=送別会=
 一人減り、二人減り…気づいたら二人っきりになっていた送別会会場。
「そろそろ帰るか?」
「そうだな…」
 とぼとぼと店を出る
「さて、どうやって帰るか…」
「営業車の中は?」
「泊まっちゃうか?」
「金ないもん」
「そうだよな」
 酔っ払いが二人、深夜のオフィス街を歩く。


「なんだよ、一個しか持ってないのか?」
「当たり前だ、文句言うな。一人で二台も車に乗るのか?」
「そりゃそーだ」
 大声で笑いそうになったから俺は慌てて奴の口を押さえた。
「馬鹿、近所迷惑だ」
「誰もいねーよ、オフィス街だ」
「そっか…」
 カチッ、ドアを開ける。
「お前は助手席だな」
「うん」
 運転席から腕を伸ばして鍵を開ける。
「さんきゅ」
 二人、並んで車内に納まる。
 なんとなく落ち着かないのは俺。
「なぁ…」
「ん?」
 見ると奴は既に目を閉じていた。
 俺はどきどきしながら、でも酔いに任せて唇を重ねた。
 奴は抵抗しなかった。
 何も起こらないので、唇を離した。
「これで、気が済んだのか?」
 奴が口を開いた。
「あぁ」
「そっか…ま、気が向いたら…」
 気が向いたら何だよ?
 何も言わずに奴は眠ってしまった。


 翌日、日の出と共に社内に入り込み仕事をした。
 奴は荷物を転任先に送った。


 コンビニで下着を買った。