07.それぞれに想うこと
 翌日。
 番組収録にはACTIVEもいた。
 城くんは加月さんの所へ子犬のように走って行った。
「どうもありがとうございました!…オンエアは聴けなかったんですけど。」
 加月さんがにっこりと笑い城くんの手を取り握手をする。
「君達がdaysなんだ?陸が好きでよく車で聴いていて僕も良い曲だなぁってことで番組で掛けてみたんだ。
お役に立てて光栄です。」
 城くんはボーッとして見つめている。
 確実にオレは加月さんに嫉妬の眼差しを向けていたはずだ。
「悠希、目が怖い。」
「悪い、感情のコントロールが出来ない。」
 慌てて目を逸らす。
「大丈夫、城くんは桧川くんが一番大切だから。」
 オレは加月さんの横にいた野原さんに挨拶した。
「はじめまして、桧川悠希と言います、よろしくお願いします。」
 野原さんは二、三度瞬きをしてニッコリ笑顔になった。その笑顔は例えるなら天使のようだ。優しげであり危
険な雰囲気もはらんでいる。
「はじめまして…じゃないんだ。daysがまだデビューする前にラジオ局回りしていたでしょ?あの時に桧川くんと
挨拶したんだ、廊下で。」
「え、あの…覚えてくれていたんですか?」
「忘れる訳ないよ、魅力的な四人だなって思ったんだから。それに勝手なことしちゃったけど気に入らなかったら
お蔵入りさせて良いんだからね?」
 え?お蔵入り?
「あ!昨日の!」
 増上さんが持ってきた新曲だ、絶対。
「野原さんが作ってくださったのですか?」
「君たち見てたらこんな曲が合うんじゃないかなって。」
「ありがとうございます!」
 一緒に話を聞いていた神宮寺くんと心くんも頭を下げた。
「絶対、良いものに仕上げます!」
 それだけ言うのが精一杯だ。
 その後滞りなくリハーサルを終え、本番はいつも以上の出来で撮り終えた。
「頑張ってね〜」
 加月さんと野原さんは仲良く一緒に帰って行った。
「帰ってレッスンしよう。」
 神宮寺くんが、言った。