10.仕事も恋も精一杯に
「おはよう」
「おはようー!」
 朝起きたら城が部屋から出てきた。元気一杯だ。
「城。」
「ん?」
「今日も好きだよ」
 城の動きが止まった。と思ったらゆっくりとこちらに顔を向けた。
「もう、やめたのかと思った。」
 そのはにかんだ顔が妙に可愛い。
「毎日聞かせるのは戦略的に不利かと気付いたんだ。」
 すると今度はちょっと怒った顔をする。これはこれで可愛い。
「…毎日口説いてくれるって言った…別にいいけど。」
「毎日口説かれたいの?」
 今度は吃驚顔だ。
「だから、別にいらないよ!」
 真っ赤な顔で否定する。
 腰に腕を回して引き寄せ、耳元に囁く。
「キミ、凄く可愛いね。オレと付き合わない?」
 両腕を突っ張って身体を引き剥がそうとするけど、力ではオレの方が上手だから逃れることが出来ない。
「大好きだよ。」
「あー、桧川くんセクハラ〜!」
 心が、洗面所から出てきた、タイムアップだ。
「又明日ね。」
 胸の中に抱き込んだ頭が縦に動いた。
 腕から解放された少年の瞳が揺れている。
「早く学校に行っておいで。」
「あ、忘れてた。」
 慌てて洗面所へ駆け込む。
 今日も午後から仕事がある。城も心も午前中だけ高校へ行く。
「な?脈ありだろ?」
 神宮寺くんがからかいに来た。