| 収録の帰り道、駐車場まで二人きりで歩いた。 気付いたら神宮寺くんと心くんが先に帰ってしまったのだ。オレの携帯に神宮寺くんから《帰る》
 の一言が届いていた。
 
 
 神宮寺くんとオレは18歳になったとき社長から車の免許を取るようにと言われた。
 人を乗せて走るのははっきり言ってまだ怖い。だけど城と二人になれるのならと意を決した。
 車の割り当ては社長が決めた。最初は気付かれているのかと思った、だけど心くんの方が年下
 だから神宮寺くんに面倒を見ろということだったらしい…今となっては逆に怪しいが。
 オレ達には付き人がいない。増上マネージャーから仕事の話が来て自分たちで現場へ行く。
 大きな仕事だと増上さんが付いてきてくれる、けど現地のみ。
 
 
 「学校、楽しい?」
 会話が全くなかったので一番手頃な話題を投げてみた。
 「学校より仕事の方が楽しい。」
 上着のポケットに手を突っ込んだまま俯きぎみに答える。
 「どうかした?」
 若干不機嫌だ。
 「なんで二人は先に帰ったんだろ?」
 「それはね、城くんがいつまでも加月さんにくっ付いているから…オレ的にはかなり嫉妬したけどさ。」
 「なんで?なんで桧川くんが、」
 そこまで言って左手で口を押えた。
 「オレがどうした?」
 「あっ!」
 何かを見つけて走り出す。
 「見て見て〜」
 遅咲きの桜が風に花びらを散らす中、城が無邪気にはしゃぐ。
 オレに向かって手を振る姿が愛しくて…。
 城の所まで駆けて行く。
 「ゆ…」
 彼の身体を抱きすくめた。
 「桧川…くん…」
 「ごめん、好きな気持ちが止められない。」
 宙に浮いていた城の両腕が、そっと背に回された。
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