= 真夏の出来事 =
「うっ…あぁっ…」
 なんてことをしてしまったんだろう、これは浮気というものに該当するんだろうな…。
 あっ…でも…気持ちいいっ。
 男が男に穿たれ、喘ぎ、善がっている。


 前から存在は気になっていた。
 新入社員として配属されたときに僕の面倒を見ることになった先輩に内心ときめいたからだ。
 今まで同性に興味を持ったことは皆無だった。
 だから先輩の一挙手一投足、言葉の全てを見逃さないよう、聞き逃さないようにしていた自分に気付
いて混乱した。
 確かに、女の子に興味が無くなっていた。
 合コンへ行ってもモテなくてなんだかずっとこのままかな…と思っていた頃、後輩が配属された。
 僕は三月生まれでそいつは四月生まれで、実質一週間しか違わなかったことから気があった。
 そいつは簡単に
「僕は同性にしか興味がないんだ」
と、打ち明けた。
「好きな人はいつも男だから」 
 そう言い切る姿が眩しかった。


「痛いか?」
 ふるふると首を左右に振ることで否定した。
 この人とこんな関係になるなんて…。
 好意を履き違えていたのだろうか?
 でも。
 一度だけで良い、想いを受け留めてもらえたら、この先何もいらない…。


「パパ、又おじさんと遊びに行ったの?」
 家に戻るなり、娘は僕の顔を見て問う。
「おじさんとはお仕事だよ、いつも遊んでいるわけではないんだ。」
 確かに家族ぐるみで遊びに行くが二人で始めた広告代理店がやっと軌道に乗ってきた。
「おにいちゃんたちからお電話がきて言ってたの」
 娘の言うおにいちゃんたちは後輩のことだ。
 いつも一言多いが勘も良い。
 僕達のことは心配してくれている。
 メールで、伝えておいた方がいいのだろうか…。
 いや、言えない…柴田さんとセックスしてしまいましたなんて…。
 うわ〜思い出したら恥ずかしくなった。
 僕達がセックスしたことで家族を裏切ったとは思っていない。お互いに大事にしているつもりだ。
 でも一度しかない人生、想いを封じ込めるにはまだ早かったようだ。
 と、その時携帯が鳴った。メールの着信音だ。

〔やりましたね?ヨコヤマ〕

 あー!やっぱりばれてる。
 でも、なんでだ?

〔(^_^;)何?タナカ〕

 返信…っと。

〔新規獲得。ヨコヤマ〕


 …カマ掛けられた…。


〔あれは柴田さんだよ。タナカ〕


 …さて
 どんな顔して明日みんなに会えばいいのだろう。