| お盆休み。 予定通り拓真も休みをとって予約を入れた温泉宿へ向かっている。
 新宿駅から小田急ロマンスカーに乗って行くのだ。
 「なんだか修学旅行を思い出すな」
 小学校の修学旅行は、拓真と僚摩は同じ行動班だった。
 「朝になってから替えのパンツが足りないと騒いでいたことか?」
 「…嫌なことばかり覚えているんだな。」
 普段は隣同士でも一緒に登校する事は滅多に無かった。
 「僚摩」
 「ん?」
 「なんで俺のこと避けてた?」
 僚摩は悩んだ。悩んだ末に出した答えは
 「あとでな」
 だった。
 「何だ?それ。」
 拓真は大いに不満を表したが、無視した。
 「…あの頃、何がいけないのか、毎日悩んだんだぞ。」
 僚摩が慌てる顔を見たくて、ワザと話を続けた。
 「悪い」
 しかし、僚摩はただ拓真に向かって謝っただけで答えはくれなかった。
 
 
 
 「リコーダー、真剣に困っていたんだ。」
 僚摩は独り言のつもりだった、拓真が目を閉じていたから。
 「何を?」
 「なんだよ、起きていたのかよ?」
 真っ赤な顔で抵抗した。
 「ずっと、拓真は鈴木さんが好きなんだって思っていた。それが僕の机に入っていたから、鈴木さんが僕を好きなんだと勘違いした。拓真が悲しむと
 思ったら・・・起たなくなった。」
 拓真は再び、目を閉じた。
 「そんな、可愛いことこんなところで告白するなよ・・・犯したくなるだろ?」
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