた。
「どうした?」
「うん…潜が美人だと思ってた。」
「それ、女に言う台詞。でも、今まで校内で会えなかったよね?」
「一組と七組じゃ、端と端だから。」
 二年になると選択科目があるが、一年の間はクラス単位で活動することが多いので、意外と接点が少ない。
「神様のイタズラ…かも」
 途端に潜の耳が真っ赤になった。
「佐って、顔に似合わずロマンチストなんだな。」
 潜が美人だとは思っていた。でも、昨日友達になりたいと言われたとき、躊躇わずに付き合いたいと言ったのには、佐は自分でも驚いていた。
「やっぱり、美人だな。ドア越しに見ていたより、ずっと美人だ。」
 潜は、脳みそが沸騰したのではないかと思うくらい、頭が熱かった。
「そう言えば、佐ってドアが開くと直ぐに出て行ってたけど、何か用事があるのか?」
 誤魔化すために話題を変えたが、「潜に会わないようにしてた。」と、また自分の話題に戻ってしまった。
「…ドンだけ俺のこと好きなんだよ。」
 潜は腹を括る。
「好き?」
 潜は佐の顔を見た。
「そうか、好きなのか。」
 佐が自分の気持ちの名前を知ったところで、電車が終点に着いた。


 駅から学校まで歩いて10分。
「潜、土曜は部活か?」
「いや、歴史研究部は月水金だけ。たまに発掘調査の手伝いをするけど年に二回くらい。今週は空いてる。」
「俺も今週は部活休みなんだ。デ…一緒に出掛けないか?」
「デート?」
「うん」
「行く。楽しみだな。で?佐の部活ってなに?」
 佐は照れながら「剣道部」と、答えた。
 十字路に出た。
 普通なら真っ直ぐ行く。
 しかし、佐は右へと誘い、手を繋いだ。遠回りしたのだ。
「遅刻、しない程度に…」
 グッと手を引かれ、公園の茂みに引き込まれた。
 そのまま抱き寄せられ、口付けられた。
「ごめん、土曜まで待てなかった。」
「ううん」
 潜は嬉しいと感じていた。
「佐。その…嬉しい。」
 素直に口にした。
 すると再び抱き締められた。
「遅刻、するから。」
「うん」
 意を決したように身体を離し、急いで学校へ向かった。

2020.07.21
【行く】
 世界が黄色く見えてくる…初めて意味を知った。

 高校生、今も昔も男女交際は禁止されている。
「男同士もダメなんだろうな?」
「うん」
 佐は口数が少ない。
「じゃあ、学校でバレないようにしないといけないか。よし、学校では苗字で呼ぶからな。」
「うん」
 初デート。潜が一方的に話している。
「俺さ、マックじゃないハンバーガー食いたい。」
 佐は少し考える。
「渋谷、池袋、水道橋、ソラマチなら心当たりがある。」
「よし、一番近い水道橋だ。」

「美味かったー!次、何処行く?」
 佐は黙って潜の手首を握るとグイグイと引き摺った。
「何々?何処行くの?」
「ウチ」
「お?佐んち?いいね。何か面白いゲームある?」
「ある」
 電車に乗って移動する。
 その間もずっと潜が話していた。
「佐んち、ここ?」
「うん、どうぞ。」
 家には誰もいなかった。
 佐の部屋に着いた途端、佐は潜を襲った。
「んっ…んんーっ」
 壁に縫い留められ、ひたすらキスをする。
「ちょっ、待て、んんっ」
 潜は足元から崩れた。
「佐の、バカ」
「言っただろ?土曜まで待てないって。潜に、いっぱい触らせて。」
 佐の手が、潜の頬、耳、髪、首、背中、肩と触れていく。
「ずるっ、俺も、触りたい。」
「触って」
潜 の手が、佐の唇、頬、髪を触れた時点で、首に縋り付いた。
「ヤバい、身体中熱い。」
「潜…くぐ…る」
 佐が切なげに名を呼び、シャツの中に手を入れ、肌に触れた。腰から背中、背骨、肩甲骨、首…。
「たす…く」
 先週まで名前も知らない間柄だった。
 それが、素肌に触れ合うまでの関係になった。
 互いに少しだけ首を傾けた。
 そのまま唇を重ねる。
 佐の舌が、潜の歯列を割り口腔を弄る。
「んんっ」
 ガクンと膝から落ちる。
 佐が腰を支える。
「もっと、もっとキスしたい。潜を乱れさせたい。」
 二人はベッドに倒れ込み、長い長い時間を掛け蕩けるようなキスを交わした。

「じゃ、また月曜。」
「ああ、月曜。」
 もう一度、キスをした。
 玄関を一歩出た途端、もう会いたくて堪らなかった。
 振り返ると佐が立っていた。
「駅まで送る。」
 わずか二分の場所だ。
 地下鉄の改札で、「次はもっと先まで」と、囁かれた。
 見慣れた地下鉄の車内が、違って見えた。

2020.07.22
【止まらない】
 潜は、佐に内緒で剣道部を覗きに行った。
 武道場の一階に柔道部と剣道部の道場と各部室とシャワールームがあり、二階に空手道部の道場がある。
 歴史研究部の資料を借りに図書室へ行った帰りに、偶然を装って覗いた。
 防具を着けていたから顔は見えなかったが、背中で判った。
 潜は、佐の背中が好きだと、改めて確認した。
 でも、佐の声も触れられる手の感触も、キスも好きだと思った。

 佐は、偶然図書室で本を探している潜を見付けた。
 アーモンド型の目が、本棚の上から順に視線を移動する。
 厚みのある唇。
 あの、目が好きだ、触れると弾力のある唇も好きだと、思った。

 最近、潜も佐も、互いのことを考えると、形が変わることに気付いた。
 それに対しては嫌悪と戸惑いを覚えた。
 それでも、抗えずに手を動かした。
 愛しい男の名を呟きながら。

 会えばキスばかりしている。
 ある日は唇が腫れるほどキスをし続けた。
 キスが気持ち良すぎて止まらない。

2020.07.23
【触れたい】
『二時間3800円』
 二人で顔を見合わせた。

 サンシャイン水族館へ行く道を間違えた。
 二人でキョロキョロと辺りを見回していたら、目に飛び込んできた。
 デートも良いけど、今は二人きりになれる場所が欲しい。
「水族館の入場料と同じくらい?」
「うん」
 二人に迷いはなかった。

「んっんっ」
 一人掛けのソファに腰掛ける潜に覆い被さるようにキスをする佐。
「はぁっ…んっ」
 息継ぎすると、またキス。
「佐」
 キスの合間に潜が名を呼ぶ。
「ん?」
「ここ、触って」
 手を取ると股間に導いた。
「いいのか?」
「その代わり、佐のも触らせて」
 二人でベッドに移動すると、ジーンズのファスナーを下ろした。
 大きく膨らんだそこに、佐は口を寄せ、下着の上から咥えた。
「あんっ」
 潜は、ヘンな声が出て焦り、慌てて口を押さえた。
 押さえた手を佐の手が引き剥がし、キスをされる。
 潜は既に息が上がっている。
「佐、もう、ムリ」
 言いながら下着を脱いだ。
「佐」
 潜は佐の下着に手を掛け、腰骨まで下ろした。
 グイグイと引っ張るとお尻に引っ掛かっていた部分がズルリと脱げた。更に引っ張ると足から抜けた。
 すると、潜は下から上に屹立したそれを、指先でツと、なぞった。
「潜っ、ちょっとま…!!ん」
 佐のそれはビクッと跳ねた。
「潜っ」
 佐は潜の足を掴んで引っ張り、顔の上に跨がせると、先端に唇を寄せた。
「た、佐っ…んっ」
 そこからは互いにどうしたら気持ち良くなるか試行錯誤となった。
 そっと舌先で突いてみたり、舐めあげてみたり、先っぽを咥えてみたり。
 そしてやっと気付く、自分でするとき、そんなに優しくないことを。
 すっぽりと喉の奥まで咥え込むと、ストローでジュースを飲むようにズズッと吸い上げた。
 佐の、潜の尻が浮いた。
 何度も何度も吸い上げる。吸い上げる方に意識が行ってしまったため、突然それはやって来た。
「んっ、んんーっ」
「んふっ…」
 ほぼ同時に口の中で弾けた。
「たす…く…スゲー気持ちイイ」
「ん」
 しかし、佐は再び潜のそれを吸い上げる。
「やっ、佐、イッた後だから、んっ、敏感なの…あん」
 ズズッ、ズズッと吸い上げられ、潜は乱れる。
 イヤイヤと首を左右に振り、抗う。
 潜が善がっている間に、佐の右手人差し指が双丘の奥の窄まりを捉え、ツプリと差し込まれた。

2020.07.24
【出る】
 身体を繋いだら、君の気持ちも手に取るようにわかるのだろうか?

 ズブズブと奥に突き入れる、佐の指。
 潜はまだ喘いでいる。
「佐、また…イッちゃう」
 じゅぶじゅぶと吸い上げられるそれと、ズブズブと突き入れられる指とで潜は両腕で身体を支えるのが精一杯だ。
「あっっ」
 潜が鯱の様に仰け反った。
「ここ、イイ?」
 佐は咥えたまま言葉にした。
「やぁっ、喋んないでぇ」
 潜も再開しようと試みるが佐に翻弄されて上手く行かない。
「あんっ、ううん…ああん」
 不意に佐は口を離した。双丘をぎゅっと両手で握りつぶす。
「あは…んっ」
 クルリと上下入れ替わると、今度は乳首をペロペロと舐め始めた。
「ひゃっ、佐、くすぐった…いいっ」
 クスクス笑っていたが、徐々に喘ぎに変わる。
「はっ、あ…あん」
「潜、ごめん、もう限界だ」
 ベッドボードの袋を破き、中からコンドームを取り出すと、苦労して装着した。
 もう一つ、ベッドボードに置いてあったのは佐のリップクリーム。クリーム状のそれを潜の双丘の奥の窄まりにたっぷりと塗り付けた。
「ムリさせて、ごめん」
 佐のそれがむき出しにした窄まりにあてがわれると、力一杯突っ込んだ。
「んっ」
 潜の顔が歪みギュッと目を閉じた。
 ミシミシと音がしそうな狭さだ。
 それでも何とか括れまで入れた。
「潜」
 薄目を開けて佐を見る。
 佐は顔を近付け、キスをした。上顎を舐め、舌を吸う。
 潜の息遣いに艶が混じる。
 右手で潜のそれを握ると親指の腹でグイグイと扱いた。
「んうっ…ふぅん…」
 潜の下半身から余計な力みが無くなり、ズルリと砲身が滑り込んだ。
「お腹、パンパン。動かれたらお腹突き破って出てくるんじゃない?」
「試してみよ」
 言うなり、佐は抽挿を繰り返した。
「あっ、あっ、んっ、や…あっ、い、あ、い…」
 佐が突き入れると潜の声が漏れ、引き抜くと息を?む。
 グッと突き入れたまま、グイグイと最奥を更に伺う。
「ひっ…っ」
 潜が息を飲む。
「潜ん中、すぐイキそう」
 佐の動きが速くなったので、潜のイイ所にトントンと何度も当たる。
「ひっ、はっ、んんっ、ヤダっ…んんっ、出るっ」
 潜と佐の腹で擦られた潜のそれは、ビュクビュクと精を放った。
 その余勢で引き絞られた窄まりに、佐の精も絞り出された。
「はあっ、はぁっ、たす…く」
「な…に?」
「すげ、気持ち善かった。」
「うん、気持ち善かった。」
 潜は、頭を持ち上げ、繋がった部分を見遣る。
「超絶エロっ。けど…嬉しい」

2020.07.25
【両想い】
 互いに好きなのでは無く、互いを思いやることが両思い。


「昔読んだ小説にさ、腰の部分で身体が繋がっていた双子がいたんだ。でもそれは男の方が女のことを好きで、人工的に繋げたんだよ。どうせ繋げるんなら、こんな風に繋げたら良いのにな。佐のがデカくなったら気持ちイイじゃないか。」
 それは江戸川乱歩だよ、と心の中で呟きながら、そんな風に繋がっていたら幸せすぎて死にそうだと、考えていた。
「中、入れっぱなしでいいの?」
「ダメか、イキっぱなしになるか?」
 余りにも突拍子もないことを言われて、佐は笑って誤魔化した。
「そっか!繋がってんだから、動けないか。」
「やっと気付いたか。」
 佐のそれが、小さくなって抜けた。
「佐。また今度、な?」
 潜、それは殺し文句だ…と、佐は潜の身体を抱き締めた。
「潜、スゲー好き」
 地下鉄のドアに映る潜を見ていたときから、きっと好きだった。あの唇に吸い付きたいとか、頬を上気させたいとか、邪な考えばかり抱いていた。振り返って声を掛ければ良いのに、何と声を掛けたら良いのか、ずっと考えていた。結局何も言えずに電車から逃げ出したのだ。そんなこと、潜にはカッコ悪くて言えない。
 背中に惚れてくれた潜には、カッコいいと思っていて欲しい。
 ベッドから降りようと、起き上がると、その背に潜が抱き付いた。
「好き…佐。」
 その二文字に、一喜一憂してしまう。
「一緒にシャワー浴びてく?」
「うん。急がないと時間ないか。」
 慌てて二人でシャワーを浴び、ラブホテルを後にした。

 付き合い始めて半年。
 潜が佐について改めて気付いたこと。独占欲と自己顕示欲が強い。
 佐が潜について改めて気付いたこと。常に佐の意見を尊重してくれて、意外とヤラしい。こんな体位はどうだとか研究熱心。
「大阪?なんで?」
「東京だと、一緒に暮らせない。」
「東京でバイトしてラブホ行けばいいんじゃないか?」
「そっか!」
 今朝も、二人は遠回りして通学する。
 公園の茂みはお約束。
 キスをして、友達になる。
 次に恋人になるのは、昼休み。体育館の裏で一緒に弁当を食べる。
 実は、クラスメートはみんな二人の仲を知っていた。知っていたけど黙っていた。

2020.07.26
窓は閉めて
 夏。
 寝苦しくて何度も寝返りを打つ。
 三畳の広さの学生寮。
 ベッドの下に机とクローゼットがある。それだけ。
 今は夏休み中で殆ど人が居ない。
 窓を全開にして寝ている。

「アキト、お前窓閉めて寝ろよ、イビキがうるせーよ。」
 寮の食堂で朝からグダグダとウルサいのは、同じサークルの先輩。
「だって、トーマ先輩バイトか女んとこに行ってて夜は居ないじゃないすか。」
「夕べからいるの。これからずーっと!」
 何でだよ?
「いいから、閉めて寝ろよ!いいな!」
「はーい」
あちーいんだよ、くそっ!

「んんっ…やっ…待っ…ああっ」
 ぐちゃぐちゃと直腸をオトコのナニで掻き回されている。それに俺は喘いでいる。
「俺は、ちゃんと忠告した…ぞ。窓閉めろって。」
「あんっ…だって、あっ…イビキ…って…んん」
「アキト、可愛いよ」
 やられた。
「も…イクっ…イッちゃう…」
「おう、イッていいぞ、夜は長い、これ…」
ゴンッ
「痛ーっ」
 ベッドは高い位置にある。
 天井が高いとはいえ、あまり頭を上げると打つかる。
「くそーっ、アキトがイキそうだったのにー」
 再び腰を使い始めた。
「あんっ」
 中の熱がぶり返す。
「トーマ先輩っ」
「アキトっ」
 ドプッ…イッた。
 え?
 トーマ先輩が動きが止まり、奥に奥に熱い飛沫を感じた。

 狭いベッドに男が二人、ぜーハー言いながら重なり合う。
「アキト、好きだ。」
「先輩…順番が逆だろっ!」
「良いじゃないか!こんなことでもしないと、お前は絆されないだろ?」
「絆すって…」
 先輩にぎゅっと抱き締められる。
「俺のモンに、なれ。」
「…いいよ」

2020.08.01
台風の夜
「んんっ」
「ダメ、声は我慢して」
「んっ…ふうっ…」
 台風が近付いている。
 こんな日にバイトなんてとガッカリしていたのに、もう一人のバイトが電車が止まってしまったために、急遽碧を呼び出した。
 客なんて来ないだろうと、碧を気持ち良くさせていたら、こっちも気持ち良くなって来ちゃって、繋がるぞとファスナーに手を掛けたときだった、店のドアが開いた。
「い、いらっしゃいませ」
 声が上擦ってしまった。
「アイスコーヒー15とアイスティー2、ホット1で。」
 こんな天候でも、会社によっては会議とかしてくれちゃったりする。
オフィス街にあるコーヒーショップなら当たり前のことだ。
 あー、股間が痛い。
 碧もズボンを履いて慌ててやって来た。
「この二つがアイス、ここまでかコーヒー、ホットはこの紙袋です。」
 お客さんは碧から商品を受け取る際に「今日も可愛いですね」と、声を掛けた。
 客が帰ると、碧は下着を脱いだ。
「続き、しよ?」
 この後、客は来なかったが店内にはすすり泣きが聞こえた。

2020.08.02
秘密の恋
「で?今日はどうだった?」
「告白されたよ、お前から。」
「なんて?」
「あの日、落としたスマホを拾って貰ったのは、運命だったってさ。」
「うわーっ、クサいー」
 僕たちは「サプリ」というグループ名でアイドル活動をしている。
 今、実写型恋愛疑似体験ゲームが、ネット配信されていて、大方のあらすじに関しては企画書の段階で貰っているけど、実際にどんな台詞を言っているのかは知らない。
 僕たちが台詞を吹き込んだのは、ストーリーではなく、特典部分なのだ。
 本編は文字だけで進んでいく。
 マサヒロは面白半分にボク、コウキを選んでゲームを進めていたのだ。
「コウキもやってみてよ、オレがどんなクサい台詞を言っているか知りたい。」
「えー、どうしようかなぁ?」
 そんなこと、絶対に出来ない。
 だってボクはマサヒロに恋をしているから。
「じゃあ、ボクがやってみるかな?マサヒロと。」
 立候補したのはアヤト。
「えー、じゃあボクはカザミとやってみる。」
「あ、じゃあボクがアヤトとやれば、全員どんなクサい台詞を吐いているかがわかるんだね?」
 全員がバラバラで実施してみることが決まった。
 ボクは会社から支給されたスマホで疑似恋愛体験をはじめてみる。
 …実は、個人所有のスマホで、マサヒロとの秘密の恋は始まっているのだ。
 毎日、キュンキュンする台詞を言われて悶えている。
 マサヒロもおんなじ風に悶えてくれてたらなぁと、溜息つきつつ、ゲームを進める。

「コウキ、コウキ!オレ達遂に朝まで一緒にコース、行っちゃったよ!」
 朝一で大胆な発言だ。
「それはそれは、遂にコウキを落としたんだね?」
「うん!」
 ボクは自分より年上のオトコにキュンキュンしている。
「ボクはやっとカザミと再会したばかり…」
 自分のスマホのマサヒロとは、既に一線を越えて同棲するかどうかで悩んでるよ。
「コウキ、お前のスマホ、見せてみ。」
 何で!?
「オレ、知ってるんだ、コウキがこっそりオレと恋してること。」
 な、なんで!?
「コウキが、オレを好きなことも知ってる。」
「う、うそ…」
「好きだよな?オレのこと?」
 一度だけ、首を縦に振った。
「はーっ、良かったー。」
 ん?
「いや、コウキがなかなか尻尾を出さないからな、こっちから揺すってみた。」
「ひ、ひどい」
「ひどい?なんで?」
 マサヒロはボクを抱き寄せた。
「ゲームより凄いこと、したいなぁと思って。」

2020.08.03
家政夫が来た
「お部屋のお掃除完了しました」
「ご苦労様です」
 パタン
 ボクは寝室のドアを閉めた。
「星夜(せいや)」
「長司(ちょうじ)さん、お待たせしました。」
 二人は抱き合う。
「星夜、もう待てないよ。」
「ボクも、長司さん。」
 互いに唇を求め合い、身体を重ねる。
「はっ…はぁっ…んっ」
「星夜、星夜」
「もっと、もっと奥に…欲しい」
「んっんっ」
「そこ、そこもっと、あっ、イイ」
 今のボクの仕事は家政夫だ。
 そして下の世話も、家政夫のお仕事。表向きは話し相手なのだが、裏の顔はセックスします…である。
 趣味と実益を兼ねている。
「長司さん、すごく気持ちイイ、…長司さんも気持ちイイ?」
「イイ…物凄くイイ」
 長司さんは高齢者だ。なのでとても短くとても早い。セックス中、ボクはほぼほぼ演技をしている。
「はっ…はっ…長司さんっ」
「星夜っ、出る、出るよ」
 長司さんは本当に短い逢瀬を満足してくれた。

 今日の仕事場は別の人。こちらは、まだ本業?に、至っていない。
「おはようございます」
 …
 やっぱり返事が無い。
「家政夫の小片(おがた)星夜です」
 …
「お邪魔します」
 はぁ。
 雇い主の五十崎大湖(いそざきだいご)は、インターネットで申し込みをしてきた。
 すでに半年通っているがまだ会えたことがない。
 黙々と掃除をして二日分の食事を作り、その後に洗濯をして帰る。
 今日の夜、明日の朝・昼・夜、明後日の朝。
 今日の昼は出来たてを用意しダイニングテーブルにセットしておく。
 その間に洗濯をしていれば食事が終わっていて片付けて帰る。
 五十崎大湖に、会いたい理由があるのだが、まだ本懐を遂げていない。
「相変わらず鈍臭いな」
 この声は!
「半年たったんだからそろそろテキパキと出来るだろ?」
 五十崎大湖と、目が合った。
「…今日はオプションを付けてくれ」
「大湖、ボクとのセックスに金払うのか?」
「昔から、星夜は金で男と寝てただろ?」
 否定が出来ない。
「ホンモノだったんだ。五十崎大湖…偽物かと思った。」
 突如唇を塞がれた。
「直ぐに入れさせろ」
 大湖の手がボクの素肌を伝い、下着を剥ぎ取ると、性急に後孔に指を突き入れた。
 二〜三度出し入れすると背後から突き入れた。
「大湖、痛いよ」
「売春夫のクセに、痛いとか文句言うな!お前は俺の性処理をすれば良いんだ」
 大湖、お前も変わらないじゃないか。昔から自分勝手に入れて自分勝手に動いて一人でイッて終わり。
 もう、何回出されたか分からないくらい孔の中がグチュグチュしていたけど、まだ大湖は抜かない。
「くそっ、全然治まらない。よしベッドでやるぞ。」
 クポンっと、引き抜かれると孔から大湖の精液が溢れ出た。
「零すな!全部中に収めておけ!」
 全く、暴君みたいだ。
 ベッドに移動すると直ぐに串刺しにされた。
「んっ」
「もっと、喘いでもいいぞ」
 やだ。大湖に喘がされるのはいやだ。
 グポッ、ヌチュ、グポッ、ヌチュと、イヤラシい音が自分の下半身から発せられている。
「大湖、ドンだけ堪ってたんだよ」
「10年分」
「あれから、してなかったのか?」
「お前以外、誰が処理してくれるんだ!」
 グポッ、ヌチュ、グポッ、ヌチュ…果てしなく続きそうだ。
「大湖、延長料金、高いぞ」
「…このまま、監禁して外には出さない…永遠に俺のモンだ。星夜。」
 なら、どうして今まで出て来なかった。
「長司さんも、ボクとのセックスを楽しみに待ってる。」
「お前の仕事は今日から俺と嵌めることだけだ。他には何もするな!」
「知ってるか?ウチの会社、ボクが社長なんだよ。ボクがいないと回らない。」
「猶予は半年あっただろう?」

2020.08.11
【家政夫になる前】
「お前が小片星夜か?」
 遂に五十崎大湖がボクに声を掛けてきた。
 ウリ専門の店でずっと待っていた。
 新宿二丁目に舞い降りた美悪魔と、この界隈で噂されていた男。
 一度抱かれてみたいと思っていた。
 推理小説界に彗星の如く現れた超新人で、男色と公言している。
 ここで待っていれば必ず会えると言われていたが、まさか名指しされるとは思わなかった。
「昨日の子が、小片星夜をべた褒めしていた。」
 誰だ?そんなヤツ知らないな。
 「お望みの体位でしますよ?」とは言った。
 梁に吊り下げられ、下から突き上げられるとは思いも寄らなかった。
「思い切り喘いで良いぞ」
「いえ、プロですから」
 その時も喘げと言っていた。
「小片星夜、明日もここへ来てくれ」
 それから一週間毎日同じホテルで抱かれたが、その後はプツリと無くなった。
 飽きられたんだと思ったが、店に行くと金を貰っているから他の客は取るなと言われる。
 やることもなく、街をプラプラしていることが多くなり、店にも顔を出さなくなった。
 新宿を離れ、池袋へ移った。
 また、ウリをしていたが、年齢が邪魔をした。
 手持ちの金がなくなり、何気に銀行へ行ったら、新宿の店から数百万単位の金が振り込まれていた。
 「五十崎大湖からの入金」と言われた。
 その日からボクは、再び彼を探す日々が始まり、家政夫を始めた。
 出版社にも声を掛けた。
 五年掛けて、やっと、見付けた。
2020.08.12
【家政夫がイク】
「…何でだよ?なん…で、いつも…」
「可愛くないからだ」
 どこが可愛くないんだよっ!
「この太さと長さと硬度に貫かれて、何故に喘がない?俺は小片星夜が喘ぐ様を見たい。」
「そん…な」
くだらない理由かよ!
「なら…喘がせてみろよ!下手くそ!」
 いつもいつも、奇妙な体位でしてたらそれに合わせるのに必死でそんなこと考えられないんだ!
「不感症か?」
「…普通にすればいいんだよ…」
「普通に?」

 それからボクは五十崎大湖へ懇切丁寧に気持ちイイセックスについて説明した。
「前戯か。確かに。」
 いやいや、それだけじゃないけどさ。
 突如、五十崎大湖はボクに背を向けるとパソコンを叩き始めた。
「あ。次の話、お前が主人公だ。」
「前からでしょ?」
「…気付いてたのか…」
「声掛けられる前から」
 そう、美悪魔が気になったのは、どう読んでも主人公がボクだからだ。
 なのに一週間で捨てられるってどういうことなんだ?
 心の中で悪態をついている間、五十崎大湖は前戯についてパソコンで調べていた。
「よし、覚えた。やるぞ!」
「は?」
 振り向きざまに口付けられた。
「んっ」
 机の横の仮眠用ベッドに押し倒された。
「お前が可愛く喘いでくれたら、小説の主人公も可愛くなる。」
「そんな…」
 そう言えば、初めてキスした。
 それだけで脳みそが沸騰しそうだ。
「な…んで、ボク…が、主人公なの?」
「顔が好きだ。身体も好きだ。生意気なとこも好きだ。知らなかったのは名前だけだ。」
 五十崎大湖は、ボクのペニスに口付けた。
「ここも、好きだ。可愛いな。」
 なんだよ、こいつ。
 じゅぶじゅぶと音を立てて吸われる。
「ばっ、そんなに吸ったら、イッちゃう…んっ」
「きぼぢいいぼが?」
「口ん中入れてしゃべんな!気持ちイイよっ!」
「よがっだ」
「だからっ」
 ちゅぽんっと、口を離した。
「もうっ!」
 散々吸われて、今度は指で扱かれる。
「あっ…んっ」
 舌で乳首をユルユルと舐め回される。
「やっ…そんな…感じ…ちゃう」
 片方は指で摘ままれた。
「あぅっ」
 五十崎大湖の目が、何か言いたげに見ている。
「なん…だよ」
「可愛いな」
 今まで色んな人から言われ慣れているのに、五十崎大湖に言われただけで、身体が火照る。
「今…なら、抱かれても、確実に、喘ぐ…かも」
「試してみるか?」

 五十崎大湖は正常位で挿入してきた。
「んっ…」
「好きだ、小片星夜」
「あっ…うっ…ボクも…」
 顔も知らぬうちから恋していた。
「好き」
 口を吸われ、耳を舐められた。
「もう、喘がなくてもいい、小片星夜が、可愛くて、隠しておきたい。」
「ああんっ…気持ちイイ…大湖さんの、気持ちイイよぉ」
 初めて、五十崎大湖とのセックスが、気持ちイイと感じた。
「下手くそで、悪かった…突っ込んで掻き回せば、善くなると思ってた。」

2020.08.13
【家政夫廃止】
「そうか、星夜は嫁に行くのか…残念だな」
 長司さんの家に最後の仕事に来た。
「これからは新しい人が来ますけど、その…あっちの方は、ない、です。」
「わかってる。私も星夜だから抱いたんだ。他の人とは寝ないよ。」
 長司さんが、ボクの手を握る。
「最後に…」
「ごめんなさい、操を…立てて…います。」
 すると、高齢者とは思わぬ力で抱き寄せられ、キスされた。
「これだけなら、いいだろ?」
 ボクは、笑顔で答える。
「それも、ダメです」

2020.08.14
【設定だけでイキそうです】
「うーん…左手をもう少し上?いや、胸かな?」
 先生、お願いですから僕をモデルにしないでください。
 先生は、今をときめく恋愛漫画の巨匠で、僕はそのアシスタント。
 今をときめいている割には、アシスタントが一人なので、仕事は猛烈に忙しい。
「やっぱり違うなぁ…千隼(ちはや)くん、ちょっとこっち来て」
 先生が、めがねを外した。
「先生、僕、スクリーントーン全然貼れないんですけど!」
「そんなの後でも出来るからさ」
 ブツブツ言いながら先生の横へ行くと、いきなり抱き寄せられる。
「な!」
「腰を抱くと腕は浮くんだな」
 それは!
 僕は俯いた。
「で、俺の顔見てよ?」
「なん…で?」
「何で?って、キスするから。」
「え?」
「このシーンの後、腰を抱き寄せてキスするんだけど、どうも上手く表現できないんだ。」
 そうだよな、うん。
 僕は先生の顔を、見た。
「顔、真っ赤だよ?」
「そりゃ、こんな近いから…」
「近いか?」
 先生は、目を開けたまま顔を近付けた。
「目、閉じて?」
「僕が?」
 渋々目を閉じた。
 先生の息が掛かる。
 ダメ、起つっ。
「当たってるよ?」
 え…。
「千隼くんの、当たってる。」
 な、な、な、何が!
「ん」
 せ、先生?
 唇を塞がれた。
「んんっ」
 唇をこじ開けられ、歯列を割られ、舌を捩じ込まれた。
「んっ」
 先生の舌が上顎を擦る。
 イクっ。
「千隼くん、可愛いね」
 先生の腕から解放された。
「やっぱり腕は浮いたままか。」
 先生の、バカ。

2020.08.15
【設定だけでイキました】
「千隼くーん、まだー?」
 今、返事なんか出来ません。
 先生のせいで、僕のムスコは元気になってしまいました。
 だから、宥めるのに必死なんです!
「うっ」
「千隼くん、大丈夫?」
 だから、トイレの前で待たないでよっ。
「大丈夫…」
「辛そうだよ?」
 辛いよ、バキバキだからなっ。
 一回じゃ治まらない。
 でも、とりあえずトイレからは出よう。
「良かった、千隼くん、具合悪くなったかと思った。」
 安心した顔で抱き寄せられる。
「続きがあるんだよ、だから具合悪いなら言ってね。」
 先生…。
 先生は腕を解くといきなり僕のズボンとパンツを引き摺り下ろした。
「おおっ、良い感じに起ってる。」
 言うと、パクリと口に咥えた。
 じゅるじゅる音を立ててしゃぶられた。
「先生、イヤだ。」
「出していいよ?」
 先生…。
ドクン
 先生の口に出してしまった。

2020.08.16
【設定だけでヤラれました】
「ふふ」
 先生は口元を拭うと、不敵に笑い、廊下で僕を押し倒した。
 僕の出したものを使い、後ろを濡らし始めた。
 指を入れられ、煽られる。
「感じる?」
「は…はいっ…」
「気持ちいい?」
「気持ち…イイ」
「この辺のはず…」
 身体を電気が走り抜けたようにビリビリと快感が襲う。
 思わず喉を仰け反らせた。
「前立腺擦ると男でも中でイケるらし…イッたようだね?」
 肩で息をしている僕を見て、先生は満足したようだ。
「原稿が終わったら、ちゃんとしようね?」
 先生は意味深なことを言って、机に戻った。

2020.08.17
【設定はいりません】
 先生は原稿をあげると、イソイソと僕の横に来た。
「さて。千隼くんは、俺のこと好き?」
 え?
「好きって言うか、尊敬しています!」
「そーかぁー。俺はね、千隼くんが好きなんだよ。絆されてくれる?」
 絆されて?ん?
「続きをしたい。」
 続きって、この間のだよね?
「キスしていい?」
 この問いに関して、先生は僕の返事を待つことは無かった。
 事務椅子に座る僕の膝の間に膝を入れ、前屈みになると顔を寄せてきた。
「んっ」
 くちゅんと音がする。
「興奮するね」
 先生、エロいです。
 ティーシャツの上から、乳首を吸われ、ジーンズの上から起ち上がったモノを握られた。
「あ…んんっ」
「千隼くん、千隼くんっ」
 せ、先生。
 ジーンズを脱がされた。
「でも、こんなことしたら嫌われちゃう?」
 フルフルと首を左右に振った。
「良かった」
 クポン、くちゅんと、僕のムスコは、先生に舐め回され、咥えられまくった。
「せん…せ…出ちゃ…うぅ」
「まだ、ダメだよ」
 ダメって言われても、気持ちイイよぉ。
「せん…せ…んんっ」
 ドクンっと、大きく心臓が鳴り、びゅっと勢いよく射精した。
 ごくりと大きく喉を鳴らして先生は僕の体液を飲みくだした。
「千隼くんの、濃い」
 先生は僕の脚を肩に乗せると、アナルを覗き込む。
「綺麗な色してる」
 ポケットからコンドームを取り出すと、コンドーム越しにアナルを舐めた。
「あっ…ああっ」
 この間の比では無い。
「せ、先生っ、気持ちイイ…です」
 先生の目を見ると、嬉しそうに笑った。
「はあっ、んんっ」
 気持ち良すぎる。
「孔がヒクついてきたから、中、擦っていい?」
 相変わらず僕の同意なんて求めてはいない。
「んんっ」
 指が挿入された。
 くちゅくちゅと音がする。
「先生、恥ずかしいです。」
 ずっと、僕ばかりされている。
「大丈夫、もう少しで俺も恥ずかしいくらい興奮するから。」

2020.08.18
【胃袋からつかめ】
「圭治郎さん、ここ、気持ちイイ?」
「んんっ…ああんっ」
「ふふっ、可愛い」

 圭治郎さんは、半年前に地方から東京本社に転勤してきた。
 仕事が出来るので、本社に引き抜かれてきたのだ。
 そんな圭治郎さんに、俺は一目惚れをした。
 赴任してきた日から、飲みに誘ったり、一人暮らしのアドバイスをしたりして接近を試みた。
 すると、今まで実家暮らしだったので、食事がまともに出来ないということが判明した。
「俺、料理得意なんで週末お邪魔していいですか?作り置きします。」
 その言葉に、圭治郎さんは騙されたのだ。
「追河君、僕は、そんなつもりじゃ…」
 抵抗する圭治郎さんのをしゃぶって、イカせた。
「だって、溜まってたでしょ?」
 そう言って何度も出させた。
 週末の度に料理して、下の世話もした。
 それが半年。

「追河君?」
 今日も黙ってしゃふらせている圭治郎さんの尻孔を弄った。
「追河君…」
 しゃぶりながら、孔を解した。
「おいかわ…くんっ…」
 段々と声が艶っぽくなってきた。
「圭治郎さん、お尻、気持ちイイ?」
「よく…ない…んっ」
「でも、ここ、膨らんでる。」
「ちが…」
「もう、入れたい…ダメ?」
 フルフルと首を振る。
「そういう…ことは」
「したことない?」
 ところが、首を左右に振ったのだ。
「酷い人」
 俺は指をグイッと奥に入れ、前立腺を擦った。
「ああっ」
 圭治郎さんが仰け反る。
「圭治郎さん、好きです。セックスしたい。」
 圭治郎さんは首を左右に振る。
「追河君とは、しない」
「なんで?」
 入れていた指を引き抜き、チノパンのファスナーを下ろす。
 中からパンパンになっているモノが飛び出した。
「こんなんなってるんだけど、ダメ?」
 圭治郎さんの口元に擦りつけた。
「も、パンパンでヌルヌルなんだ」
「口でするから、」
 そのまま、圭治郎さんの口の中に導かれた。
「あっ」
 気持ちイイ。
「んんっ」
 じゅるじゅると音を立て、アイスキャンデー並みに舐められた。
「ダメ、圭治郎さん、出る」
 ドクンと出た。が、ちっとも治まらない。
「圭治郎さん、俺、こんなんじゃ足りない。」
 圭治郎さんを押し倒して突き入れた。
「やぁっ…追河君、やめ…んんっ」
 身体中朱に染まり、頬を紅潮させ喘ぐ姿が色っぽい。
「ごめんなさい、圭治郎さん。でも、もう我慢できなくて」
 圭治郎さんが俺の身体に抱き付いてきた。
「イイ…気持ちイイ」
 その言葉が腰に来る。
 圭治郎さんの中に大量に吐精した。

「…追河君、週末だけでなく平日もここにいて…」
 え?
「だからっ!だからしたくなかったんだ、止まらなくなるから」
 圭治郎さん、可愛い。

2020.08.19
【看護は万全です】
 左足の小指を骨折した。
 手術した。
 現在、絶賛入院中だ。

「西藤さーん、検温お願いしまーす」
 …入院したらさ、可愛い看護師さんが看病してくれると思うじゃん。
 なのにさ、この病院、看護師が男なんだ。
 いや、男は数名しかいないのに、僕の担当が何故か男なんだ。がっかりだよ。
「検温終わりまーす」
 ただ、この看護師、可愛いんだよなぁ。消灯になると、電気消してくれるんだけど、「西藤さん、また後で来ます。」と、耳元に囁いていくんだ。

「西藤さん、ここ、いいですか?」
「…」
 声も出ない。
 チュポチュポと小さく音がする。
「声、我慢しなくても平気ですよ?今この病棟に入院してるの、西藤さんだけだから。」
 24:00過ぎると、看護師がしゃぶってくれる。
「西藤さんの、美味しい。」
 チュポチュポがじゅるじゅるに変わる。
「んっ」
 看護師の髪に触れ、感じていることを伝える。
「また…欲しい」
「うん。」
 看護師は嬉しそうに笑った。
 ベッドに乗ると僕の腰を跨ぐ。
「んんっ…あっ…入った」
 自ら僕のモノを飲み込んだ。
「動くね…あっ」
 ジュポジュポとイヤラシい音が部屋に響く。
「西藤さんの、気持ちイイ…」
 僕は手を伸ばし、看護師のモノを指で扱く。
「あんっ、気持ちイイよぉ」
 ベッドがギシギシと軋む。
「あ…あ…イクッ」
 看護師が吐精するタイミングで、医師がやって来た。
「伊東くん、また?」
「あ、佐島せんせ…」
 医師は看護師を僕から奪い取ると、ベッド横の転落防止バーを握らせて、後ろから挿入した。
「せんせ…嫉妬した?」
「したから、入れてるんだろ?」
 クチャクチャ、ぐちゃぐちゃと僕の横でセックスする。
「看護師さん、僕まだ…」
「あ、ごめんなさい」
看 護師は掴んでいたバーを外すと、僕のモノを口に咥えた。
「伊東くんはチンポ好きだね」
「ん、ダイズギ」
 口と尻孔にチンポを咥えて悶える。
「んっ、ん、」
 医師は看護師のモノを手で撫でた。
「んんっっっ」
 ビクンっと、痙攣して果てた。

「西藤さーん、おはようございまーす。」
 今朝も看護師は元気だ。
「今夜は僕、夜勤じゃないのでまた明日ね。」
 耳元に囁き、朝の検温をして去って行った。

2020.08.20
セクハラですけど
 日本では平安時代から男色という名で男性同士の性交について語られている。それは戦国時代まで続いており、確実にセクハラに価すると思われる。
【シーン1】
「あんっ…んっ…」
 毎日残業と称し、裸に剥かれ、捏ねられ舐られ弄られ掻き回され出される。
「んっ…気持ち…イイ」
 しかし、それが気持ち良くなっちゃったら、セクハラではないのだろうか?
「あ、あ、イク、イクイクっ」
 大量の精液が蜜口から放出された。
 ヌルリと尻孔からチンポが抜けた。
「明日のサービス残業も宜しく」

2020.10.01
【シーン2】
「んっ…あ…」
 その人の掌は熱かった。
 制服の前を開けると乳首を執拗に舐った。
 下着の中にその掌は潜り込むと、緩急を付け、扱き始めた。
「あぁっ」
 耳の穴も舐られる。
 ブルブルと身体が震えた。

 
宿直室にいます。ご用の方は内線でお呼びください
 ○○交番

2020.10.02
【シーン3】
 ガタガタと、机が音を立てる。
 「あ…んんっ」と、小さく喘ぎ声がする。
 授業中の生徒指導室。
 机を抱くようにうつ伏せにされ、背後から貫かれている。
「中、出すぞ」
「や、止めて」
 拒否しても中出しされた。
「次、問題を起こしたら上下から串刺しだからな」
「はい…」

2020.10.03
【シーン4】
 放課後の生徒指導室。
 相変わらずガタガタと、机が音を立てる。
「ううっ…あぁっ」
「君が指導した生徒、また問題を起こしたようだね?」
 共にジャージのズボンを少しだけ下ろして結合している。
「身体に言い聞かせてもダメだよ、君と同じだね」
「ああんっ…イイ」
「中に出して栓をしなさい。腹痛で耐えられないはずだ。」
 今日も教師同士で生徒指導の議論?を繰り返している。

2020.10.04
【シーン5】
 注文住宅のベッドルームであろう部屋。
 明日は施主に引き渡しの日。
「来週にはここで施主夫婦がえっちしてるんだよなぁ」
「うっ…あんっ」
「そこで先にヤッてやろうなんて、ゲスだよなぁ。」
「あんっ…あんっ」
「相変わらず良い声で鳴くなぁ」
 現場監督が、がたいの良い大工を連れ込んでいる。
「あっ、イクぅ」
 真新しいフローリングを、汚した。

2020.10.05
【シーン6】
「ううっ…う…」
 農家では母屋の近くに作業場がある。
 そこに夜な夜な連れ込まれるのは、次男。
 膝に乗せられ背後から貫かれた。
「ほーら、よく見てご覧、兄ちゃんのがズッポリとお前の尻孔に刺さってる。」
 チラリと覗くが、直ぐに仰向く。
「あんっ…」
「喘いでばかりで…そんなに気持ちイイのか?」
「ん、兄ちゃ…気持ちイイ」
 ゆさゆさと揺さ振られ射精する。
「あーあ、これ出荷出来ねーじゃん」
 長男は次男が汚した果物を囓った。

2020.10.06
【シーン7】
「よいな、声は出すな」
 戦国大名である我が主君は、性欲が異常なほど旺盛だ。
 戦場に女は連れて来られぬと言って、身の回りの世話係と称し、小姓の私が着いてきている。
「んんっ…ふっ」
「その、押し殺した声もそそるな」
 主君の上に跨がり、身体を上下に揺する。
「殿、申し訳ございません。気をやりそうです…」
「もう少し、辛抱せい」
 猛然と下から衝き上げられる。
「あっ…辛抱堪りません、腹の中がっ」
 孔をぎゅうぎゅうと締め付けた。
「おおぅ、堪らん、出すぞ、全て零さす受けとめよ」
「んっ」
 孔から零さぬように必死で締める。
 それを見て主君はまだ一度も触れていなかったモノを扱いた。

2020.10.07
【シーン8】
「先輩、ミーティングいいですか?」
 それは僕たちの合図。
 会社の地下にある小さな会議室へ行く。
 ドアに鍵を掛けパイブ椅子に腰掛けると、先輩が跨がって来て、ゆっくりと挿入した。
「あっ…」
 自分で入れたくせに、涙目になっている。
「先輩、僕、動きますか?」
「やだ、俺…が…」
 言いながら涙を零す。
「僕が虐めてるみたいじゃないですか」
「違っ…」
 入れただけでイクような人だ、動けるわけがないのだ。
 最初に誘ってきたのは先輩なのに。

2020.10.08
【シーン9】
 平安の世。
 みすぼらしい牛車に乗るよりはいっその事歩いた方がましなくらい貧乏貴族。取り柄と言えば内裏に上がったとき女房達に見目が良いと騒がれることだ。
 そんなある日、大臣に呼び出された。

「お、お許しください、それだけは…」
「なに、三月も我に付き合うてくれたら、末娘の婿に迎えようではないか。我が後掲となれば其方の今後は安泰じゃ」
 大臣の手が合わせを伝って胸に掛かる。
「んっ」
「初な、初な」

「はっ、はっ」
「其方は具合が良い、摩羅にくるぞよ」
 尻を撫でられ孔を挫かれ摩羅に貫かれた。
「善いぞ、善いぞ」
 中をしとどに濡らされた。

 その後、無事に婿に収まったが、大臣との関係は死が二人を別つまで続いた。

2020.10.09
【シーン10】
「ぶ、部長っ」
「お前はいつまでも他人行儀だな、もう俺達はズブズブな関係なのに」
 そうなのだ、僕は新入社員として部長の下に配属された日の夜から、嵌められてしまい愛人になった。
「でも、部長はお帰りなったら奥さんとお子さんが…」
「いないぞ、そんなもん。俺は初めからお前しかいないぞ?さっさと越してこい、もっと可愛がってやる。」
 一際深くまで抉られ溢れるほど中を濡らされた。

2020.10.10
{【シーン11】
 真夏の木造アパートに、扇風機一つで窓を閉め切った中、僕の下半身からはぶーんと音がする。
「あんっ、あんっ」
「お前は、突っ込まれれば鳴くのか?俺んじゃなくても気持ちイイのかよ」
「そ…ゆ…身体…した…お前…だろ…んんっ」
「くそっ」
 体内に埋め込まれていた硬質で無機質なモノが引き抜かれ、熱く滾った肉塊が代わりに埋め込まれた。
「ううっ…熱…中…火傷するぅ」
 じゅぶじゅぶと出し入れする度に声が漏れる。
 故郷を離れ偶然東京で再会した、郷里の幼なじみ。その日からずっとここに居てこれをしている。もう、これなしでは我慢できない。

2020.10.11
【シーン12】
「せ、せんぱっ…」
 深夜とは言え、コンビニにはお客が常に居る。今だって二人が店内をウロウロしている。
 ただ、セルフレジがあるので店内の監視だけしていれば店は回っている。
「んっ…んんっ…」
 先輩…って言ってもただ年上で僕より先にバイトをしていただけなんだけど、飲料の補充スペースに僕を度々連れ込む。
 飲料の棚に手を付き、背後から挿入された。
「しっ、声が漏れる。」
 そんなこと言ったって、気持ちイイ…、いやいや、何思ってる、自分。
 棚がグラグラと揺れる。
「ほら、ちゃんと飲料の補充してよ…お客さんから見えちゃうよ、君のエロい顔」
 そんな、無理っ。
 ダメっ、そこの炭酸あと一本しかない…ダメっ、ダメダメぇ、買わないでぇ。

2020.10.12
【シーン13】
 またかよ。
 某政治家の執務室では、毎日取っ替え引っ替えで男が出入りしている。
 今も書類を携え訪問すると、中から男の喘ぎ声が聞こえた。
「ああんっ、あん」
 男は顔を上気させ、机に突っ伏している。政治家はその下半身をがっちりと押さえ、腰を振る。
「ご苦労、そこに置いてくれれば良い。ところで君は明日、空いているか?」
 こうして僕もあそこで鳴かされることになった。
 そして、情報を漏洩させ政治家は失脚した。

2020.1013
【シーン14】
 チェックアウトが済み、ホテル内からお客様がほぼいなくなった。
 今、ベッドメイキングが終わった客室に副支配人がやって来た。
「今日も綺麗に清掃が完了したようですね、特別にご褒美を差し上げましょう。」
 ひっと、思わず声が漏れた。
 折角取り替えたシーツを、副支配人に乱され、自ら汚してしまう。
「君が可愛いから、清掃係から受付に推薦できないです。」
 奥深くを陵辱され、返事も出来なかった。

2020.10.14
昔話
【一】
 昔の話。って言っても俺が若いときの話だ…十分古いな。
 ウチの会社、社員寮があったんだ。けどさ、一人一部屋なんて今みたいに素敵な待遇じゃなかった。一部屋に二人だった。
 まあ、新入社員も年に30人はいたからな、部屋が足りなかったんだな。
 俺も同期と一緒の部屋で三年過ごした。
 四年目からは会社から住宅手当が出て、一人暮らしが出来る。
 それを楽しみに頑張っていた。
 同期だけど俺は営業で向こうは経理、社内で顔を合わせることはあまりなかった。
 梅雨が過ぎ夏を迎えた頃だ、同居人の様子がおかしくなった。同室だから自慰出来なくて溜まってるのかと「抜くの手伝おうか?」って、声掛けたんだ。
 「兜合わせってしてみたかったんだ。」なんて、言っちゃったんだ。事実、高校生の頃に教室で同級生と何度かしたからな。
 テレビでお笑い番組を流して、二人のチンコを握ると扱いた。二人ではぁはぁ言いながら出した。
 それから、時々声を掛けてみた。その度に同居人が嬉しそうに頷く。
 秋になった。
 食堂から戻って食後にコーヒーを飲もうと豆を挽き始めたときだった、同居人の腕が背後から俺を抱き締めてきた。
「そろそろ、次の段階に進まないか?」
 次の段階ってなんだよ?
 でも怖くて聞けなかった。

2020.10.15
【二】
 同居人の手は俺の胸を淫らに触ってきた。触られすぎて先端がチクチクするくらい擦られた。
「んんっ、痛い…やめて」
「その割には乳首が立ってる」
「そんな…違っ」
 冷たくてヌルッとした液体が塗られた。ヌルヌルして同居人の指が滑らかになった。
「痛くなくなった?」
「ん」
「気持ちイイ?」
「ん」
 勃った。チンコがビンビンに勃った。
「ご褒美」
 言うと同居人は俺の股間に顔を寄せた。
「なに…ん」
 チンコを咥えてしゃぶり始めた、フェラチオだな。
 そこで気付いた、同居人はゲイだったんだ。
 兜あわせの提案なんかしたから、俺もゲイだと勘違いされたんだ。
 四年目、住宅手当をもらって寮を出た。同居人も出た。

「んっ…ああっ…ひいっ…んんっ」
 そう、あの日からずっと、俺は毎晩鳴かされている、今も。
 二人で寮を出て一軒家を借り、それから一度も越していない。
「今夜も可愛い声で鳴くな。」
 同居人にすっかり飼い慣らされている。
「もっと、もっと中を擦って」
「望みのまま」
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。
「んんっ…ん…奥、突いて」
「なら、上に乗ってよ」
 体勢を入れ替え自ら腰を振る。
「ああんっ…深いっ」
 同居人は前社長の次男で現在副社長。
 因みに俺は取締役営業本部長。
 二人とも独身である。

2020.10.16
憧れの人
【一】
 27歳で課長になったのは、うちの会社では異例の出世だった。それが30歳で部長に昇進したとあっては異例中の異例だろう。
 蓋を開ければ何のことはない、誰よりも高い学歴であったのだ。
 しかし疑問はある。
 言っては何だが、うちの会社にどうしてあんな高学歴の人が入ってきたのか。

「安原くん、ちょっと良いかな?」
「はい!」
 僕の憧れである藤城(ふじしろ)部長から声を掛けられた。
 最近は結構頻繁だ。
「今夜、空いているかな?」
「はいっ!」
「なら、残業を手伝ってくれるか?」
「はい!パソコン入力ですか?計算ですか?」
 僕の特技を並べてみた。
「いや、社内報のレイアウトなんだが…」
 うちの会社は変わっていて、社内報を毎年部署ごとに交替で担当する。今年は我が営業部の担当だ。
「社内報なんて、僕たちに任せてください、部長のお手を煩わせるような案件ではありません。」
「しかし、今月は私の担当なんだ。だから安原くんに手伝ってもらおうかなと。」
「分かりました、レイアウトのお手伝いをさせていただきます。」
 僕は今か今かと終業時間を待った。

2020.10.23
【二】
「ぶ、部長…」
 部長が僕の股間に顔を埋め、ペニスをペロペロと舐めている。
「部長っ、気持ち良くなっちゃうから、やめてください」
「気持ちイイなら良いじゃないか。今夜の礼だ。」
 そう言うとパクリと咥えてじゅぶじゅぶ音を立ててしゃぶり始めた。
「あっ、ああっ」
 もう、理性が崩壊していた。
「安原くん、もう、いい加減に私に屈しないか?」
「く、屈する?」
「私のモノにならないか?」
 その途端、部長の指がケツ穴に滑り込んだ。
「痛っ」
 激痛が走る。
「すまん、焦りすぎた。」
 部長は指を引き抜いた。
「瑞樹(みずき)、俺のこと、忘れた?」
 え?
「藤城部長?」
「下の名前は知ってる?」
「藤城…由悠季(よしゆき)さんです。」
「本当に、忘れたんだね。」
 両頬を掌で包まれ、口付けられた。
「蒔田…俺の旧姓。」
 蒔田?まきたよしゆき…!?
「よしくん?え?でも…」
 子供の頃、いつも僕と遊んでくれた年上の幼馴染みはいつの間にか居なくなり、疎遠になった。
「俺の家、母親だけだったんだ。その母が再婚して藤城になった。それからは義父に褒めて欲しくて勉強ばかりした。そしていつの日か瑞樹を迎えに行くって決めてた。」
 え?僕?
「瑞樹を嫁にするって、約束しただろ?」
 え?え?えぇっ?!
 覚えてない!
 よしくんは大好きだったけど、結婚の約束なんてしただろうか?
「忘れてても良い、これから愛を育もう?」
「ちょっ、よしくん、待ってよ。僕には結婚の約束をした娘が居るんだけど。」
 途端に藤城部長の目つきが変化した。
「なら、何が何でも思い出して貰わないといけないな。」
 言うが早いか、僕はズボンを脱がされていた。

2020.10.24
【三】
「あっ、んっ」
「気持ちイイ?」
「ん、気持ち…イ」
 僕は時間を掛けて部長に懐柔された。
 お陰ですっかり男同士のセックスで気持ち良くなっていた。
「瑞樹ん中、どんどん俺の形に馴染んでいく…気持ちイイ」 
 その一言で、全てを思い出した。
 そうだ、子供の頃、僕たちはいつも互いのペニスを弄っていた。
 それが将来の約束だったのだ。
「あんっ…よしくん…誕生日っ」
「うん、明日は俺の誕生日だ」
「僕を、貰って」
 遂に、言ってしまった。
「僕には、よしくんが、必要なんだ。」
「藤城瑞樹。良い名前だ。」
 彼女にも別れを告げた。
 僕は憧れの人と家庭を築くんだ。

 因みに。
 藤城由悠季は、社長の一人娘の一人息子、つまり唯一の跡取りである。

2020.10.25
追い掛けて
 僕の好きなアイドルがデビューして三年。
 もう三年間も追っ掛けしているのか…。
 でも、あの男(ひと)も僕と同じようにデビュー当時から会場で見掛ける。
 仲良くなれたら、一緒に追っ掛けが出来るんだけどな、なかなか声が掛けられない。
 来週もコンサートがある。また、会場で会えるかな。

「あの、」
 突然、その男は声を掛けてきた。
「いつも会場で見掛けるので、お仲間かな?って。ファンですよね?誰かの付き添いじゃないですよね?」
 付き添い?そんなパターンもあるのか!
「違います、純粋にMNTのファンです。」
「良かった、お仲間がいて。」
「はい」
 嬉しい、ファン仲間が出来た。

「あっ、あんっ」
 おかしい。あれから何度か二人で会った。
 けど。
 「ごめんなさい、アナタが好きなんです。」と言われ、押し倒された。
 メンバーより、僕のことを好きになったらしい。
 追っ掛けしてたら彼氏が出来た。

2020.10.26
先輩
【一】
「僕はさ、○年の5月な訳よ」
「なら、俺の方が先だ、○年の4月20日だから。お前はゴールデンウィーク明けってことだろ?」
「まぁ、そう、だな」
「先輩って、呼んでみろ」
「やだ」
「生意気だなぁ」
 互いにそんなことはどうでもいいと思っている。
 ただ、周囲が喜ぶからその話題を振っているだけだ。
「でも、二十日くらいだったら同期で良いんじゃないですか?」
「いいや、中途採用は上下関係が厳しいんだ。君達正規入社とは訳が違う。」
 別に何の違いもない。ただ周囲が喜ぶだけだ。
「去年も一昨年も井田先輩の方が営業成績良いんだから、井田先輩でいいんじゃないですか?」
 いや、そういうものでもないんだ。
「宇野先輩も2位ですからね、大差はないですよ。」
 周囲が飽きる前に、この話は締めくくらなくてはならない。
「なら、どちらがモテるかで決めたらどうですか?」
 なに?
「待て、それは今のご時世、セクハラになるぞ」
「そうかぁ、なら無記名投票にしますか?」
「それが良い。なら明朝から投票箱をタイムカードの横に置いておきます。井田先輩がいい人は赤い玉、宇野先輩がいい人は青い玉を入れておいてくださーい」
 ヤバっ。面倒なことになったぞ。

2020.10.27
【二】
「ほら、言ったじゃないか。いつまでも同じ話題を振るからこうなるんだ。」
 宇野はスーツをハンガーに掛けると、ファ○リーズをシューシューと吹きかけている。
「ほら、早く脱ぐ。スーツがクサくなる。」
「うん」
 モタモタとスラックスを脚から外す。
「シャツも脱ぐ!」
「はい」
 肌着とパンツと靴下という、間男のような格好になってしまった。
「それは…風呂場で脱げ」
「純、怒ってる?」
「別に、怒ってなんかいない、呆れているだけだ。」
 宇野純介は、俺から遅れること二十日して入社してきたが、実は同じ日に面接は受けていた。
 引っ越し先にトラブルがあり遅れたのだ。
「靴下は籠に入れて、色落ちする可能性があるから。肌着とパンツはそのまま洗濯機に放り込んでも良い」
 バスタブには既に湯が張ってある。
「純?」
「智は、人が良すぎる」
「ごめん」
 言って口付ける。
「あの時だって…」
 そう、純が引っ越しトラブルに遭ったのは、同じ部屋を違う不動産屋に契約されていたのだ。ダブルブッキングである。
 その相手が、俺だった。
 「このまま一緒に住む?次が決まるまで?」と、提案してはや三年。今も一緒に住んでいる。
「あっ、智っ、中、お湯が…」
 部屋に戻ると直ぐにトイレで浣腸を使っていたのは知っている。だから、バスルームで中を綺麗にしてやっているんだ。
「大丈夫、綺麗になった。」
 湯を掻き出す振りをして指を出し入れする。
「ダメ、待って」
 俺は宇野純介に一目惚れした。だからダブルブッキングしたときは是幸と誘ったのだ。その日の夜には口説いていた。「井田…智春…だっけ?」「ともでいいよ、じゅん」そのまま、押し倒した。
「ともっ…やっ…中、んっ…」
「もっと、掻き回して欲しい?」
「違っ…ぐりゅぐりゅじゃなくて、ずんずんして」
 ほんと、可愛い。
「純の方がモテたら、嫉妬で死ぬ」
「智のがモテてたら、僕が捨てられるの?それ、ヤダ。智、好き。」
 純は、俺が好きなのか、俺とのセックスが好きなのか、それとも俺のチンコが好きなのか、分かってるのかな?
 仕方ない、毎日毎日、気持ち良くしてやるよ。

2020.10.28
【三】
 一週間後。投票結果が出た。
「は?ゼロ?」
「誰も興味が無いらしい…って言うか、お前ら付き合ってるだろ?」
 え?
「何言って…」
「いいか?見てろ。」
 言うといきなり抱き寄せられた。
「宇野が飛んでくるぞ」
「井田!昨日の…」
 バカ!純、反応早すぎ。
「ほら。逆もそうだ。」
「何やってんだ?お前ら」
 純の手が俺の身体を引きはがす。
「A社、落とせそうだ」
 イチャイチャしている(?)俺らにそう言うと、さっさと営業に出掛けて行った。
「お前の目は節穴だな」
 A社は営業部全員が狙っていた獲物だ。
「今月は、僕がトップを取る」
 戸口で振り返りざま、微笑んだ。
 …今すぐ犯したいくらい、可愛い。
 女性社員が、青い玉を持って駆け寄った。

2020.10.29
クリスマス2020
「じゃ、な。」
「うん、また」
 俺達は同時にスマホの通話を切った。
「はぁ〜っ」
 大きく溜息をつく。
 関東と関西。今までなら二時間で会える距離だった。
 なのに!
 今年に入ってから新型コロナウィルスのせいで、往来が禁止となった。
 Go toトラベルで一度だけ会いに行ったけど、それきり。
「会いてぇなぁ。」
 毎回、テレビ電話を切る度に呟いていて、完全に口癖になっている。

2020.12.22
 
 俺達が付き合い始めたのは、新入社員研修の後すぐだ。
 互いにほぼ一目惚れ。
 向こうが猛烈にアピールしてきた。
「八馬上(やまかみ)くんって、僕のこと好きだよね?」
 初日の晩飯中にいきなり言われて、危なく口の中の物をぶちまけるところだった。
「僕も八馬上くんのことが好き。お試しで良いから付き合わない?」
「付き合うったって…」
「そうだよね、八馬上くんは配属先が関西なんだよね…僕は関東なんだ。」
 ウチの会社は変わっていて、内定と一緒に勤務先の地域を知らせてくれる。
 大抵、実家から通えるように配属しているらしい。
 入社して三年が経過すると、成績が優秀だと本社勤務になれる。所謂出世街道を行くことになる。
 しかし、この時移動がないと、営業から外されて定年まで出世は見込めない。
 出世は本社だけとは限らない。
 地方の営業所でも課長に昇進したりする場合もある。
「三年頑張って、同棲しようね」
 こいつ…山信田(やました)は、初日にそうのたまわった。

2020.12.23
「んっ…あぁっ…八馬上…そう、そうっ…んっ」
 身体を繋いだのも早かった。
 研修が終わって配属先に散らばり、ゴールデンウィークには山信田が大阪まで来た。
「会いたかった」
「うん」
「ホテル、行こう?」
 山信田は予約しているホテルへ俺を連れて行くと、部屋に入るなり抱きついてきた。
「離れている間に、凄く好きになっちゃったよ。」
 そう言うと俺の唇を塞いだ。
「爽って呼んでもいい?僕は、」
「創二カ(そうじろう)」
「嬉しい」
 今度は俺から口を吸った。
「んっ…」
 くちゅくちゅと、室内に水音だけが響く。
「欲しい、爽が、欲しい。」
 短期間で燃え上がった恋は、導火線が短い。

2020.12.24
 創二カは、いつも嬉しそうだ。
 月に一回は会って身体を?いだ。
 そうして今年の春、秋の人事異動について話があった。
「創二カは?」
「爽は?」
「名古屋」
「え?僕も。」
 そう、晴れて俺達は今秋には同棲する予定だった。
 自宅での仕事が続いた。異動の予定も白紙だ。
 会えない時間が増えると、恋しい気持ちも増すが、不安も増す。
「創二郎はいつも嬉しそうだな」
 テレビ電話に向かって皮肉を言った。
「どうして?だって僕は爽が初めての人だから。いつか爽が僕から離れてしまったら、楽しかった思い出だけ抱いていたいから。」
 創二郎の前向きな言葉に、衝撃を受けた自分に嫌気がさした。
「今度会えたら…」
 思いっきり抱きしめて、愛を誓うよ。
「今年の寂しいクリスマスを埋められるくらい、愛し合おうな。」
 創二郎はやっぱり嬉しそうに笑った。


2020.12.25