27.好きなタイプ
「んっ…」
 桧川君と城君は既に部屋へ戻っている、駐車場には僕たちしかいない。
 車を駐車場に停めた慧君は、エンジンを止めると同時にシートベルトを外した。
 そして素早く助手席のシートに手を突くと、僕の唇を吸った。
「んんっ」
 息ができないほど狂おしく唇を重ねる。
 口辺から唾液が滴り落ちる。
 慧君はそれを舐めとると更に深く口腔を犯す。
 比較的動かすのが可能なのは右手だったので必死で胸を叩いた。
「慧くん、死んじゃうよ…」
「ごめん、部屋に着いたら触れられないと思ったら欲情した。」
 本当に困っていたらしく、弱々しい笑顔だ。
「俺たち社長の思う壺にはまってないかな?」
「思う壺?」
「だってさ、他の人たちはこんな風に一緒の部屋で暮らしたり、グループで活動したりとかないじゃないか。
心と俺が同じ日にオーディション受けたり、悠希と城が一緒だったり、絶対に何か企んでいるはずだよ。」
「二組共にくっ付くってことも?」
「…思いたくないけど、多分…」
 慧君の右手が、僕の額に掛かった前髪を横に流す。
「履歴書と一緒に送ったアンケート、覚えてるか?」
「うん」
「好きなタイプって言うのがあっただろ?」
「僕は男前な性格の子って書いた。」
「俺は整った容姿の子って書いた。」
「面食いなんだ。」
「そう。ピッタリでしょ?」
「だったら城君の方がピッタリだよ?」
「城の性格は悠希に合ってる。アイツはじゃじゃ馬って書いたからさ。」
「じゃじゃ馬ね、うん。」
確かに、合っている。
「城君はなんて書いたんだろう?」
「イケメン」
「え?美人とかじゃなくて?」
「そう。アイツは、謎だよな。俺は素直な方がタイプなんだ。」
「ごめんね、解りやすくて。」
 僕は、ちょっと拗ねてみた。
「うん。解りやすいから好きなんだ。」
 慧君は僕を抱きしめた。
 胸ポケットで、スマホが鳴っている。
 きっと、城君が腹減ったってメールしてきている。
「戻ろっか?」
「うん」