| 「赤坂君って人気あるの?」 教室で、不意にかけられた言葉は敵意の籠もった言葉だ。
 城と心が通う高校は芸能活動をしている生徒が多い。
 多いけれども必ずしも仕事があるとは限らない。
 そうなると妬みが生まれる。
 「グループはそこそこだよね?」
 daysの人気は神宮寺と斐川の人気が七割、あとの三割を城と心が受け持っているような感じだ。
 だから城は言われた言葉に怒ることも出来なかった。
 「赤坂君と川崎君は存在感が薄いんだよ」
 存在していない奴に言われたくないよ…と、心の中で毒づいた。
 
 
 「って、言われた。」
 帰り道、ため息つきつつ心に愚痴を吐く。
 「良いよ、僕は慧君に養ってもらうから。」
 心は当然のように呟いた。
 「いいなー、将来が安泰な人は。」
 「城君だって斐川君に養ってもらえばいいのに。」
 「なんで?普通、悠希をボクが養うんじゃないの?」
 「そうなんだ。へー。」
 「まあ、簡単に言えばボクは家事全般が苦手だからね。」
 って、そうじゃないよ!と、心の中で突っ込んだ。
 大体、なんで城はアイドルを目指したのか?
 母親が大のアイドル好きで小さい頃に沢山のアイドルを見て育った。
 そんな城がアイドルに憧れない訳がない。
 キラキラでフワフワな存在は城の心を捕らえて離さなかった。
 母親も当然自分の息子が可愛く産まれたからには大好きなアイドルにさせないわけがない。
 小さい頃からバイオリンを習わせたのは、プロフィールにピアノと書くよりカッコいいと思ったから。
 今の事務所に入れたのも当然トップアイドルが一杯いるから。
 そして城も同じ気持ちだった…オーディションの日までは。
 運命のオーディションの日。
 城の心を捕らえたのはキラキラな世界ではなく、イケメン男子だった。
 「ボクは、悠希にだけは負けたくない。今は悠希よりも劣っているかもしれない。だけど高校卒業してもっと大人っぽくなったらきっと変わるんじゃないかなって思うんだ。」
 思い…それは強い願望だった。
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