部屋に戻ってきてから、悠希がなんだかソワソワしている。
「俺は悠希の気持ちには応えられないよ?」
「は?」
「愛の告白じゃないの?」
すると、頬を朱に染め綺麗な顔が更に強調される。
「ち、違うよ!…でも、もっと恥ずかしい話。」
「なら聞くより慣れろ、だな。」
今度は瞳を目一杯開いて素っ頓狂な表情に変わる。
その手元に一冊の本を渡す。
「俺はもう要らないから二人で読んだらいいよ。」
うん、と言いながら手元に渡された本に視線を落とした。
「なに?これ?」
「男同士でどうやってセックスするのかって…違うの?」
今度は節目がちに真っ赤な顔を隠すように俯いて首を左右に小さく振る。
「違わ…ない」
「最初は大変だけど慣れれば平気だからさ。」
「違うんだ、その…おかしいのかな、そういう欲求があまりないんだ。」
ない?
「城くんと?したくない?」
「違うよ、したくない訳じゃない。だけど城は多分頭の中それ一色になってて、期待しているのかと思うと
プレッシャーでさ。…オレだって初心者マークなのに。」
慧は小さく笑った。多分悠希は気づいていない。
「二人でって言っただろう?焦らずにゆっくり進んでいったらいいんだよ。」
するとかなりネガティブになっているのだろう、再び首を左右に振る。
「いきなり押し倒して突っ込みそう」
「物理的に無理だから。お互いに痛い思いしかしないし。」
「神宮寺くん、オレ何か勘違いしてるような気がする。」
「俺もそう思う。」
「ありがとう。」
そういうとベッドに腰掛けて手渡したhow to本に目を通し始めた。
「神宮寺くん、」
「聞かないでくれる?」
「ごめん」
流石に答えられないな。
悠希が聞きたいのは
神宮寺くん、こんなこと心くんとしてるの?
だから。
悠希だっていつかはもっとすごいことしたくなるんだからさ。
多分。 |