52.助けて
 悠希、助けて

 突然、携帯メールにこんな文面が届いた。発信元は当然、城。
 ほぼ同時に神宮寺君の携帯も着信を告げた。
「HELPって書いてある」
 相手は心君だ。
「何があったんだ?」
「行っても、いいのかな?」
「助けを求めているんだから行ってもいいんじゃないかな?」
「でも、社長に怒られたら元も子もないしな」
 オレと神宮寺君は短時間でグルグルと考えた。
 考えに考えてそれぞれ電話をした。
『悠希ぃ〜、助けてよぉ』
「城?どうした?」
『お腹空いたよぉ』
「…」
 神宮寺君と心君、城とオレでセットになって食事当番をしていたけど、実は心君も城も料理はからっきしダメで、
野菜を洗ったり、炒めものの箸を動かしていたり、アシスタント的なことしかしていなかった。
 そして神宮寺君もオレも互いにそれを知らなかった。
「この一週間、どうしていたんだ?あの二人は。」
 引っ越しして一週間、ついに食材も底をついたらしい…カップラーメンの。
 米を炊くよりうどんを茹でた方が早いという判断の下、冷蔵庫に入っていた油揚げと冷凍庫に常備している野菜を
適当にぶっこんで煮込みうどんを完成させた。
「いっただっきまーす」
 二人は満面の笑みでうどんに頭を突っ込み食べ始めた。


 翌日。
 再び城から助けてメールが届いた。
「今度はどうした?」
『昨日言われたとおりに炊飯器にお米を入れたのにご飯にならないんだ。何が足りないんだろう?』
「米はちゃんと研いだ?」
『うん』
「水はどれだけ入れた?」
『あ』
「ん?」
『水入れるんだっけ?』
…炊けるかっ、それで。


 翌々日。
 三度助けてメール。
『肉入れて、キャベツ入れて、炒めて…』
「調味料が足りない」


 一体あいつらは何を見ていたんだ。


 四日目。
 神宮寺君と話し合って、おかずをいくつか作って冷凍し、それを渡した。
「レンジでチンすれば食べられるから。」
「うん」
 二人から元気がなくなった。
「だって…そうでもしないと悠希に連絡することないんだもん」
 …可愛い。
「用事がなくても電話してきていいからさ」
「うん」
 満面の笑みで答える城はやっぱり可愛い。


 因みに。
 桧川君と城君には内緒だけど、僕は慧君に「身体が疼いて眠れない」と談判しました。