06.サクラが咲く頃
「おーい!」
 今日も事務所のレッスンスタジオでダンスのレッスンに励んでいるのはデビューして4ヶ月経つボクらだけだ。
 そこへ珍しく息せき切ってマネージャーの増上さんがやってきた。
「今確認中なんだけど、先月誰かがマンスリーミュージックでdaysの曲を掛けてくれたらしいんだ。それで売上が
延びている。」
「本当に?」
 神宮寺くんが一番始めに身を乗り出した。
「ああ。それで歌番組からオファーがきた。」
 すげー。ボクは関心してしまい声にならない。
 増上さんの携帯がメールの着信を告げる。
 急いで開くと途端に驚いた表情に変わる。
「発信源は加月零…ACTIVEだね。」
「え?ACTIVE?」
 今度はボクが乗り出す番。
「ACTIVE好きなんだ、嬉しいなぁ。」
 携帯型音楽再生プレーヤーには必ずACTIVEの曲が入っている。
「今度会ったらお礼が言える。」
 ボクは小躍りしながら増上さんの話を聞いていた。
「と言うわけで、明日が収録だからよろしく。」
 ええ〜!
 ん?誰も叫ばない。
「よし、明日の収録は完璧にするぞ。」
 悠希がヤケに張り切っている。
「加月さんに感謝しないとな。」
 神宮寺くんも真剣な顔だ。
 二人は男前な顔立ちだから真剣になると凄みを増す。
「城くん、衣装はどうするの?」
 心くんの言葉で我に返る。
「金ないから前回のものをアレンジしてみるよ。」
 悲しいことに他のグループのようにスタイリストが付いているわけでもなく、予算もないに等しいから自分達でどうに
かするんだ、いつもは。
「あ、衣装は用意する。」
 何?凄い待遇が違う!
「君達がやることはひとつ。歌と踊りを完璧に仕上げてくれ。」
 仕上げるもなにももう半年も歌っているんだから…。
「じゃあこれ。」
と、譜面を渡された。
 新曲だった。
「明日はデビュー曲を歌うよ。」
 増上さんが笑顔になった。