59.ファーストコンサート
 たった一日だけど、ボクらdaysのコンサート。
 初めてのコンサート。
 曲も持ち歌がたくさんある訳じゃないので、他の人の歌も歌わせてもらったりして一時間半で
行う。
 デビュー曲から始まって、セカンドシングルにカップリング二曲。そこから神宮寺くんの好きな
グループの曲、悠希の好きな歌手の曲、ボクの好きなACTIVEの曲、心くんの好きなミュージ
シャンの曲と続く。
 心くんの好きなミュージシャンが難しい。ギンギンのロック(言い方が古いのは神宮寺くんのせい)
でリズムが超難関。なかなか合わない。
 だけどきっと持ち歌じゃないコンサートなんて今回が最後だと思うからそれはそれで貴重だと
思うんだ。
 ボクらが楽しめたら見てくれる人もきっと楽しいはず。
 そう、見てくれる人がいれば。


「チケットが売れない?」
 ショックだった。
 ACTIVEに作ってもらったセカンドシングルはそれなりに売れた。
 だけどコンサートチケットが売れない。
「オレたちの人気じゃなくてACTIVEの人気だったってことなんだな。」
 悠希が切なげに吐く。
「加月さんに頼んでラジオで宣伝してもらう!」
 ボクとしては良い案だと思うんだけど…。
「カッコ悪いよ」
 心くんが納得しない。
「でも、背に腹は代えられないよ?」
 そう、代えられない。



「こんばんは。」
 ガチガチに緊張している。
 ひとしきり世間話などをしてセカンドシングルの話をしてコンサートの下りに入る。
「はい、僕たちのファーストコンサートなんです。」
 少しだけ声が柔らかくなってきた。
 はてさて。
「よろしくお願いします」
「daysの斐川悠希君でした」



 本当はボクが行きたかったのに年齢制限に引っかかって悠希が一人で行くことになったのだ。
 でも、お陰でチケットが売れて何とか形が付いた。


 あとは、幕が開くだけだ。