21.夏休みの宿題
「わーっ!」
 高校生組の部屋から悲鳴が上がった。確実に城の声だ。
「えーっ!」
 今度は心くんの声。
「なんだろうな?」
 不思議そうな声で神宮寺くんが扉に視線を送る。
「無理無理、ム〜リ〜ッ」
 ハモってる。
 神宮寺くんと視線を合わせる。
「宿題忘れていたとかかな?」
 城なら有り得るけど心くんは違うのではないだろうか?
「心くん、どーする?」
「腹を括るしかないよね?」
「やだなぁ…」
 ドアを開けながら二人がボソボソ話している。
「何かあったの?」
「わっ!」
「おっ!」
 オレが突然話しかけたからなのか二人は驚愕した。
「あ…その…」
 心くんが言い出し辛そうにしている。
「ごめん、明日のレコーディングのことなんだ。」
 なに!
「先週、譜面を預かっててさ、忘れてた。」
 まじかよ…とは言えないし顔にも出せない。
「見せて。」
 冷静なのは神宮寺くん。
「コーラス部分も自分たちでやれってことだな…了解。」
 オレも慌てて譜面を覗く。
「これなら多分大丈夫。」
「それがさ、さっき増上さんからメールがきて、午前中に録音したいって。」
「大丈夫、午前中は声が出ないって言い訳が出来る、午後一にしてもらおう。」
 すると、更に心くんと城は身体を縮こませた。
「午後からジャケット撮影なんだって。」
 言葉を失った。
 なぜ、逆にしてくれない。
 そしてなぜ、オレたちに連絡してこない…。
「解ったよ。じゃあ、練習するから学校関係のことは明日以降にして…」
「ごめんなさい、どうしても今から一時間、聞かないといけないラジオがあるんだ。自由研究の…」
 …こっちが叫び出したい…。
「じゃあ、俺達で出来ることをやるから二人はやるべきことをやること。」
 そう言うと神宮寺くんはギターを抱えた。
 オレも急いでピアノに向かう。
 二人でコーラス部分の音を拾って何とか形になった頃、高校生組の二人が現れた。
「あのさ…」
 城がおずおずと声を掛けてきた。
 すると神宮寺くんが立ち上がる。
「マンションの裏手に公園があったはずだよ。」
 心くんの顔がパッと明るくなった。


 重いんですけど。なんでオレがバケツに水?
 しかも明日は大変なのに、なんで花火?
「火薬について調べていたんだ、自由研究。」
 二人で仕上げた自由研究。最後に写真を入れたかったらしい。
「学生の本分は勉強だからね。」
 神宮寺くんは心くんのことならなんでもお見通し…ってきっと知っていたんだろう。
「悠希っ、ゆうきぃ〜」
 城が呼んでいる。
「よろしくっ」
 カメラを手渡された。
 何だよ、オレは雑用係かよっ。


 翌日。
 二人の自由研究は立派なものが出来上がった。
 そして、当然だが神宮寺くんとオレの自由研究も突貫工事だったが見事に時間内に収めた。