28.ギュッとね
「じょーおーくん、」
 中々二人が帰ってこないから、満面の笑みで悠希がボクに声を掛ける。
 ボクは余りにも笑顔が嘘臭くて一歩下がってしまった。
「なんだよ?なんで逃げるんだよ?」
 物凄く傷ついたような顔をするけど、口元は笑っている。
「だって、悠希が余りにも気持ち悪いテンションだからさ、避けちゃうじゃん。」
 ボクは両手で左胸を押えて、怯えたうさぎのような仕草をしてみる。
 すると悠希は更に笑顔を全開にして両手を広げた。
「さあ、飛び込んでおいで。」
「ええーっ!」
「うだうだしていると二人が戻ってきちゃうからさ。」
「じゃあやるよぉ」
「素直じゃないなぁ…おっと、」
 思い切り胸にダイブする。
 その腕の中でなんだか安心してしまった。
「悠希ぃ」
「ん?」
「愛してるって、こんな感じかな?」
 フッと、悠希が微笑む。
「その感じは永遠に理解できないけど、一つ言えることがある。」
「うん」
 そしていつも通りいつもの台詞がボクのもとへ贈られる。
 悠希の胸に顔を埋め、悠希はボクの肩口に顔を埋め、互いに高まる心臓の音にドキドキしていると、玄関のドアが開いた。
「う」
「あ」
 神宮寺くんと心君が帰って来たのだ。
「神宮寺君」
 悠希が、そのままの姿勢で言った。
「これからは隠さなくて、いいから。オレは城にいつでも触れていたい。ダメ?」
「えっと…レベルが100位違うんだけど、いいかな?」
「…検討しておく…」
 悠希が、ボクの身体を解放した。