僚摩がせっせと晩ご飯の支度をしていると、拓真は風呂の準備を始める。
なんだかんだと二人はきっちり役割分担をしていた。
「やっぱり晩ご飯は僚摩と一緒がいいな。」
拓真がまた駄々っ子のようなことを言い出す。
「ごめん、毎日はムリだ。例え院を修了したあとでも、週に三日は帰りが遅くなる。」
拓真は両手をギュッと握りしめ、唇をへの字に歪め、顔を真っ赤にして震えている。
でも文句は言わずに黙って頷いた。
「俺だっていつまでもぺーぺーじゃないんだぜ。独り立ちしたら否が応でも残業とかがある。」
「いつか、」
僚摩が口を開く。
拓真はそれに耳を傾ける。
「僕が拓真を養ってやれるくらい、稼いでやるから。」
腕を伸ばして拓真を抱き締めようとした…とき、
パシッ
と、その腕が払われた。
「俺は僚摩を嫁にもらったつもりなんだぜ、養うのは俺だろ?…突っ込むのも俺だし…」
すると、僚摩が不敵に笑った。
「近日中に拓真をオンナにしてやるよ?乞うご期待。」
「な…」
以降、拓真はすっかり無口になってしまった。
いつ、オンナにされるのか怖がっている…と言うより逆に期待しているようだ。
帰宅して僚摩が家にいないとガッカリする。
思わず晩ご飯を作って待っていようかと思ってしまう。
―待てよ。作ればいいんじゃないか。待っていれば、気持ちが伝わるかも―
夜。12時30分。
「拓真…」
とつぶやいた後、大笑いをした。
「なんだよ、僕が何かする前に自分からオンナになったのかよ」
はっ!
と、拓真は気付いた。
遅かったが。
「…飯食ったら風呂入って寝ろ!」
拓真は照れ隠しにぞんざいな口をきいた。
「期待していいみたいだな。」
僚摩は呟いた。
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