22.コンサートだ
 『コンサート』
 なんて甘美な響きだろう。
 西村先輩をテレビで見てからあんな風になりたいと思って芸能界に入った。
 でも、今のオレは西村先輩とは全然違うタイプになっている。
 西村先輩は踊りがメイン、しかしオレは歌だ。
 あくまでもオレの動きはダンス、振り付け。
 今まで誰も成し得なかった、『アイドル歌手』のランクアップがしたい。
 それには神宮寺くん、心くん、そして城の同意が必要だ。
 あくまでもdaysがベースだから。
 4人じゃなきゃ、意味がない。


 増上さんからコンサートの話がもたらされた。遂にオレらもコンサートが出来るんだ。
「社長から、daysはコツコツと成長する姿を見ていきたいと言われてさ、郊外のコンサー
トホールを押さえた。他のグループみたいに初めからドームとか競技場じゃなくて、王道
のコンサートホールから行きたい…だそうだ。」
 やった!西村先輩もコンサートホールだったと聞いたから、コンサートホールでやりた
かった。
 作られたアイドルではなく、王道で行きたいんだ。
「桧川くん、楽しそうだね。」
 心くんが不思議そうにオレを見る。
「悠希はコンサートが嬉しいんだよ。」
 え?オレ、城に話したか?
「雑誌のアンケートで書いてた。」
 少し怒ったように唇を尖らせて言う。
「違う、嬉しかったんだ、城がオレの憧れを覚えていてくれたことが。」
 そう、デビュー前にアンケートで書いた。
 城の頭をガシガシと撫でる。
「学校、留年しないように頑張ってよ?コンサートが三年後になっちゃうからさ。」
「なっ!」
 何か反論しようとして言葉に詰まり、そのまま真っ赤な顔で俯いた。
「大丈夫だよ、一学期の成績、結構良かったから。」
 城の笑顔に、少しだけ自信の色が見えた。
「これからいっぱい歌を覚えて振付して、ステージの構成をして衣装を揃えて…楽しみだな。」
「悠希、そのことだけどさ…振付を西村先輩にお願いしたらどうだって、増上さんが言っている
んだけど、どうかな?」
「ボク、反対っ!他の人がいい。」
 城が脹れっ面で唇を尖らせていた。
「城くんがヤキモチ焼いてる…」
 心の目が笑う。
「ヤキモチなんか…じゃあ、いいよ…」
 渋々頷く。
「構成は増上さんから鯉谷先輩に依頼してくれるってことだから、西村先輩はよろしく。」
「え?オレ?」
 マジで?
 大丈夫か?