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短編集2021
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兄が出来ました |
【一】 |
父が再婚した。
義母とは昔、家が隣同士だったらしく母のことも知っていて気心がしれているとか。
義兄がいるのだが、果たして上手くやっていけるだろうか。
「せ、せせせせっ」
言葉にならない。
「可愛い弟が出来て嬉しいよ、鮫川(さめかわ)。あ!純也(じゅんや)って呼ばなきゃいけないな。」
何がなんだか。
担任の先生が家にいるってことは、義母は先生のお母さん?
「もしかして純也は俺のこと覚えていないのか?残念だ。俺は覚えているのに。ま、まだ赤ん坊だったからなぁ。」
先生、一人で話を進めないでください。
「再婚するのは母であって、俺は既に成人しているからこのまま父方の姓でいるんだけど、気にするな。それと一人暮らししているからそこも気にしなくていいぞ。」
僕は気にする!
「つ、つまり!先生は何も変わらないけど僕には義兄ができたってことなんですね?」
「ナ・オ・キ。呼んでみ?」
「先生を直輝なんて…お兄さんでいいですか?」
「純也の好きにしていいよ。」
父と義母は今夜、義母の家の片付けを兼ねて向こうに泊まる。
「寂しいだろうからと派遣された。」
先生…お兄さんはそう言うといきなり右手を僕の顎に掛けるとクイッと器用に上向かされた。
「?」
何をされるとか何があったとかそんなこと考える暇もなく、キスされた。しかも舌を入れられた。
「!!!」
慌てて先生…お兄さんの胸を押し返した。
「な、ななな、何すん…」
「据え膳食わぬはなんとやら…」
2021.01.20 |
【二】 |
言い終える前に先生の肩に担がれ、ソファの上に落とされると制服のズボンを手早く脱がされた。
「だからっ!なに…んっ」
また唇を塞がれる。
「純也、愛してるよ」
パンツも脱がされ、ケツ穴を穿られた。
「やめろー、止めてくれ…お願…い」
頬を涙が伝う。
「…残念。お預けか。折角のチャンスだったのにな。」
僕は急いでパンツを拾い上げると足を突っ込んだ。
「た、た、た、担任の先生が、何すんですか!」
「今は一人の男。好きな人を前にしたら抑えられない。」
…え?
「ずっと、純也って呼びたかった。」
再び先生…お兄さんの手が伸びてきた。
「だから、ヤらせて?」
「あ、で、でも…」
「純也も、オレのこと、好きだよね?」
…何故?何故にバレた?
「必ず学校で目が合う」
そーなんだよ、バレると思ったんだよ、なのに見ちゃうんだよ。
「だから、しよ?」
「先生なのに?本当に平気?」
「先生だって性欲はある。」
そーゆー事じゃない!…けど…嬉しい。
「な、な、直輝…」
俗に言う消え入るような声である。
「ん?」
「好き」
お兄さんになった担任の先生である直輝は、僕に散々被虐的な扱いをして、翌朝自分のマンションにとっとと帰って行った。
「はーい、全員注もーく!」
学校に着くと教室には既に直輝がいた。
「先生、結婚が決まりました。なので今年からバレンタインチョコは要りません。誕生日プレゼントも要りません。先生は愛する人に一筋の健気な人間です。」
言うと、僕を見た。
「わかったか?純也。」
え?ええっ!
学校で名前を呼ぶなよ…昨夜のこと思い出して赤面する。
「先生!奥さんとした?」
「当たり前だろ?新婚だからな。」
その度に僕を見るな!
「奥さん、美人?」
「超絶」
「写真ある?」
「あ…」
待て、待て待て待て!
「あーーー!体操着忘れた!」
とりあえず叫んでみる。
「ちょっ、学校ですんなよ」
クラスメートは全員、体育に行った。
僕だけ体操着が無いから(本当はあるけど)、教室で担任監視のもと、課題をやっている…はずなのだが…。
「声、聞こえちゃうよ?隣のクラスに?」
「で…も、んっ」
唇を塞がれ、興奮したモノを扱かれ、声を出すなと言う方が無理だ。
「や…気持ちい…」
「覚えたての性行為は興奮するだろ?」
「違っ」
アンタだからだよっ!
「出して、いいよ?」
そう言うと先生…直輝はフェラチオを始めた。
「やめ…ホント…出ちゃ…イクっ」
直輝の喉仏が上下に動く。
「可愛い、可愛いよ、純也。今夜も一杯してあげるからね。」
こいつ…調子に乗ってる…。
でもそれを嫌がっていない僕もいる。
父はいつ帰ってくるんだ?!
2021.01.21 完 |
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社員寮 |
【一】 |
それは、昭和の終わり頃のこと。
地方から東京に配属となった男性は、大抵社員寮に入った。
その会社は2DKが10部屋あるアパートを一棟借りて、一室を管理人室として夜の賄いもしていた。
ただし、一室に二人が住む、2DKの一部屋に一人という部屋割。
昭和の終わり頃はまだ、ワンルームは希少だったのだ。
当然、ルームメートという形で生活することとなるのだが…。
入社して3ヶ月。
マサオは本社でトシヤは営業所と配属先は違うが勤務先は同じビル。
ルームメートとして、ぎこちなさはなくなって…。
クチュクチュと水音がする。
「んっ」
「ふっ」
互いの唇から吐息が漏れる。
「気持ちい…」
言った途端、マサオは吐精した。
「マサ…もう少しで…」
マサオは指を少し緩めて動きを早めた。
「あっ、あっ、イクっ」
ドクンっ
トシヤも吐精した。
二人は時々こうして互いのモノを握って抜いてやる。
切っ掛けはマサオが隠し持っていたアダルトビデオだった。
ビデオはあるが、再生するものがなかったのだ。
トシヤはビデオデッキを持っていた。
二人の利害が一致した。
最初は一人ずつ観ていたがそのうち一緒のほうがいいとなり、他人の手のほうが気持ちいいとなった。
今では行為中に気持ちが昂りすぎてキスまでしてしまう。
「オレら、平気かな?」
なんて不安をいだきながら。
2021.01.22 |
【二】 |
二人の不安が形を成したのは、社員旅行。
マサオの総務部総務課とトシヤの営業所が一緒に社員旅行へ行ったのだ。
男ばかり8人でエロトークに発展し、遂には男同士でもセックスはできるという話に至った。
「誰かハンドクリーム持ってないか?」
トシヤの先輩社員が言い出した。
「ハンドクリームをケツの穴に塗り込めば良いんだ、よく滑る。その代わり…女とは出来なくなるけどな。」
「ああっ」
ズブズブとマサオの竿をトシヤの穴が飲み込んでいく。
「す、スゲー」
「熱い、マサ…熱い」
「気持ちい…サイコー。動いていい?」
社員旅行で感化された二人は、部屋に戻ると実行に移した。
「んんっ、マサ…マサ…」
マサオの先端が、当たった。
「ああっ」
上半身が跳ね上がった。
「ああっ…あんっ…すご…気持ちい…い」
トシヤは腰を振ってマサオを誘う。
この日から二人は身体を繋ぐようになった。
2021.01.23 |
【三】 |
「ん…マサオ…」
会社の地下。
普段はあまり人の来ない会議室。
マサオとトシヤは隠れて身体を繋ぐ。
「マサオ、もっと、もっと欲しい」
夜だけでは足りなく、常に強請る。
「深いっ」
トシヤが日に日にヤラシイ言葉も平気で使うようになった。
「奥まで…来てっ」
マサオはグイと身体を進める。
「ああっ」
トシヤが喘ぐ。
「も、壊れる…」
遂にトシヤはナカイキを覚えた。
2021.01.24 |
【四】 |
トシヤの営業成績がすこぶる良い。
マサオにも言っていないが枕営業と言う奴だ。
昼間から脚を開く。
どんどん新規開発も達成し、最年少営業副所長にまで昇進した。
「トシヤ、二人で寮を出ないか?」
マサオが持ち掛ける。
「いいね」
今より広い部屋だけど寝室は一つ。
そんな生活は長続きしなかった。
トシヤは枕営業で夜遅くなり、マサオとの性生活も疎かになった。
「飽きた?」
マサオが縋る。
「今は、仕事が大事なんだ」
2021.01.25 |
【五】 |
誰も居なくなった社員寮。
時代の流れで、二人一部屋が敬遠され、ワンルームを都度借りるようになった。
「長い間、ありがとうございました」
マサオは管理人に礼を言った。
今一度、振り返る。
トシヤは今、営業本部で本部長の片腕として忙しくしている。
マサオは相変わらず総務部総務課にいる。課長になっていた。
「なくなるんだな、ここ。」
「トシヤ…」
マサオの背後にトシヤがいた。
「会社、辞めてきた。」
「え?」
「分不相応だったんだ。田舎に帰って田んぼを耕すよ。」
「待って。トシヤの家、跡継ぎいないのか?」
「全員逃げ出した。」
「…なら、雇ってくれないか?トシヤの隣に、いたい。」
「3食セックス付きで。」
「願ったり叶ったりだ。」
マサオがトシヤを抱きしめた。
「次の社員寮は狭い上に、期限なしの終身雇用だぞ?」
マサオの腕に力が入った。
2021.01.26 完 |
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窓 |
毎朝、通学路の途中にある豪邸の窓から、寂しそうな瞳の青年が外を見ている。
年の頃は二十歳前後。
准(じゅん)はそれを、目の端に留めながらも特に何か思うでもなく、日々淡々と通り過ぎていた。
今朝も遅刻ギリギリで高校の門を潜った。
ギリギリでも間に合っているのだから文句は言わせない、そんな風に思っていた少年だった。
時は過ぎ、准は高校を卒業し、就職した。
配属先は高卒ではあり得ない場所だった。
「社長室付?」
「いずれは社長の第二秘書として活躍して欲しい。これは社長直々の決定事項だから、変更はない。」
そして准は研修後に社長宅へ向かった。
「あ」
高校時代、毎朝通った道、豪邸の前だった。
ふと、目をあげると今朝もあの窓から視線を感じた。あの、寂しそうな瞳の青年は、やはりそこに居た。
「君には、いずれ私の代わりに表舞台に立って欲しい」
寂しそうな瞳の青年が、社長だった。
「私は、生まれつき身体が弱くて表に出られない。祖父が残してくれた会社を名前だけ継いでいるが、実務は全て専務が担ってくれている。…それが、悔しくてならない。だから、が大人になるのを待っていた。」
青年が、窓から離れた。
「私を、助けて欲しい」
一歩、歩み寄る。
「公私、共に」
十年後、准の姿が社長室にあった。
「はい、その案件については青柳から指示を仰いでおります。」
電話を切ると、准は部屋の中央に位置するソファに座る青年を見た。
「私を選んでくれてありがとうございます。」
青年の指が准の頬に触れた。
「こちらこそ、期待以上の出来だ。」
准の唇が、青年の唇に触れた。
「公私共に、貴方に捧げましたので。」
二人の影が、ソファにくずおれた。
2021.05.25 |
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戦隊ヒーロー |
【一】 |
「愛と平和のために、僕らは戦う!」
小さい頃から憧れていた、戦隊ヒーローに今、僕はなっている。
と言っても、イベント専門だけど。
デパートの屋上やお祭りで戦隊ヒーローの仮面を被ってポーズをとっている。
本物のヒーローになりたい。
2021.08.28 |
【二】 |
夢が、叶った。
しかし、その道は険しい…というよりは辛かった。
ある日、いつものデパートの屋上でポーズを決めたあと、楽屋に一人の男性が現れた。
「君の所の社長からね、有望な子がいると、連絡をもらったんだ。」
一応、僕も芸能プロダクションに所属している。数多のヒーロー俳優を排出しているプロダクションだ。
「これからテストをしたいんだけど、一緒に来られるかな?」
僕は社長が言うなら平気だろうと、あとを着いていった。
2021.08.29 |
【三】 |
「んんっ…やめ…て」
なんでだ?なんでこんなことに?
厳つい男に壁ドンにキスされている。
「いいね、すごくそそるね」
男は僕が必死で抵抗してもびくともしない強者だった。
ねじ伏せられ、押し倒され、裸に剥かれ、喘がされた。
「や…ムリ…ん」
抵抗していたのは最初だけで、直ぐに気持ちよくなってしまった。
「いいね、可愛いね、これならイケそうだ。」
何が可愛いのだろうか?
2021.08.30 |
【四】 |
ケツの穴をグリグリと弄られて、散々弄ばれた感があるが、男が上から降りたので終わったのだろう。
僕は帰ろうと起き上がると、勝手にドアが開いた。
「川井くんの紹介だから上玉だね。」
ドアを開きながら入ってきたのは、物凄いイケオジだった。
思わず僕も見とれるほどだった。
しかし、見とれていたのも束の間、イケオジはいきなりズボンの前を開けると、逸物を取り出した。
「咥えろ」
2021.08.31 |
【五】 |
え?
「フェラチオはしてもらうと気持ちいいぞ」
知ってます。
「俺のはでかいからな、お前のその小さい口に入りきるかな?」
ニヤニヤと下卑た笑いを口元に浮かべる。
そういうことか。昔から聞く話か。
なら、僕はヒーローになれるんだな。
思い切り大きく口を開けて、イケオジのチンコを咥えると、じゅぶじゅぶと音を立てて吸って、舌を這わせて裏スジを舐めた。
「おおっ、お前、いいな、いいぞ。」
イケオジが、呻いた。
2021.09.01 |
【六】 |
「出そうだ、出るっ」
親父の癖に早いな。
僕は溢さないように飲み下した。
「今度は下の口で咥えてくれ」
やっぱりな。
怖いけど、仕方ない。
ゆっくりと脚を開くと、イケオジはイソイソと身体を潜り込ませてきた。
「さっきの男が準備してくれたから、痛くないからな?」
こういう顔を破廉恥な顔って言うんだろうな。鼻の下が伸びきっていて、涎を垂らしそうな口元で、僕のチンコを握りしめてユルユルと扱いている。
2021.09.02 |
【七】 |
「ん、」
「可愛いな、うん、可愛い」
途端にイケオジのチンコが僕のケツ穴目掛けて突進した。
「キツいな」
当たり前だ、処女だからな。
「や、苦し…」
「そうだな、ちょっと待て、今奥に…んっ、入った」
恐る恐る、僕は自分がどんな体勢なのか、目を開けて見てみた。
2021.09.03 |
【八】 |
部屋には、鏡があったのか。気付かなかったな、趣味悪い。
イケオジに組み敷かれて揺さぶられている自分が映っていた。
僕を迎えに来た男が、僕の乳首を撫でたり摘まんだりしている。
「やぁ、乳首、弄んないでぇ」
「気持ちいいだろう?ん?」
イケオジは動きが早くなった。
「うっ、イク」
呻くと、僕の中に出した。
2021.09.04 |
【九】 |
僕は家に帰された。
その日から1ヶ月、毎日そのマンションに連れてこられては犯された。
そして、最後の日に「君は合格だ」と、言われた。
2021.09.05 |
【十】 |
「社長、イイッ」
僕はまだ、イケオジに抱かれている。
お陰で仕事が途切れない。
「マサキ、いっそのこと、嫁になれ」
「うん。なる。なるから、止めないでぇ」
2021.09.05 完 |
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雨 |
【一】 |
あの日、突然雨が降ってきたんだ。
それが全ての始まりだった。
大学の卒業式を終えた翌日、僕たちは就職が決まっていた会社、田仲食品株式会社の研修に来ていた。
その名の通り、スーパーマーケットだ。
ここで経営の方の業務に就く。
昨年、創業者一家が手放したスーパーマーケットで、現在の経営者、つまり僕たちの会社の会長が買い取り、今の社長が経営を任されている。
会長は自分で経営をするのではなく、誰かに任せて自分は利益だけを受けとるという仕組みだ。
今の経営陣は本社にいる。僕たちは地方要員と決まっている。
店長とは違う、支所勤務だ。と、さっきの研修の時に言っていた。
2021.09.21 |
【二】 |
一日目の研修が終わり、本社の会議室を出て駅に向かっていた。
明日も朝早くから研修だ。
あと少しで駅に着くというところで、突然雨が降ってきた。
目の前にコンビニがあったので慌てて飛び込む。
丁度喉が渇いていたので良かった。ペットボトルのお茶を手に取り、ビニール傘に手を伸ばしたとき、気付いた。
ない。
コンビニの中にビニール傘がない。
突然の雨で一気に売り切れたのだ。
普段から雨が降ったらコンビニで調達していたので、アパートの部屋にはビニール傘が山程ある。
それを持って出ればいいのだが、いつも忘れる。そんな人が多いのだろう。
仕方なくお茶だけ買い、店を後にした。
店先で空を見上げる。
まだ、降っている。
2021.09.22 |
【三】 |
その時、店内から聞き覚えのある声がした。
「宮本?」
振り返るとそこには大学の同期がいた。
「清水じゃんか。どうしたんだ?こんなところで。」
「こんなところでって、会社の研修。」
「へー、奇遇だな、僕も…え?」
清水の手には、僕が持っているものと同じ袋があった。
「田仲食品?」
「ああ。」
「知らなかった…僕たち同じ会社に就職したんだ。」
「俺は違うんだ…会長が親父だから。縁故入社。」
なに?そういえば会長の名前は清水だった。社名は前の経営者のままなのか。
「宮本、傘ないのか?駅までなら入れよ。」
清水は大きな折りたたみ傘を開いた。
「あ、ありがと…って、会長のご子息なのに、すまん。」
「何いってんだよ。ばーか。」
清水は僕の肩を抱くようにして、傘に入れてくれた。
「宮本、俺さぁ…大学の時に言えないことがあってさ…」
2021.09.23 |
【四】 |
「あ…宮本…もっと…奥…」
何故か僕は、清水と爛れた関係を築いていた。
「宮本が、好きなんだ」
ん?
「宮本って、ゲイだろ?」
なんで知ってるんだ?
「宮本が、地方に行かなくてもいいようにしてやるからさ、付き合ってよ。」
地方に行かなくてもいい?本当に?
「いや、地方云々はどうでもいいよ、僕も清水なら、付き合ってもいい。」
こうして、僕たちは雪崩れるようにして爛れた。
2021.09.24 |
【五】 |
会長室は、清水のためにあったのだ。
大きなソファで、朝といい昼といい僕は連れ込まれると、突っ込まされる。
「宮本…あん…」
なんとも気持ち良さそうに喘いでいる。
2021.09.25 完 |
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