14.確信犯
「え?また?」
 オレの携帯に神宮寺君からのメール。
《心と先に帰る》
「確信犯だよね?」
「多分」
 その時、二人きりで残されていることを悟る。
「だから寛永さんも帰っちゃったんだ」
 どうして「だから」が出てきたのか分からないけど、とりあえず頷いた。
「あのね、」
 タクシーを探すか、電車にするか悩んでいると、城が何か話を始めた。
「初めてなんだ…人を好きになったの。だから好きだって実感?意味?が、よく分からなかった。
心くんに聞いたんだよね、好きってどんなのか。でもやっぱりピンと来ない。」
 あぁ、今朝の、ね。
「いいよ、ゆっくり…」
「ボクがゆっくりで居られないんだよね。だって、悠希が誰かに取られちゃうって心くんが言うんだ!」
 そっか、キミは本当に自覚がないんだ。
「城はいつもオレのこと名前で呼んでくれてたんだ。」
「!?」
 見る間に城の顔が真っ赤に染まった。
「…っ…ごめん」
 泣きそうな顔を見てオレは慌てる。
「違うよ、ちょっと嬉しかったんだ。本当に焦らなくていい、オレは今までもずっと待っていた。これからは
キミの気持ちを知っている分気持ちは楽だし…幸せだからさ。」
 今すぐ抱きしめてキスしたい。だけど一応アイドルだからさ、そんなわけにはいかない。
「うわっ」
 城は変な声を出したけど手にしていた帽子を被せただけ。
「二人になりたいから、ゆっくり帰ろう」
 パッと表情が変わる。
 後ろからオレのシャツの裾を掴むと黙って着いてくる。
「ありがとう…ボクのこと、好きになってくれてありがとう。」
 オレは嬉しくて振り返ることが出来なかった。
 今、城の顔を見たら確実に抱き締めてしまうから。
「うん」
 それが精一杯だった。