42.キラキラの先
 …
 …
 …
「ねぇ、城君」
 既にそれぞれのベッドの中で「おやすみなさい」と言ったらそのまま眠りに落ちる…っていう状態で
声を掛けた。
「ん?」
 眠そうな声が戻ってきた。
「桧川君が言いたかったのは、デビューをゴールにしたらいけないってことなのかな?」
 僕は、西村先輩を知らない。
 テレビでは見たことがあるけど、一緒に仕事をしたこともないし、会ったこともない。
 時々桧川君の話に上るから認識している程度なんだ。
「西村先輩って、最初はアイドルグループの一員で、リーダーだった人が連続ドラマの準主役で大当たり
してグループの活動が皆無になっちゃったんだって。悠希はアイドルだった頃にちょっとだけ一緒に仕事
をしていたらしいよ。」
 ちょっと甘えたような声になっているのは、眠気と戦っているから。
「そっか…」
 慧君が、桧川君が、城君が、それぞれの夢を叶えたら、daysもそんなことがあるのだろうか。
「…神宮寺君がね、」
 ぼーっと考えていたら、城君が慧君の話を始めた。
「daysは母船でボク等は小船だって言うんだ。必ず母船に戻らなくては港に帰れないって。それだけはずっと
守っていきたいって。30代40代でいまのままのアイドルってわけにはいかないってことだってさ。」
 慧君が言っていることは正しい。
 そうだ、全員が30代になった時、今のようなキラキラなことは出来ない。その時に何に重点を置くかってこと
なんだろうな。
「だけどさ、」
 城君の声はとっても小さくて、独り言のようだった。
「ボクは今のままでいいと思う。先のことは先に考えればいいよ。」
 言うと、「おやすみ」と言って直ぐに寝息をたてはじめた。
 先のことは先に…
 城君の言葉は僕の心の中でとても重く圧し掛かった。
 まだ、自分たちが何を進めていくかも決まっていないのに、先のことばかり気にしていたらダメってことだよね?
 慧君も正しい。だけど城君も正しい。
 なら、僕は全力でキラキラでいよう。
 そして求められる人間になりたい。