| 「何で今更…」 神宮寺君が呟くように言った。
 
 
 
 ボクと心君の荷物が強制的に移動させられていた。
 一つ下の階層。
 そう、ボクらは個室を与えられたのだ。
 「全然嬉しくなーい」
 毎日のようにボクと心君はリビングで叫ぶ。
 「互いの部屋への行き来禁止ってなんだよ!」
 「大学受験ってなんだよ!」
 高校卒業したら芸能生活にどっぷり浸かろうと思っているのになんで会社の方針で大学に行くのさ!
 流行りってなんだよ!
 あーあ。
 これからボクは来年の大学受験に向けてひたすら勉学の日々を送ることとなるんだ…納得行かなーい!
 
 
 「え?神宮寺くんと桧川くんも?」
 移動車の中、神宮寺くんは相当な仏頂面だ。
 「悠希はまだ現役を退いたばかりだからなんとかいけるかもしれないけど、俺は二年経ってるんだぞ?」
 すると増上さんから朗報がもたらされた。
 「芸能人とかスポーツ選手とかなにか特別に秀でたことに従事している人には特別枠があるそうなんだ。」
 その話にボクらは全員食い付いた。
 「だからまず仕事を頑張ろう。川崎くんと赤坂くんは今まで通り学業優先で。神宮寺くんと桧川くんは深夜の
 バラエティ系情報番組が決まったから。」
 …喜んで損した。
 ん?
 「何?そのバラエティ系情報番組って?」
 ボクは早速増上さんに突っ込んだ。
 「歴史的遺産や史跡を巡ったり工場見学をしたりするそうなんだ。」
 へー。
 「面白そう」
 「川崎くんと赤坂くんもたまにスポットで出て欲しいという要望があるけど…どう?」
 「行きたい」
 「出たいです」
 ボクと心くんは声を揃えて言った。
 「よし、決まりね。」
 そして突然に公私ともに忙しい日々の幕開けだった。
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