| 「なんだ、そういうことか。ちゃんと言ってくれよな。」 と言いつつも、顔はにやけててとっても嬉しそうな拓真である。
 「金ないからそんな遠くには行けないけどな。」
 すると今度は拓真が真顔になる。
 「僚摩さ、オレは普通に仕事してて、親にちょびっとだけ仕送りしてて、後はお前と光熱費と食費を折半して、他に金の使い道、無いんだよ。
 それくらい、オレに出させてくれないか?ちょっとは甲斐性のあるところ、見せたいんだけどな。・・・計画を立ててくれただけでいいんだ、僚摩は。
 たまには頼ってくれよ。」
 その言葉に僚摩は一瞬、カチンときたのだが、よく考えてみれば普段から拓真にはあまり趣味らしきものが無いように思えてきた。
 「拓真って趣味ないの?」
 すると今度は全く返事が無かった。
 「僕がいない日は何してるの?」
 「飯食ってテレビ観て、風呂入ってテレビ観て…寝る。」
 「それだけ?」
 「言っておくけどな、オレの趣味は昔から僚摩だったんだよ・・・部屋の窓からお前の部屋の窓、じっと見詰めてた。なにしてんのかな…って。」
 普通だったら確実にええっとなってしまう台詞だが、僚摩の心臓はドキッと跳ねた。
 「マジで?」
 「ごめん、気持ち悪くて。」
 「…大抵、古語辞典を開いていた。」
 「は?」
 「いや、何してんのかなって言うから…」
 …照れ隠しなのか、天然なのか、不明である。
 「箱根の貸切温泉が有る宿へ行こう。」
 拓真が突然、切り出した。
 「今からとれるのか?」
 「大丈夫、なんとかする」
 拓真はスマホを片手に検索サイトを開いてごそごそと調べ始めた。
 「あった」
 …一泊一人50,000円。
 …
 …
 「ここにする」
 「えっ?無理しなくていいよ。」
 「いやだっ、貸切温泉で僚摩とエッチするんだ。」
 「…しないよ。」
 「お湯が真っ白になるくらい、いっぱいエッチする。決めた。」
 果たして、拓真の野望は達成するのか・・・。
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