16.思い切り叫びたい
 どこかに確信のようなものがあったんだ、城は何かしらの感情をオレに抱いていると。
 その感情が愛情なのか友情なのか憎悪なのか嫌悪なのかは判らない、けど憎悪と嫌悪ではない
ことを祈り…。
 もしかしたら嫌われてはいない、愛情?友情?
 答えは簡単に導き出される。
 オレが城に惚れている、だから良いように考えているということだ。
「あの…よろしくお願いします」
 え?
 今なんて?
 よろしく?
 って?
 よろしくって何に対して?
 よろしくするようなことと言えば、散々待たされている返事?
 まさか。
 でも…。
 振り返れない。
 違うかもしれない。
「…あのさ…告白したときより、ドキドキした。」
 声が掠れていた。
 そのまま手を引きエレベーターに乗り込む。
 城は黙って着いてくる。
 いいんだよな?いい方に受け取っていいんだよな?
 ええい、ままよ!
「言っておくけど、繋いだ手は絶対に離さないからな。」
 繋ぐ手に力を込める。
 返事はない。
 エレベーターが一階に着き扉が開く。
 前を向いたまま
「ありがとう」
と言うのが精一杯だった。
「桧川くん、城くん、早く!」
 心が手を振っている。
 城はオレの顔を見て微笑むと、そっと手を放し二人のもとへ走った。目許をうっすらとピンク色に染めて。
「桧川くんも早く!」
 途中まで行った城は直ぐに戻ってきてオレの手を引き再び走り出した。