「ただいま」
予定より早い時間に僚摩が帰ってきた。事前にメールで予告されていたのだが。
「お帰り」
以前僚摩がからかったが、本当に今の拓真は新妻のようだ。
うきうきと菜箸を片手に玄関先に現れた。
「最近、料理が上手くなったと思うんだ」
NHK「今日の料理」は拓真のお気に入りだ。
「魚が煮れるようになったんだぜ」
自信たっぷりに皿を指さす。
「…すげーな。僕は焼き魚しかできないよ」
僚摩は食に異常なほど関心を持っていたので実のところレパートリーはかなり多岐に渡る。しかし拓真には内緒だ。
「次の休みは僕が拓真に振る舞うよ」
「イヤ、料理より…」
拓真が口ごもる。
「色々考えたんだよ。俺は大学を編入してまで僚摩を追いかけた…僚摩と一緒にいたいからだ。僚摩はそれに応えてくれた。つまり腹を括ってくれたんだって。」
拓真は僚摩を見つめた。
腰に腕を回し、抱き寄せる。
「大事にする」
「待った!」
「へ?」
「話し合おうと言っただろう?勝手に一人で完結しないでくれるか?」
拓真はキョトンとして僚摩を見た。
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