24.青空
「おはよーっ」
 城君が朝起きていきなりリビングのテレビを点けた。普段あまりテレビを見ている姿を目撃しないので
ビックリした。
 番組を一通り切り替えた後、dボタンを押した。表示された文字へ、リモコンで器用に移動して「天気予
報」を見ている。
「よしっ」
 ガッツポーズで寝室に戻る。
 手にはうさぎの雪ちゃんと奇妙な網。
「城君、どうして雪ちゃんなの?」
「…白いから…」
 どうして耳が赤くなるほど照れているんだろう?
 網の中へ『雪ちゃん』を入れるとベランダのフックに掛けた。
「洗濯ばっかりしているとふわふわ感がなくなっちゃうんだよね。」
「城君は雪ちゃんが大好きなんだね。」
「別に雪が大好きってわけじゃ…ないけどね。」
 ん?
 雪…ゆき…ゆうき?
 そういうことか!!
 好きかどうか解らないなんて言っていたけど、しっかり前から桧川君のことが好きだったんじゃないか。
「城君、今夜は神宮寺君と僕がご飯当番だから、後で買い物に行ってくるね。」
 予め教えておけば二人でやりたいことも出来るだろうしね。
「でも、午後から仕事…」
「いいからいいから。ついでに大目に食材仕入れておくよ。」
 桧川君も城君も不器用だから全然前に進めない。
 僕なんか迫っちゃったもん、慧君に。



「キスだけじゃ、ヤダ。」
 告白して暫くした頃。デビューが決まってレッスンが基礎的なことではなく歌と振りを合わせる事に変わって
いった頃だった。
 毎日クタクタになって帰って来て、桧川君も城君もぐっすり眠っているのを知っていた。
 二人で真夜中にこっそりマンションを抜け出して、車の中でセックスした。
「心?」
 慧君が驚いた声を出した。そりゃそうだよね、僕はすぐにでも慧君と一つになりたくて、事前に準備をしていた。
「こんな、やらしい子だとは思わなかった。」
「嫌い?僕がエッチだから…」
「まさか。」
 キュポン
と、音を立てて体内から引き抜かれたものは、僕に喪失感を与えた。
「早く…」
 それでも慧君はジェルとゴムを使った。
「んっ」
 解っていた、そんなこと。
 今まで入っていたものの比ではないことくらい。
「んあっ…くぅっ…」
「しんっ…」
「さとし…あっ…」
 ゆっくりと奥へ奥へと突き進んでくる。
 メリメリと身体が引き裂かれるようだ。
 はっきり言って、気持ち悪い。
 ふと、身体中の力が抜けた。慧君がボクの下半身を握りしめたからだ。
「やっ、あっ」
 徐々に追い上げられていく。
「んっ…んんっ」


「…った?」
「ごめん、今なんて言ったの?」
 ぼんやりと初めてのことを思い出していたら城君が言っていたことを聞いていなかった。
「え?あ…だから、最初のキスって何時した?」
「告白した日…ってまだ?」
 コクン
と、城君の頭が縦に振れた。
「もう半年くらい経ってない?僕なんてそんな時は既にセ…」
「せ?」
「…うん…」
「え?え?なに?ヤったの?ヤってたの?つーか、もうヤっちゃったの?」
 城君が真っ赤な顔して照れながら、でも興味津々な目だ。
 こんな時は覚悟を決めなくてはいけない。好奇心旺盛な城君には勝てないから。
 抱き枕の雪ちゃんからとんでもない方向に行っちゃったな…。
 窓の外は雲一つない青空。
 こんな時にエロトークか。あーあ。