「本当に遅いんだな…」
一人でリビングにいても退屈だし、かと言ってテレビを点けてもバラエティー番組は笑いのツボが違うらしくちっとも笑えない。
読み差しの文庫本を開いてもただ文字を追っているだけで何も頭に入ってこない。
何度も壁掛け時計を見上げた。
…僚摩はなんで大学院になんか行こうと思ったんだろう?…そんな考えが過ぎった。
しかしいくら考えても答えは出なかった。
拓真は僚摩が今までどんな事を思ったり感じたりして生きてきたのか知らなかった。
軽くショックを受けながらも睡魔に襲われリビングのソファで寝てしまった…。
「っしょっ…おもっ!」
僚摩は拓真を背中に背負い上げ、寝室に移動した。
ダイニングテーブルには佃煮とおにぎりが置いてあった。
「遅くなるっていうのは先に寝てろってことなんだけな…」
僚摩にも拓真の気持ちが理解できなくはなかった。
しかし拓真は社会人だから平日は規則正しく生活して欲しいのだ。
その代わり、日曜日は何が何でも拓真のために空けておこうと日々努力している。
ダイニングに戻ると拓真が用意してくれたおにぎりを手に取る。一口頬張るとパラパラと崩れた。握りがあまいのだ。
それでもその気持ちが嬉しかった。
「なんで布団にいるんだ?」
惚けた頭で考えるが分からない。
キッチンから良い匂いがする。
急いで洗面所に向かった。
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