最近、『好き』が少し判った気がする。
「あの!赤坂城さんですよね?」
学校の帰り道。今日は仕事がないから心くんとは別々に帰宅する。クラスの用事って言ってたけど
ボクは普段からクラスの用事は何もしていない。
なんてぼんやり考えていたときだ、正面から来た女性に声を掛けられた。
会社からこんな時はこういう風に答えなさいという、マニュアルがある。
しかし、時と場合によっては臨機応変で構わないとも言われている。
ボクはとりあえず左手の人差し指を唇に当てた。そして声を出さずに首を縦に振る。
「あの、ファンなんです。握手してもらっていいですか?」
口辺を上に持ち上げアイドルスマイル。右手を差し出す。
「応援してもらってありがとうございます。」
左手も使って両手で握手をする。
「あ、はい。頑張ってください。…その…城君はいつも悠希君の横に居ますけど悠希君と仲がいいの
ですか?」
なんだ、悠希のファンか。眼がきらきらしてる。
「桧川くんのファン?」
「えっと、お二人一緒の所が好きなんです。仲良さそうだなぁと。」
仲良しだから気になるってことかな?
「桧川くんはボクの教育係、お兄ちゃん担当なんだ。」
「そうしたら心君と慧君も?」
ん?神宮寺君の方?
「そう。」
「羨ましいです。」
「ボク?心くん?」
「あの…」
やっぱり悠希か。
「桧川くんの何処が好き?」
「城君を見る瞳が凄く優しくて、それが…」
「ありがとう。桧川くんは眼がいいんだね?よーく、言っておくよ。」
もう一度握手をして別れた。
やだな、ファンにまで嫉妬した。心くんの言うとおりだ。
悠希は、ボクの恋人なのに。
…
……
恋人?
恋人!
そうだった、ボクたちは恋人なんだった。
なんだかやけに暑いな。
早く家に帰ろう、悠希が待っている。
あ、帰りにコンビニでアイス買って帰ろう。
…心くんと神宮寺くんの分もついでだから買っておこうっと。 |