03.内緒話は深夜にこっそり
「じゃあね、おやすみ」
 僕はドアの前で二人に手を振る。
「おやすみ〜」
「おやすみなさい」
 桧川くんと慧くんがニコニコしながら手を振る。
 でも城くんは手を振ることも振り返ることもせずに無言で部屋に入っていった。
 でも無視している…という感じではなくて、相当何か考え事をしていて、すでに思考回路がショートしてしまった感じ。
「城くん、桧川くんと何かあった?」
 桧川くん、の部分で城くんの肩がビクンと跳ねた。
「喧嘩?」
「ちげーよ、方向性の違い。」
 城くんの返事は若干ズレていた。
「桧川くんって城くん大好きだよね、常に城くんだけ見てるから。」
 見る間に城くんの顔が朱に染まった。
「心くんだって、」
「そうだよ、僕は慧くんが大好き。城くんと桧川くんも好きだけど大きさが違うんだ、ごめん。」
 すると城くんは首を斜めに傾けて
「好き?ねぇ心くんの言う好きってどんな感じ?」
 城くんの顔は真っ赤だった。それで僕はピンときたんだ、告ったのは桧川くんのほうだったんだなって。
「えっとね…城くんは桧川くんが嫌い?」
 途端に無口になる。
「桧川くん慧くんには劣るけど男前だよ?」
「劣るか?むしろ桧川くんの方が美人だぞ?」
 今度は僕が言葉を発せなくなってしまった。すごい、城くんはちゃんと桧川くんを見ているんだ、見ていて自覚していないんだ。
だったら面白いからこのまま見ていよう、と瞬間的に判断した。
「そっか、そうだよね。そういう感じの好き。わかる?」
「なんとなく、わかる。」
「だったら桧川くんと仲直りしたらいいよ。明日の朝、ちゃんと笑顔でおはようって声かけてごらん?桧川くん安心するから。」
 僕は、意地悪だ。と、同時に自分の首を絞めていることにも気が付く。
「でもさ、桧川くんの好きは違うんだ。」
 ベッドに腰掛けて俯く。
「例えば、」
 城くんが僕のシャツの裾を引っ張り、隣を指差し座るように促された。
「心くんだったら平気なんだ。」
 言うと、城くんの腕が僕を捉えて抱きしめられた。
「なにす、」
「心くんの言う好きがこれなら、桧川くんの言う好きはキスしてそしてセックスすることなんだ。心くんの神宮寺くんへの大好きは
どこにあるの?」
 城くんに抱きしめられたまま、答える。
「僕の大好きは…彼に触れていたいって思う大好き。」
 城くんの腕が僕を解放した。
「ますます訳わかんねーよ」
 ごめん、桧川くん。あとは任せた!