| いつからなのかという、母親の問いに、拓真は返事が出来なかった。 「いつからお休みなの?」
 「え?」
 「夏休みに決まっているでしょう?僚摩くんは明日から時間があるってことよね?今の話だと。拓真はいつからなの?」
 「えっと・・・今日まで。」
 「…ええっ!?今日なの?じゃあ時間がないじゃない。仕方がない、今度の土日で帰っていらっしゃい。二人でよ?いいわね?」
 そう言うと有無を言わさずに立ち上がり、そのまま部屋を後にした。
 台風一過・・・という言葉がぴったりの状態だ。
 「二人で帰って来いって…なんなんだ?」
 「さあ…」
 
 
 
 金曜の夜。
 二時間あれば帰れる距離なので、二泊するつもりで実家へ戻った。
 互いに実家の玄関を開けた途端、
 「金輪際東京には出さない」
 と言われ、監禁状態となってしまった。
 
 
 
 翌土曜日。
 拓真の家に集まり、話し合いとなった。
 「あなたたち、いつからそういう関係なの?」
 「そういうって…いわゆる恋人同士ってことでいいのかな?」
 そう言い切ったのは当然僚摩。
 「初めて関係を持ったのは大学の時。恋人になったのは拓真が長野に引っ越してきてから。」
 淡々と事実を述べた。
 「俺が、押しかけました。」
 「分かっているわよ。拓真が僚摩君のこと好きになったのは小学校の時だもの。でもまさか離れてからだったなんて・・・てっきり高三のときだと
 思っていたわ。」
 拓真の母親が冷たかったのはそういう背景があったのか…と僚摩はぼんやり考えていた。
 「私は、知りませんでした。」
 僚摩の母親はただひたすら泣きながら実情を訴えるといった感じだった。
 「勉強はどうなっているんだ?」
 僚摩の父親の関心事は別のことだった。
 「順調だけど。特に問題はないです。学校の教員になろうと思ったけど、教授を目指したい。だからあと四年、大学に残ります。」
 「だったらその四年は離れていなさい。」
 拓真と僚摩の父親が、同時に口を開いた。
 「わかりました」
 そう言ったのは、僚摩だった。
 |