「なんだ、拓真は僕に抱かれたいと思ってたんだ?」
僚摩の顔が近づいてきた。
両腕でがっちり抱き締められ、下着の中に手が入ってきて…
「うわっ!」
拓真は慌てて飛び起きた。
「…どーしたんだ?怖い夢でも見たのか?」
寝ぼけ眼で夢うつつな僚摩が声を掛けてきた。
「うん、まあ。」
言葉を濁して布団に潜る。
時刻は午前二時、丑三つ時。
ーそーだよ、抱き締められてるのに下着の中に手を突っ込まれるのは変だよー
わけの分からないところに疑問を抱きながら目を閉じた。
しかし頭が冴えてしまって眠れない。
最近、僚摩の言うことが一つ一つ引っかかってしまう。
ーオンナにしてやろうかってことは僚摩も俺のこと、俺が僚摩を好きなのと同じように好きだって解釈していいのか?ー
もんもんと考え事をしていると更に目が冴えてしまった。
明日は仕事だ、なんとしても寝なければ…と焦るほど寝付けない。
ー僚摩のイヤらしい姿を想像したら眠れるかもー
浅はかな考えの下、拓真は更にどつぼにはまっていった。
「なんだ?夕べ眠れなかったか?目が赤いぞ?」
朝食の準備をしていた僚摩が拓真の顔をのぞき込む。その動作にもドキドキして思わず後ずさってしまった。
「なんだ、ヤらしい夢、見たんだ」
僚摩がニヤリと笑った。
「そんなんじゃない!」
「ヤりたいなら言えばいいのに」
拓真の言葉に、わざとかぶせるように呟いた。
「え」
拓真はやっと気付いた。
拓真から告白して始まった関係だけど、僚摩もちゃんと好きでいてくれるという、実感。
「僚摩!」
拓真は僚摩の鼻先に人差し指を突きだして宣言した。
「今夜は僚摩と寝る!」
「…悪い、今日は帰りが遅い」
「何!許さん!」
まだまだすれ違いの二人です。
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