| 僚摩と拓真は、あのあと別々に暮らした。 正しく言えばかなり離れた場所に別々の住所を所有したが、中間地点に逢瀬の場所を設けたのだった。
 僚摩の言い分はこうだった。
 「一緒にいても8ヶ月我慢が出来たんだから、別々に暮らしても四年くらいあっという間だろ?」
 一理有るような気がするが違う気もする…と考えたが、拓真は言葉にしなかった。
 とどのつまり、僚摩は学業に専念したいのだろう…と思ったからだ。
 拓真は条件を出した。それが中間地点の逢瀬の場、拓真がローンを組んで買ったマンションだ。
 拓真にとっては僚摩が人生そのものだった。
 だからそのマンションに入れるのは僚摩だけなのだ。
 なのに僚摩は徐々に不安を覚えた。
 この部屋には別の人間も招待されているのではないか、このベッドには別の人間と眠ったのではないか・・・と。
 それが拓真にとっては良い方向に向いた。
 僚摩が積極的に拓真を誘ってくる。拓真が嬉々としてそれを受ける。
 僚摩は束の間の安心を得るが、自分のアパートに戻ると再び不安が忍び寄ってくる。
 
 拓真、逢いたいよ
 
 愛してる
 
 離れるほど気持ちがそっちに行ってしまう
 
 僚摩が日々送るメールは、拓真をも不安にさせた。
 
 勉強、頑張れよ
 
 早く教授になれるといいな
 
 僚摩の飯は美味かったな
 
 僚摩は、助手として大学に採用が決まった。
 四年後の、春だった。
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