レベル7
第六話  プラスマイナスゼロ
 僚摩がせっせと晩ご飯の支度をしていると、拓真は風呂の準備を始める。
 なんだかんだと二人はきっちり役割分担をしていた。
「やっぱり晩ご飯は僚摩と一緒がいいな。」
 拓真がまた駄々っ子のようなことを言い出す。
「ごめん、毎日はムリだ。例え院を修了したあとでも、週に三日は帰りが遅くなる。」
 拓真は両手をギュッと握りしめ、唇をへの字に歪め、顔を真っ赤にして震えている。
 でも文句は言わずに黙って頷いた。
「俺だっていつまでもぺーぺーじゃないんだぜ。独り立ちしたら否が応でも残業とかがある。」
「いつか、」
 僚摩が口を開く。
 拓真はそれに耳を傾ける。
「僕が拓真を養ってやれるくらい、稼いでやるから。」
 腕を伸ばして拓真を抱き締めようとした…とき、
パシッ
と、その腕が払われた。
「俺は僚摩を嫁にもらったつもりなんだぜ、養うのは俺だろ?…突っ込むのも俺だし…」
 すると、僚摩が不敵に笑った。
「近日中に拓真をオンナにしてやるよ?乞うご期待。」
「な…」
 以降、拓真はすっかり無口になってしまった。
 いつ、オンナにされるのか怖がっている…と言うより逆に期待しているようだ。
 帰宅して僚摩が家にいないとガッカリする。
 思わず晩ご飯を作って待っていようかと思ってしまう。
 ―待てよ。作ればいいんじゃないか。待っていれば、気持ちが伝わるかも―
 夜。12時30分。
「拓真…」
とつぶやいた後、大笑いをした。
「なんだよ、僕が何かする前に自分からオンナになったのかよ」
 はっ!
と、拓真は気付いた。
 遅かったが。
「…飯食ったら風呂入って寝ろ!」
 拓真は照れ隠しにぞんざいな口をきいた。
「期待していいみたいだな。」
 僚摩は呟いた。