=翌朝=
 明日、この職場を離れる段階になってどうしてあんなことしたんだ?
 出て行く方の身になってくれよ。
 お前は明日からも今まで通り、ヘラヘラとしていればいいけど俺は新天地でお前のことを考えて、もやも
やと過ごせというのか?
 社用車専用駐車場も今日だけは俺の愛車を停めてある。このまま俺は去っていく…
「なんだよ、お前、自分のボンコツ、持ってきてたのかよ。」
 言いたいことは分かっている、でも今は言わないで欲しい。
「ゴールデンウィーク、行くからさ、このポンコツでいいから案内しろよ。」
 お前は照れたように、言う。
「有給休暇、あるか?」
「ああ」
 返事を言うか言わないかの素早さで俺はお前の腕を引いた。
「引っ越し、手伝えよな」
「無理言うよなぁ」
 言いながらお前は笑う
「…さっき、転属願い、出してきた。阿井田さん、おふくろさんが病気でここから離れられないだろ?だから
代わって欲しいって頼んできた」
 僕はぼんやりとお前の顔を見つめていた。
「武(たけ)」
 お前は照れたように笑った。
「そういうことだ。先に行って待っててくれ。」
 僕は何も考えずに頷いていた。