| いそいそと僚摩の帰りを待つ行為に対して花嫁修業であることを指摘された拓真はそれから男らしくあることを常に念頭に置いて行動するようにした。 「だいたいこの間、将来が不安だって泣いてたヤツがどうやって俺を養うって言うんだ?あいつんちだって親がいるのに…」
 拓真の心にいつも引っかかるのは互いに一人っ子だという事実。
 ―親不孝…だよな―
 それだけが気掛かり。
 そんな事を考えながら『男の手料理』なる本を開いて晩ご飯の調理中…。
 「今日も遅いんだよなぁ、りょーま…」
 
 
 「今日は早く帰る。」
 僚摩は相変わらず朝はバタバタと出掛けていくが、予定だけはきちんと伝えていく。
 「晩飯、作るよ。」
 そう言って拓真の唇にキスを落として出掛けていった。
 拓真はテーブルに顔をうつ伏せて小さくため息をついた。
 「確かにあいつの方が旦那だな…」
 なんかズレてる…。
 しかも耳が真っ赤。
 
 
 「僚摩」
 「ん?」
 「お前、なんかやばいことヤってるんじゃないだろうな?」
 「…」
 僚摩は布団の中で腹這いになって拓真の脚に自分の脚を絡めながら枕に頬杖をついていたが目だけで拓真を見た。無言だ。
 「なんだよ?図星なのか?」
 「拓真とセックスするのはやばいことに入るのか考えてた。」
 ニヤリ
 不敵に笑う。
 「…それは、別。」
 「じゃあないな。」
 「学校の備品、横に流してないか?」
 「どんなルートがあるのかさえ知らないよ。つーかさ、拓真は僕がずっと猫被ってたと思ってるのか?小心者…これが僕の本性だから。」
 拓真は頭を巡らせた。確かに小学校、中学校での僚摩は目立たないし無口だし友達も少なかった。
 「じゃあ何してんだよ。」
 「家庭教師。」
 拓真の心臓が跳ねた。
 「・・・ヤダ」
 「言うと思った。安心しろよ、男女の双子をいっぺんに見てるから何も無いよ。」
 「でも・・・」
 「信じてくれ。僕は・・・その・・・お前だけだから。」
 今度は僚摩の耳が真っ赤。
 
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