やっぱりそうなんだ。
人間って厄介な生き物なんだ。
兄弟を知らなければ兄弟愛なんて生まれない。
友達が居なければ友情なんて判らない。
恋を知らなければ恋には落ちない。
知るきっかけは小説だったりテレビドラマだったりお芝居だったり三者三様、十人十色と色々だ。
「え?」
心君は少し首を傾げた。
「多分だけど…TVタレントじゃないかな?」
そっか。
「なら、その好きって気持ちは、知ってた?」
再びうーんと唸ってから考え込む。
「多分…でもそう言われれば誰かに教わったりはしなかったような気がする…」
なんだって?じゃあボクの仮説は成立しないのか?
「好き嫌いって理屈じゃないんじゃないかな?自分に心地いいと本能が感じ取ることで好きになる、そう
じゃないと判断したら嫌いになる。」
え?え?えぇぇぇー!
「絵本の中に嫌いになるよう仕向ける内容はないよね?」
「でも昔話は好き嫌いが多く出てくる、かちかち山とかしたきり雀とか…」
「日本の昔話は各地の伝説などが含まれているから嫌いがあるよね。」
…心君は物知りだな…。
「それから…人を好きになるのは運命だから。」
ん?
心君、前言撤回していい?
「だってさ、城君は僕のこと嫌い?」
「そんなん、好きにきまってるじゃん!」
「でしょ?嫌いな人とグループにはならないんだよ、絶対。好きになるからグループになるんだ、運命なんだよ。」
「それは、心君の持論?」
「いや…さと…神宮寺君。」
はいはい、神宮寺君の請け売りってわけね。
でも…きっと悠希も同じことを言うような気がする。
「城君、オレは城君に一目惚れしたんだけど。運命を感じたんだよ。」
とかさ。
「城君ニヤケてる。」
はっ!
そう言う心君だって、さっきの表情は神宮寺君に見せたかったけどね。 |