55.無理だって
 ボクにとって大事なお仕事。
 …そんなこと言われてもどうしたらいいのかわからない。


 正直言ってボクはdays以外の仕事をしたことがない。
 悠希は先輩に付いて付き人みたいな仕事をちょっとやっていた。
 神宮寺君もテレビでフリップを持ったりクイズ番組で商品の紹介をする仕事をしていた。
 心君はドラマでエキストラをやっている。
 ボクだけレッスンしかしていない。
 だから「来週ワイドショーでコンサートの予告をしてきて」と言われても何をしゃべったらいいのかわからないし、
第一どんな顔をしていたらいいのかわからない。
 急いで家に帰っていろんなテレビ番組を見た。
 アイドルはどんな顔をして座っているのか…。
 結果。
 分からない〜
 だった。


 バタバタしているうちに当日になってしまった。
 学校を早退して、引き摺られるようにテレビ局に入る。
 今日は寛永さんではなく増上さんが付いてきてくれた…って寛永さんは神宮寺君と悠希の方で手いっぱいなだけ
なんだけど。
「どうしてボクなわけ?」
「初一人仕事…っていうことだよ。」
 え!?分かってて入れたの?
「これからは一人の仕事増えるよ?」
「なんで?グループでデビューしたのに?」
「簡単に言えば、人気がなければグループ単位で動くんだけど、人気が出てきたから個人で動くことが増えるんだ。一
人一人が『days』という看板を背負って歩くていうわけ。」
 へー、そうなんだ。
「うちの会社もアイドルグループは初めてだから色々勉強中なんだけどさ。」
 ボクらが成功しないと今後の経営方針が大きく転換するらしい。
「今日することは質問に答えることとコンサートの日にちを言うことと、笑顔。わかった?」
「分かった」


 …分かってなかった。
 笑顔が全然作れなくって顔が引きつっているし、質問には頓珍漢なこと言ってしまったし、言えたのは日程位…がっか
りだよ自分に。
 しかし。
 何故かそれがウケたらしく一人でのオファーが増えたらしい…。
 もう、心臓がいくつあっても足りないよ〜。