| 「んっ…」 桧川君と城君は既に部屋へ戻っている、駐車場には僕たちしかいない。
 車を駐車場に停めた慧君は、エンジンを止めると同時にシートベルトを外した。
 そして素早く助手席のシートに手を突くと、僕の唇を吸った。
 「んんっ」
 息ができないほど狂おしく唇を重ねる。
 口辺から唾液が滴り落ちる。
 慧君はそれを舐めとると更に深く口腔を犯す。
 比較的動かすのが可能なのは右手だったので必死で胸を叩いた。
 「慧くん、死んじゃうよ…」
 「ごめん、部屋に着いたら触れられないと思ったら欲情した。」
 本当に困っていたらしく、弱々しい笑顔だ。
 「俺たち社長の思う壺にはまってないかな?」
 「思う壺?」
 「だってさ、他の人たちはこんな風に一緒の部屋で暮らしたり、グループで活動したりとかないじゃないか。
 心と俺が同じ日にオーディション受けたり、悠希と城が一緒だったり、絶対に何か企んでいるはずだよ。」
 「二組共にくっ付くってことも?」
 「…思いたくないけど、多分…」
 慧君の右手が、僕の額に掛かった前髪を横に流す。
 「履歴書と一緒に送ったアンケート、覚えてるか?」
 「うん」
 「好きなタイプって言うのがあっただろ?」
 「僕は男前な性格の子って書いた。」
 「俺は整った容姿の子って書いた。」
 「面食いなんだ。」
 「そう。ピッタリでしょ?」
 「だったら城君の方がピッタリだよ?」
 「城の性格は悠希に合ってる。アイツはじゃじゃ馬って書いたからさ。」
 「じゃじゃ馬ね、うん。」
 確かに、合っている。
 「城君はなんて書いたんだろう?」
 「イケメン」
 「え?美人とかじゃなくて?」
 「そう。アイツは、謎だよな。俺は素直な方がタイプなんだ。」
 「ごめんね、解りやすくて。」
 僕は、ちょっと拗ねてみた。
 「うん。解りやすいから好きなんだ。」
 慧君は僕を抱きしめた。
 胸ポケットで、スマホが鳴っている。
 きっと、城君が腹減ったってメールしてきている。
 「戻ろっか?」
 「うん」
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