12.星の輝きに似て
 オレがアイドルを目指したのは、テレビの中で歌い踊るアイドルに憧れたからだ。
 当時人気絶頂のアイドルグループがいて、そのグループを見て育った。(しかし名前は覚えていない)
 あんな風になりたい、願いは一つ。
 しかしなり方が分からない。
 ある日、クラスメートが雑誌に載っていたとくれたのが今の事務所のオーディション記事。なんでくれた
のかは未だに不明だけれど。
 応募ののち連絡があって会場に着くとそこには自分を含めて二人しかいなかった。
「あの…キミ凄い美人だね…」
 一緒に居合わせた少年がオレに向かって遠慮がちにそう言った。
 美人と言われるのは結構あった。カッコいいではなく美人。何が違うのかはよく分からない。
「キミだって可愛いじゃないか。」
 彼は美少年と言うより少女漫画のヒーロー的可愛さ。
 笑顔がチャーミングだ。
 まさにアイドルだった。
 しかし彼は少しガッカリしたような表情を浮かべた。


 オレは無事に合格して高校一年からレッスンに通い始めた。
 しかしオーディションで一緒になった少年はいなかった。


 二年後。
 相変わらずオレはレッスンの日々。デビューの気配もない。
 もう、高校三年なのに。
 高校では入学シーズンを迎えていた。
「あっ!」
 そこにオーディションで一緒になった少年の顔があった。
「声変わりが終わってから来いって言われたんだ。その間は何か好きな楽器を極めることと毎日必ず
ウォーキングをすることが課題だった。めんどくさいからジョギングしてたよ。」
 そう言って笑った。
 しかし、なんでウォーキングなんだ?


 彼は声変わりをしたと言ったが、耳に届く印象はオーディションの時と大差はなかった。


「桧川君、これ欲しい?」
 心君が見せてくれたのはスマホの画面に映し出された、少年の体操服姿。
「…オレさ、去年までそこの高校生だったんだ。」
「その時からなの?」
 心が言いたいのは「高校生の時から城のことが好きだったのか?」だろう。
「まあ…オーディションから。」
「僕も。オーディションの時から慧君が好きなんだ。同じだね。あ、これ送っておくね。」
 送られてきた画像は、体育の授業でサッカーをしている姿だった。
 オーディションの時も、高校の入学式も、レッスンの時も、キミはきらきらと輝いて、オレのスターなんだ。
 キミのためなら一番でなくて良い、キミの支えになりたい、本当にそう願っている。