| 「え?また?」 オレの携帯に神宮寺君からのメール。
 《心と先に帰る》
 「確信犯だよね?」
 「多分」
 その時、二人きりで残されていることを悟る。
 「だから寛永さんも帰っちゃったんだ」
 どうして「だから」が出てきたのか分からないけど、とりあえず頷いた。
 「あのね、」
 タクシーを探すか、電車にするか悩んでいると、城が何か話を始めた。
 「初めてなんだ…人を好きになったの。だから好きだって実感?意味?が、よく分からなかった。
 心くんに聞いたんだよね、好きってどんなのか。でもやっぱりピンと来ない。」
 あぁ、今朝の、ね。
 「いいよ、ゆっくり…」
 「ボクがゆっくりで居られないんだよね。だって、悠希が誰かに取られちゃうって心くんが言うんだ!」
 そっか、キミは本当に自覚がないんだ。
 「城はいつもオレのこと名前で呼んでくれてたんだ。」
 「!?」
 見る間に城の顔が真っ赤に染まった。
 「…っ…ごめん」
 泣きそうな顔を見てオレは慌てる。
 「違うよ、ちょっと嬉しかったんだ。本当に焦らなくていい、オレは今までもずっと待っていた。これからは
 キミの気持ちを知っている分気持ちは楽だし…幸せだからさ。」
 今すぐ抱きしめてキスしたい。だけど一応アイドルだからさ、そんなわけにはいかない。
 「うわっ」
 城は変な声を出したけど手にしていた帽子を被せただけ。
 「二人になりたいから、ゆっくり帰ろう」
 パッと表情が変わる。
 後ろからオレのシャツの裾を掴むと黙って着いてくる。
 「ありがとう…ボクのこと、好きになってくれてありがとう。」
 オレは嬉しくて振り返ることが出来なかった。
 今、城の顔を見たら確実に抱き締めてしまうから。
 「うん」
 それが精一杯だった。
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