57.抱きしめて
「城…いいの?…」
「うん…」


 30分前。
 神宮寺君のたっての願いで、社長に内緒で部屋を入れ替わった。
 悠希と二人、同じベッドで寝ることにしたのはいいのだが…。
「ん…んんっ」
 キスが止められなくなった。
 いつまでも名残惜しく互いに身体を抱きしめあって触れるだけのついばむようなキスだったり、
舌を絡め合う深いキスだったり、舌先を舐めるようなキスだったり様々なキスを続けていた。
 唇を触れ合わせたまま、悠希に囁く。
「神宮寺君と心君がしてること、する?」
 悠希の手がボクの肩を掴み身体を引き剥がされる。
「城…いいの?」
 悠希の眼が真剣だった。
 やり方を知らないからまだいいと言っていたのに。
 …って、二人で調べたんだけど。
「うん…ボク、我慢出来なくなっちゃった。」
 これは、ホント。
 いつか二人で温泉に行ったとき、互いに舐め合いして、気付いた。
 これが、欲しいと思っている自分に。
 ボクの中に、欲しいと思っていた。
と、いうことは、ボクは悠希に抱いて欲しいと願っているのだと。
「城…」
「その代わり、死ぬまで離さないで。」
「うん、勿論だよ。…城…好きだ…愛してる。」
 愛してる…?愛してる?
「ちょ、ちょっと待って!」
「え?」
「愛してる?って、何を?」
「何って、城の存在を。」
「ボクの?存在?」
 分からない、ボクは悠希の愛してるの何に引っかかったのか?
「愛してるじゃなくて、好きって言って。」
 悠希は疑問にも思わず再度好きと囁く。
 うん、しっくりくる。
「ボクも大好き」
 どうして愛してるはダメなんだろう?
 ぐるぐるぐるぐる…考え始めてしまった。
 そんなボクを、悠希は黙って抱きしめてくれる。
「城、大好きだよ」
 そう言ってこめかみにキスを落とした。
「やっぱり今夜はこうして寝よう?明日も早いし。」
 悠希、ごめん。
 次は…絶対。
 でも。本当にどうして「愛してる」はダメなんだろう?
 明日、心君に聞いてみよう。